私は、「素晴らしき哉、人生!」という映画が大好きで、何度となくDVDで見ています。題名だけから考えると「幸せな人たちがニコニコ過ごす様子を描く」ような映画かと思ってしまうかもしれませんが、そのような映画ではありません。

 この映画は、1946年に製作されたアメリカ映画で、監督は「フランク・キャプラ」(以下「キャプラ」と言います)という人です。この監督は、アカデミー賞の作品賞、監督賞などを何度も受賞している米国を代表する映画監督で、「素晴らしき哉、人生!」以外では、「或る夜の出来事」(1934年製作)、「オペラハット」(1936年製作)などが有名です。

 今回お話しする「素晴らしき哉、人生!」は、キャプラ映画の集大成として製作されましたが、興行的には惨敗だったそうです。

 この映画は、現在では不朽の名作として評価されており、アメリカ映画協会(AFI)が選ぶ「アメリカ映画ベスト100」で11位に選ばれています(いつの時点かは分かりませんでした)。

 また、この映画の感動的なラストシーンがクリスマスの夜であることから、米国では、1970年ごろから毎年のクリスマスにテレビ放映されるようになり、それまでキャプラを知らなかった若い世代の人からも再評価されるようになったそうです。

 この映画は、基本的には、ある「二級天使」が翼を貰うための試験としてある男を救うというファンタジーで、ハッピーエンドで終わるのですが、主人公の男自身やその家族・友人・町の人々などをていねいに描いていて、その積み重ねが最後のシーンで感動を呼びます。

 私は、特に、家族を愛する善良で温厚な主人公が、ある男の策略で破滅しそうになり、楽しくクリスマスの用意をしている妻や子供の前で荒れ狂うというシーンを見て、これは本当の人生を描いている映画だと思いました。

 以下、この映画のあらすじを紹介します。

 

 1945年のクリスマスイブのことです。天国では、大天使(偉い天使)が「二級天使」の「クラレンス」(外見は冴えないじいさんです)を呼び、ある町で自殺しかかっている「ジョージ・ベイリー」(以下「ジョージ」と言います)という男を救いに行くよう命じます。二級天使には羽がなく、クラレンスは愚鈍なため200年以上も羽を貰えないでいますが、ジョージを救うことが出来ればは羽を貰えるのです。

 ここで、物語はジョージの子供時代に戻ります。ジョージの父親は、小さな住宅ローン会社を経営し、自分の利益を犠牲にして貧しい人たちが家を持てるようにと働いています。ジョージは、そんな父親の背中を見て育ちました。この町には「ヘンリー・ポッター」(以下「ポッター」と言います)という男がいて、この男は、いろいろな会社を経営し町一番の大富豪ですが、金儲けのことしか考えず、貧乏人は虫けらだと思っている冷酷な男です。この男は、ことごとく自分に反発するジョージの父親が邪魔でしょうがなく、ことあるごとにケチをつけてきます。

 それはさておき、ある冬の日のことです。ジョージは友達おおぜいと、氷が張った池に斜面から滑り降りる遊びをしていました。ジョージの弟の「ハリー」の番になり、ハリーは勢いよく滑りすぎて池の真ん中まで滑って行ってしまい、氷が割れて池に落ちてしまいました。ジョージは氷のように冷たい池に飛びこんで弟を救います。それが原因で、ジョージは悪性の風邪をひいてしまい、左耳の聴力を失いました。

 子供時代のジョージは、貧しい家計を助けるために、ドラッグストアで働いています。ある日店に行くと、店主の「ガウアー」さんの様子が変です。奥の部屋でウイスキーをあおっています。ジョージは、ふと、置いてある新聞の記事が目に入りました。そこには、インフルエンザでガウアーさんの息子が死んだことが書いてありました。ジョージは、「何かお力になれることはありますか」と話しかけますが、ガウアーさんは何も答えず、酒のせいで震える手で薬をビンから出し、ある家に届けるようにジョージに命じました。ガウアーさんが薬を出したビンには劇薬である薬の名前が書いてありました。

 ジョージがためらっていると、ガウアーさんは「何をしている。早く行け!」と怒鳴りました。ジョージは慌てて店を出て、しばらく考えた後、相談のために父親の会社に向かいました。

 

 

 

※ ツイッターに画像を投稿しました(2022.11.28)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon

 

(次回に続く→時期は未定)