Vol.43【音楽 「いまのキミはピカピカ・・」以前の「斉藤哲夫」①】の続きです。

 Vol.43では、「悩み多き者よ」や「されど私の人生」などを歌い「歌う哲学者」と呼ばれていた、URCレーベル時代の斉藤哲夫さん(以下「哲夫さん」と言います)について話しました。今回はその後の哲夫さんについて話したいと思います。

 哲夫さんは、1973年に「CBSソニー」(現在の「ソニー・ミュージックレコーズ」)レーベルに移籍します。私が、この時代の哲夫さんの曲を最初に聞いたのは大学1年の頃(1974年頃)で、曲は「グッド・タイム・ミュージック」(アルバム「グッド・タイム・ミュージック」に収録)です。今のようにネット環境がある時代ではないので、哲夫さんのように地味な人の曲を掛けるとすれば、FMラジオではなかったのかなと思っています。

 Vol.25【音楽 THE ALFEE ①】でも話しましたが、私は本質的に生ギターを使ったアコースティックな音楽が好きです。最初にこの曲を聴いたときに思ったのは、演奏としてはどちらかと言うと「薄い」編成なのに、なんでこんなに胸に迫ってくるのだろうということでした。出だしのアカペラのコーラスは決してうまいとは思えませんし、よく自分でも「鶏の首を絞めたような声」とおっしゃっているハイトーンの哲夫さんのボーカルも決して心地よいとは言えません。なぜこんなに心を惹かれるのだろうと思い、他の曲も聞きたくて、アルバム「グッド・タイム・ミュージック」(1974年7月にリリース)を買いました。聞きこんでいるうちに、哲夫さんの音楽のとりこになってしまいました。このアルバムは全体が一つのつながりを持っていて、ビートルズの「サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド」を思い起させます。「どうぞよろしく」で始まり「南部春待ち疲れバンド」で終わる全15曲のどの曲も素晴らしいのですが、私が感じたのは、どの曲にもその根底に「哀しさ」があるということでした。私は、映画でも小説でも絵画でも、心に響く作品には「哀しさ」があると思っています。このアルバムは名盤だと今でも思っています。編曲が「瀬尾一三」さん(山本コウタローとウィークエンドの「岬めぐり」の編曲で有名)だったことも、このアルバムを素晴らしいものにしている一因だと思っています。

 その次に買ったアルバムが「バイバイグッドバイサラバイ」(1973年10月にリリース)です。このアルバムは「グッド・タイム・ミュージック」の9か月前にリリースされており、この時期、哲夫さんは、素晴らしいアルバムを立て続けにリリースしていたんですね。

 このアルバムは、前作の「君は英雄なんかじゃない」から1年4か月後にリリースされたアルバムですが、いわばメッセージフォークとも言える前作とは全く印象が異なります。その後の哲夫さんの曲と比べると内省的な曲が多いのですが、アコースティックなサウンドをベースにして、ブラスやシタールなども使い、ポップなメロディーの曲が多くなっています。一曲一曲について話し出すと止まらなくなるので、それはやめておきます。

 1975年9月にリリースされたアルバム「僕の古い友達」を含めた3枚のアルバムのことを、哲夫さんの「CBSソニー三部作」という人もいるようです。

 私は、つい最近まで、このCBSソニーでは3作目のアルバム「僕の古い友達」を買っていませんでした。収録曲の中の「夜空のロックンローラー」は自分でも下手なギターを弾きながら歌ったりするほど好きな曲ですし、「さんま焼けたか」は哲夫さんの新境地だったと思っていますが、前2作と比べるとトータルアルバムとしての魅力は薄いように感じられたからです。

 その後の哲夫さんの曲では、「ダンサー」、「ピエロ」、「SHE’S A BIRD」などが好きです。

 哲夫さんの曲は少し陰のある曲が多く、確かに一般受けはしないと思いますが、メロディーが独特で美しく、しみじみとした曲、ポップな曲、ロックと幅広い音楽性を持っています。個人的には、もっと評価されてもいいんではないかなと思っています。

 

 

 

 

 

 

 ツイッターに画像を投稿しました(2022.8.31)。

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