「鉄道員」は、1956年に制作されたイタリアの映画です。監督・主演はピエトロ・ジェルミ(敬称略、以下同)です。私は、ピエトロ・ジェルミ監督の作品はこの映画しか見ていませんが、この作品が大好きです。これからも名作として語り続けられる作品であると思っています。

 この作品は、長距離鉄道の運転士であるアンドレア・マルコッチとその家族の物語です。

 主人公のアンドレアは初老の陽気な男で、長距離鉄道の運転士であることに誇りを持っており、家族を愛しているのはもちろんですが、短気な面があり、自分が家族を支えているという思いが強いので、自分の考えを押し通そうとします。また、毎日のように酒を飲んで帰る生活で、酒場では自分が真ん中に座ってギターを弾きながら、みんなで歌うのが大好きです。妻のサラは、そんなアンドレアを心から愛しており、正直に言って少ない収入で家計のやりくりをして、何とか家族が幸せに暮らせるようにということばかり思っています。長女のジュリアは22~23才でしょうか、大変な美人です。長男のマルチェロは二十歳過ぎでしょうか、仕事もせず毎日ブラブラして、大儲けを夢見て危ない話に手を出そうとしています。次男のサンドロは7~8才でしょうか、ずいぶん年の離れた兄弟です。家族のみんなはサンドロのことが可愛くてしょうがなく、みんなサンドロのことを「サンドリーノ」と呼んでいます。

 この家族の、残酷で悲しくて、のちに哀しくて暖かい物語は、次のようなものです。途中で省略できるところがないので、少し長いですがお許しください。

 

 アンドレアが運転する、フィレンツェからの長距離列車がローマに帰ってきます。相棒は親友である太っちょのジジ・リベラーニです。今日は、クリスマス・イブです。サンドロは、お父さんが帰ってくるのが嬉しくて、お母さんにも告げずに駅に迎えに行きます。列車がホームに入ってきます。サンドロは「パパ!パパ!」と運転席に呼びかけます。サンドロに気づいたアンドレアは「こりゃ驚いた。サンドリーノ、母さんは知っているのか?」と言い、サンドロを抱き上げます。

 購買部でクリスマスの食品やワインなどを受け取って家へと向かいます。途中には行きつけのウーゴの店があります。アンドレアはジジに「ちょっと寄ってくか?」と言い、サンドロに荷物を持たせ、「少し飲んでいく。先に帰っていろ」と言います。サンドロは「姉さんが来ているんだよ」と言いますが、アンドレアは「すぐに帰るよ」と言って店に入ってしまいました。サンドロは仕方なく一人で家に帰ります。

 サンドロが家に帰ると、姉のジュリアが夫のレナートとともにアンドレアの帰りを待っています。ジュリアは出産が近いのですが、クリスマスイブなので、体調が悪いのに実家に帰ってきたのです。アンドレアは夜遅くなっても帰ってきません。サラは、サンドロにお父さんを迎えに行かせます。ジュリアの体調は相当悪そうです。

 サンドロはお父さんを迎えにウーゴの店に行きますが、お父さんはなかなか帰ろうとしません。ようやく店を出て家に帰ると、家の明かりは消えていて誰もいません。

 アンドレアは「クリスマスだと思うから帰ってきたら、どうだこの有様は!」と怒鳴り、ベッドに入ってしまいます。テーブルの上にあった書置きを見つけたサンドロは、「お父さん大変だ!みんなジュリアのところに行っているよ!」とアンドレアに言いますが、アンドレアはもう半分眠っていて起き上がろうとしません。仕方なくサンドロは一人でジュリアの家に向かいます。

 

 

※ ツイッターに画像を投稿しました(2022.7.1)。

https://twitter.com/sasurai_hiropon

 

(以下次回→不定期)