前回からのあらすじの続きです。
灰色の男たちは諦めません。モモを拉致しようと行動を開始します。
そんなことを知らず、モモは今日も円形劇場の階段に座って、みんなが来て楽しくお話しするのを待っています。その時、モモのつま先にコツンと当たるものがあります。見てみると一匹のカメがいます。そのカメは「カシオペイア」という名前です。モモが見ていると、そのカメの背中に「イキマショウ!」という文字が浮かび上がりました。モモは何かを感じ取り、カシオペイアの後をついていきます。その直後です。円形劇場に次々と灰色の車が押し寄せてきました。「女の子がいないぞ!どんなことがあっても探し出せ!」。灰色の車はモモを探しに散っていきます。
一方、カシオペイアはゆっくりと歩いていきます。でも心配することはありません。カシオペイアには特殊な能力があって、30分先の未来が見えるのです。灰色の男たちが通り過ぎた後を二人(モモとカシオペイア)は通り過ぎ、また、二人が通り過ぎた後に、慌てふためいた灰色の男たちが通り過ぎたりします。
やがて二人は、マイスター・ホラの家に到着します。マイスター・ホラ(ホラとはhour:時間のこと)は、全ての時間、すなわち、全ての命を司っている、絶対的で不思議な存在です。モモがマイスター・ホラと話していると、マイスター・ホラの姿は、ある時は若い青年だったり、ある時はとても年取った老人だったりします。モモは、無限の空間に咲く「時間の花」という、とても不思議な、安らぎを覚える花を見せてもらいます。
モモが、マイスター・ホラの家から元の町に戻ってみると、何か変です。前は、毎日訪ねてくれた人たちが全く訪ねてきません。モモはずっと待っていましたが、やがておなかがすいてきました。それで、以前よくモモに食べ物をくれていたニノの酒場に行くことにします。ニノの酒場に着いて、モモはびっくりします。以前は貧相だったニノの酒場は、りっぱなレストランになっています。中に入ってみると、店内はお客でいっぱいです。しかし、そのお客たちは妙にとげとげしくて、お互い押しのけ合って順番を待っています。レジにいるニノを見つけ、モモが話しかけると、ニノは「モモじゃないか!どこへ行っていたんだ、心配していたよ。食べ物なら自由に取って食べてくれ。でも、今は忙しくて話しているヒマがないんだ」と必死でレジを打っています。お客の後ろに並んで、何度話しかけても同じことです。
モモがマイスター・ホラのところで過ごしたのはほんの1日ぐらいでしたが、現実の世界では1年が過ぎていました。モモの周りの世界は全く変わってしまいました。人々は、以前のように笑顔で話し合うこともなく、不機嫌な顔で仕事に追いまくられています。
モモのところには、いくら待っても、訪れる人は一人もいません。モモは寂しくて寂しくて、もう耐えることができなくなりました。
寂しくて耐えられなくなったモモは、とても親しかった「旅行案内のジジ」の家を訪ねますが、ジジは大金持ちになっているものの、時間に追いまくられて、モモと話す時間もありません。モモは落胆します。ふと気が付いてみると、腕に抱えていたはずのカメのカシオペイアがいません。「大事なカシオペイアまで失ってしまった!」。円形劇場の自分の家に帰ると灰色の男たちが襲ってくると思い、怖くてそこにも帰れません。モモのことを可愛がってくれた「掃除夫のベッポ」を探して、朝から夜中まで町を歩き続け、疲れ果てて道路の端で寝込んでしまいます。悪夢にうなされて、涙を流しながら目が覚めた時に、何かが自分の中で変わります。「自分の寂しさのことばかり考えていたけど、本当に危険にさらされているのは友達のほうではないか」。そう考えた時、モモの中で、不安は消え、勇気と自信がみなぎりました。
※ ツイッターに画像を投稿しました(2022.4.15)。
https://twitter.com/sasurai_hiropon
(以下、次回)