小学生のころ、悪魔くんという番組をテレビでやっていました。どんな番組かと言うと、ある小学生が、ある老人に、悪魔を呼び出す秘術を教わり、呼び出した悪魔とともにいろいろな妖怪を退治するという番組でした。

 一話完結のシリーズで、1966年10月から1967年3月まで全26話放映されました。私が10才のころです。このころはまだカラー放送ではなくモノクロでした。

 ある老人というのはファウスト博士で、年齢が300才(!)です。これはゲーテの戯曲から来たキャラクターのようです。演じていたのは浜村純という人で第1話にしか出てこなかったと思います。「浜村純というと司会などをやっていたあの人か?」と思ったのですが、年齢が合わないので、よく考えてみたら、司会などをやっていたのは浜村「淳」さんでした。ああ勘違い。でも、どこかで浜村純という役者さんを見た覚えがあったので、よく考えてみたら思い出しました。黒木和雄監督の映画「祭りの準備」(1975年)に、主人公のおじいちゃん役で出ていた人でした。懐かしい。

 主人公の悪魔くんは、ちゃんと名前があって(当たり前ですが)山田真吾という少年です。金子光伸という子役の方がやっていました。その後大人の俳優さんになられたのでしょうか。「言うことを聞かないとソロモンの笛を吹くぞ!」というせりふがどうにも棒読みで、子供心にも「こんなんでいいのかなー」と思っていました。私が大学のころ、友達にその話をしたところ、「そうなんだよ、俺もそう思っていた」と妙に意気投合してしまいました。

 悪魔くんが呼び出す悪魔はメフィストという名前で、これもゲーテの戯曲に出てくるメフィストフェレスから来ているようです。演じていたのは吉田義夫さんという役者さんでした。私は山田洋次監督の「男はつらいよ」が大好きでよく見ていたのですが、寅さんの映画は、冒頭に必ず寅さんの夢の場面があり、どの作品か忘れましたが、その夢の場面に悪辣な金貸しの役で出ている人がいて、よく見たら「あっ、メフィストだ!」と気づいて、何か懐かしい気分でした。この方は、悪役中心に映画・テレビで活躍された方です。番組の途中で吉田義夫さんが体調を崩されたとかで、第10話でメフィスト役が交代し、それ以降は潮健児さんという方が先代メフィストの弟という設定で演じておられました。チョコレートが大好きで、チョコレートを出されるとゲハゲハ喜ぶ演技をよく覚えています。

 毎回、オープニングに流れる曲は「エロイムエッサイム」という歌詞以外はほとんどスキャットのみのとても奇妙な曲で、映像も、暗い洞窟の中をこうもりが飛び交っているところから始まり、魔方陣が回り、煙と共にメフィストが現れるところで終わる、とてもシュールなものでした。一方、エンディングの曲は、サンバのリズムで非常に調子のいい曲で、「なんでこの曲をオープニングに使わないんだろうな」と思っていました。話は飛びますが、ガッチャマンの主題歌もそうですね。あの番組の最初のころは、有名な「誰だ、誰だ、誰だ」で始まる曲ではなかったですね。

 

 

 (1:05あたりからed)

 

 悪魔くんの番組は、毎回違う妖怪が出てきたんですが、一番怖かったのは第6話「首人形」に出てきた「マネキン妖怪」です。普通のマネキン人形が夜中に動き出し、男の人がバイクで道を走っていると、いつのまにか自分の後ろに座って「イッヒッヒ」と笑っていて、男の人があわててブレーキをかけるとマネキンの首がコロンと落ち、見る見る間に一つ目の化け物に変わる。そして口から白い煙のようなものを吐くと男の人は見る見る白い石膏像のようになる。そのような事件が多発するという話です。一つ目の化け物が怖くて怖くて、夜になると便所に行くのが恐怖でした、出てきそうで。ネットで検索したら、同じような思いをした人がいっぱいいて、自分だけじゃなかったんだと分りました。

 

 

 第1話「妖怪ガンマー」に出てきたガンマーも怖かったですね。体中に目があるんだもの。雑誌なんかには確か「百目」と出ていて、私も百目と覚えていました。ガンマーだったんですね。だいぶ後に悪魔くんがアニメになった時に、このガンマーがかわいらしい子供の妖怪として登場していましたね。

 テレビドラマの悪魔くんは、ゲゲゲの鬼太郎で著名な水木しげるさんが書かれた漫画が原作となっています。水木しげるさんが結婚してまだ間もなく、売れない漫画家で極貧生活にあえいでいたころ、追い討ちをかけるように理不尽な出来事が続き、空想の世界で、悪魔でさえ手下として使い理不尽な世界を変革する存在として作り上げたのが悪魔くんでした(「水木しげる伝」講談社漫画文庫)。私は、漫画としては「悪魔くん千年王国」(ちくま文庫)しか読んでいませんが、テレビドラマの悪魔くんとは全く違う内容です。