しばらくの間、当ブログでアップする記事に通し番号(ブログナンバー)を振らなかったのは、このネタをやりたかったからなんですよw

ブログナンバー6350は、阪急6300系第1編成の大阪梅田方先頭車の車号。それににちなんで、「大手私鉄における2扉クロスシート車の系譜」を取り上げようかと。

ただし、当記事で取り上げる「2扉クロスシート車」については、以下のとおりの定義をしておきます。

 

① クロスシートに関しては、固定クロス(ボックス席)か転換クロスかを問わない。

② オールクロスシートか扉の周囲だけロングシートがあるかを問わない。

③ 無料優等列車充当車両に限る。

 

③の定義を入れたのは、これを入れておかないと有料特急用車両が入ってしまう可能性があるからです。

 

それでは参りましょうか。

 

【『2扉クロスシート車』を保有したことのない大手私鉄 4社+2】
大手私鉄16社のうち、「2扉クロスシート車」を保有したことがないのは東急、京王、相鉄、東京メトロの4社となります。

 

 

 

 

 

これらのうち、京王は前身の京王電軌時代に150形という2扉クロスシート車があったのですが、現在の京王電鉄になってからは保有したことがないので、当記事でも「なし」の方に分類しています。

この4社の共通点は、日常の通勤・通学輸送の比重が非常に大きいこと。それ故に混雑を捌くべくオールロングシートの通勤車を主体にせざるを得ないということで、それ故に「2扉クロスシート車」の出る幕はないということです。

なお、小田急と京成はそれぞれ、過去に「2扉クロスシート車」を保有していたことがありますが、料金を徴収する優等列車に使われていたことがあるので、いずれも除外しました。小田急はNSEデビュー前に「準特急」用として2320形と格下げ後の2300形を使用していたのですが、「準特急」は料金を徴収していました。京成は1500形ですが、これは「開運号」の救済列車などとして、やはり料金を徴収する列車に充当されていたからです。

【『2扉クロスシート車』を保有している・保有したことがある大手私鉄 10社】
以上からすると、「2扉クロスシート車」を保有している、またはしたことがある大手私鉄は、関東では京急・西武・東武の3社、関東以外では名鉄・近鉄・京阪・阪急・南海・阪神・西鉄の7社ということになります。
さらにこれらのうち、現役で活躍している会社となると、京急・西武・京阪・阪急・南海の5社。他の会社は既に全車退役して系譜が途絶えているか、事実上途絶えている状態となっています。この「事実上途絶えた状態」となっているのが東武で、自社籍の6050系が全車退役していますが、野岩鉄道籍のそれが残存し現役で稼働しているからです。
さらに上記4社のうち、現在もなお第一線で活躍しているところとなると、さらに絞られて京急、京阪、南海の3社のみとなります。もっとも南海は、高野線区間の乗客増が顕著であることから、同線の平坦区間と山岳区間を直通する「大運転」が減少しているので、影を薄くしていることは否めません。

 

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京急2100形はリニューアルを受けいまだ第一線で活躍

 

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京阪は8000系がリニューアルを受け活躍中

 

両者(車)のリニューアルに際して、京急はオールクロスシートを維持したのに対し、京阪は車端部をロングシートに変更しました。これは停車駅の増加に伴って乗降性の確保と床面積の確保の必要が生じたから。

 

対して南海は、2300系の写真がないので2000系でご容赦を。

 

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この車はロングシートだが


これに対し、西武と阪急は、既に「退役フラグ」が立っています。西武では既に「サステナ車両」こと他社から譲受する中古車両(具体的には東急9000系列)で置き換えられることが決定していますし、阪急は本線運用を失って短編成化された上で嵐山線に封じ込められ、それも近日中置き換えられる予定となっています。

 

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西武は他社からの譲受車両によって置き換えられる


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阪急は嵐山線に封じ込められた


かつて保有していたが現時点で「2扉クロスシート車」を保有していない大手私鉄のうち、「一発屋」だった阪神や(阪神における『2扉クロスシート車』は3011形のみ)、「2扉クロスシート車」による無料優等列車が少なかった近鉄とは異なり、西鉄は特急用として、1000形~2000形~8000形という「2扉クロスシート車」の系譜がありました。名鉄にいたっては、「パノラマカー」7000系など「スーパーロマンス(SR)車」をはじめとする一大勢力を築いていました。
しかし西鉄は8000形を最後に「2扉クロスシート車」の系譜は途絶え、あれほどの勢力を誇った名鉄でも、5700系の退役と同時に「2扉クロスシート車」の系譜は途絶えてしまいました。

 

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名鉄は一大勢力だったが…

 

西鉄は8000形の置き換えを3扉の3000形で行ったため、西鉄における「2扉クロスシート車」の系譜は途絶えることに。

 

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西鉄における「2扉クロスシート車」の系譜の末代となってしまった8000形

(写真は観光列車『旅人』のもの)

 

既に名鉄・西鉄では2扉クロスシート車の系譜は途絶え(自社籍車両がなくなったという意味では東武も)、西武・阪急では途絶えることが決定、残っている京阪でも車端部をロングシートに変更しオールクロスシートを放棄するなど、全体として大手私鉄における「2扉クロスシート車」は縮小の傾向にあるといえます。
これはやはり、2扉であることで混雑時の乗降性に難があること、クロスシート部分があるため床面積(立席面積)が少なくならざるを得ず混雑時の収容力に難があること、これらの理由により使いにくくなっていることの現れだろうと思われます。また「2扉クロスシート車」は、停車駅が少なくお客の入れ代わりが少ない列車に充当される傾向があったところ、そのような列車が少なくなったことも、2扉クロスシート車が使いにくくなった要因といえます。阪急京都線のように特急の停車駅が激増し、以前の急行と大差なくなっている現状からすると、2扉クロスシート車が使いにくいのは当たり前です。現に阪急は京都線特急には3扉の9300系を導入し、2扉クロスシートの6300系を放逐していますから。これに対して京阪は、2扉クロスシートの8000系使用を継続していますが、それでも床面積増加を狙って車端部をロングシートに改造していますし。


そうなると、今後「2扉クロスシート車」の後継車は出てくるのでしょうか?

期待できるのは京急・京阪・南海ですが、京急は3扉のロング/クロス可変車両を出していますから、ことによると2100形の後継はそのような車両になる可能性もあります。京阪にしても、3扉クロスシートの3000系が出ていますから、もし8000系の代替となると3000系準拠の可能性が高いように思います。最後は南海ですが、南海はことによると橋本で特急以外の運転系統を完全に分断して「大運転」を取り止める可能性もあり、そうなった場合に2300系の後継車が出るとは思えません。

そう考えてくると、これら私鉄でも「2扉クロスシート車」の後継車が出てくる可能性は低いのではないかと。

愛好家的目線では寂しいことですが、これも時代の変遷でありやむを得ないのでしょう。

 

【おことわり】

当記事で使用している写真は、全て以前の記事からの転載です。また当記事を04/16付の投稿とします。