その15(№2160.)から続く


「関西急電」から「新快速」に至る歩みを見てきた連載も、今回で最終回。最終回は、恒例の「未来予想」をしてみたいと思います。


現在の新快速は、特別料金が不要な速達サービスとしては、もはやひとつの完成形に達したと評して差し支えないと思われます。ただ、これは実際に管理人が利用しての感想なのですが、新快速に乗客が集中するため混雑率が高く、座れた場合とそうでない場合の落差が激しいことが問題ではないかと思います。また、これは実際に関西に在住されている方から、代を重ねるごとに車両の性能は上がっているがグレードは下がっているのではないか、そもそも転換クロスシートのサービスには無理があるのではないか、というご意見を、当ブログのコメントやツイッターのリプライでいただきました。そこで、これらの点に対する対応がどうなるか。

もうひとつは、昭和47(1972)年3月の新快速の本格運転開始当時と比べても、京都~姫路間の停車駅が増えてしまっています(高槻・新大阪・尼崎・芦屋・神戸。西明石は全列車停車に)。そこで、新快速よりも上の快速、いうなれば「超快速」が必要になるのではないかという点も興味があります。


1 快適性の向上について


車内の快適性という点では、2扉・転換クロスシートの117系、又はその次の世代の221系が、ひとつの頂点になっているのではないかと思われます。

しかし、その後の223・225系では、補助席こそあるものの座席定員が減少し、着席のチャンスがそれだけ少なくなってしまいました。しかも、新快速は最高速度130km/hで全力疾走するため、揺れが大きく立っていると疲れるという問題もあります。

以前触れたように、この問題に対応すべくJR西日本では223系導入時、グリーン車や指定席車の導入を大真面目に検討したのですが、結局頓挫してしまいました。これは導入後のコストが投資に見合わないと判断された結果だと思われますが、その理由として①関西ではエクストラチャージの文化がないこと(国鉄~JRや近鉄の特急料金は『速達料』ととらえられていた)、②とにかく目的地に早く着ければいい、快適性は二の次という関西人の「いらち」気質が影響しているとみられること、などが指摘できようかと思います(これらはいずれも、当ブログのコメントで頂戴したご指摘です)。現在は225系の投入が続けられ、編成両数も京都~姫路間では12連が基本ということですから、しばらくは現状維持が続くのだろうと思います。


2 「転換クロスシート」のサービスは限界にきている?


また、以上の問題と関連して、特にラッシュ時に言えることですが、新快速の「全て転換クロスシート装備の車両で運用する」というのが限界に来ているのではないか、合理性がないのではないか、という指摘もあります。223・225系はどうしてもラッシュ時の乗降性に劣るため、このような時間帯には321系などロングシート車を使った新快速があってもいいのでは? と。これは東京地区における多扉車の導入と同じ発想ですが、朝ラッシュ時、それも京都-姫路間限定で、あってもいいように思われます。

ただ、これを実行するには321系などを130km/h対応にする必要がありますし、トイレの有無の問題などがありますので、朝ラッシュ時だけ異車種を運用するのは異常時のリカバリーに難があるように思われます(まさか321系を敦賀まで運転するわけにはいかないでしょうし)。そこを克服するのが課題でしょうね。

よく考えたら、東京圏の近郊電車が4扉ロングシートでありながらグリーン車を連結しているのは、「ラッシュ時の詰め込み」と「快適性を求める乗客の選択肢の確保」の両立という面もあるんですよね。エクストラチャージ文化のない関西では、そういうやり方は根付かないだろうと思われます。


3 新快速より停車駅の少ない「超快速」


前述したとおり、当初の新快速の停車駅は京都を出ると大阪・三ノ宮・明石・西明石(西明石始終着列車のみ)・加古川・姫路と、停車駅が絞り込まれていました。その直後、神戸が追加され、京都~姫路間は5駅停車(西明石を除く)となり、この体制が長く続きます。

しかし、国鉄時代末期に新大阪が追加されたのを皮切りに、西明石も全列車停車になり、JR発足後は高槻・尼崎・芦屋にもていしゃするようになりました。これで京都~姫路間は9駅停車になっています。

列車のスピードアップが、最高速度向上など物理的なそれにとどまらず、用のない駅に付き合わされずに済むなどの心理的なそれも含むことを考えたとき、現行の停車駅はいかにも多いように思われます。そこで、現行の新快速よりもさらに停車駅を絞り込んだ「超快速」を運転してはどうか、ということも考えられます。これは何も「速さ」だけを追求するのではなく、ラッシュ時に停車駅をできるだけ減らし、遠距離通勤客を分離する「遠近分離」の一手段としても有効です。これの実例は東京のJR中央線の「通勤特快」ですが、この列車は単に「停車駅が少ない」だけで、日中の「中央特快」よりも表定速度が遅くなっています。

朝ラッシュ時数本の限定運用で、しかもそれに321系などを充当するのであれば(列車密度が高いので、130km/hの性能が不要となる可能性がある)、実現可能性があるように思います。


問題は日中に運転する場合ですが、日中はダイヤパターンに組み込まなければならないこと、それによって快速や各駅停車などの時隔を乱してしまうことなどが懸念されます。現在の新快速は、停車駅と車両の性能を揃えて全体としてスピードアップを図っているという面がありますので、実現は難しいと思われます。実現には需要の後押しが必要ですが、果たしてそこまでの速達を望む利用者がどれだけいるのか。福知山線脱線事故を引き起こした原因が、行き過ぎたスピード競争にあったことを指摘する識者は多く、「超快速」運転がそのような行き過ぎた競争の再来になるのではないかと見られてしまう懸念もあります。そのあたりをどうするかが、実現への鍵になるのでしょう。


4 最後に


今回の新快速ネタは、管理人の地元ではないネタだったので、どうしても「よそ者が見る」ようなものでしかなかったように思われ、自分自身で見てそれが物足りないところだと思います。「いらち」のお話をコメントでいただいたときは、目から鱗が落ちたのと同時に、よそ者の限界(ちょっと大げさですかね…)を感じてしまったことです。


ともあれ、これで新快速ネタは終了。お付き合いくださいましてありがとうございましたm(__)m


-完-