ということで,Wikipediaの「核分裂反応」 から
放射性物質がどうなっていくのかを表にしてみた.
生成物 | 半減期 | 収率 | 生成物 | 半減期 | 生成物 | 半減期 |
Cs133 | 安定 | 6.79% | ||||
I135 | 6.57h | 6.33% | Xe135 | 9.14h | Cs135 | 2.3My |
Zr93 | 1.53My | 6.30% | ||||
Cs137 | 30.17y | 6.09% | Ba137 | 安定 | ||
Tc99 | 211ky | 6.05% | ||||
Sr90 | 28.9y | 5.75% | Yt90 | 64h | Zr90 | 安定 |
I131 | 8.02d | 2.83% | Xe131 | 安定 | ||
Pm147 | 2.62d | 2.27% | Sm147 | 106Gy | ||
Sm149 | 安定 | 1.09% | ||||
I129 | 15.7My | 0.66% |
h: 時間,d:日,y:年,ky:千年,My:百万年,Gy:十億年
また,太字は一万年以上のもの.
例えば,ジルコニウム93の1.53Myは1.53百万年,つまり153万年となる.
これをみると,セシウム137,ストロンチウム90,ヨウ素131,
プロメチウム147がやばい感じに見える.
ではなんでヨウ素とセシウムの名前がマスコミで
取り上げられているのか.
おそらくだが,この二つに限って融点が低いため,
燃料棒や燃料集合体から漏れ出てくる可能性が高い
ということだと思われる.
つまり,
減圧のためにベントとしたときに
含まれていた可能性が高い物質
ということだ.
次に,なぜセシウム137よりもヨウ素131が注目されるのか.
まず一つは,チェルノブイリ事故のときのデータによるもの.
チェルノブイリ事故の際に甲状腺異常が多くみられ,
特に当時,乳幼児だった人に多いというもの.
これは,乳幼児では特にヨウ素が甲状腺に取り込まれてしまう
というのが原因と考えられている.
もう一つは,半減期の長さ.
セシウム137は半減期が約30年であるのに対して,
ヨウ素131は8日間と短いためである.
短いならすぐになくなるじゃん,長い方が危ないんじゃね?
と考える人もいるかと思う.
ではここで,次のことを考えてみる.
- そもそも放射線とはどうして出るのか?
- 半減期とは?
まず,放射線というのは放射性同位体の原子が
崩壊するときに出てくるものであるということ.
つまり,一つの原子が崩壊したときに一回飛び出してくる.
例えば,ヨウ素131原子が一つあった場合,
その原子が崩壊するときに放射線を出す.
そして,その原子はキセノン131になり,
これはもう放射線は出さない.
では,半減期とはどういうことなのか.
これはある時点でたくさんの放射性同位体の原子が
あったときに,その原子が次々と崩壊して行き,
その数が半分になる時間というもの.
これは,ヨウ素131の原子が100万個あったときに,
8日経つと50万個になっているというもの.
これに最初のことを合わせると放射線を出したのは
残っていない50万個の方ということになる.
つまり,
半減期が短い放射性物質ほど
次々と崩壊して放射線をどんどん出す
のだ.
これらを踏まえるとセシウム137はなかなか壊れない,
つまりは放射線を出さないということになる.
これを人が取り込んだ場合で考えてみると,
ヨウ素131とセシウム137をそれぞれ100万個ずつ
一緒に取り込み,体内に蓄積されたとする.
それから30年後にはどうなっているかというと,
ヨウ素131はほぼなくなっている,つまりは体内で
放射線を出しきってしまったことになる.
一方で,セシウム137は半分だけ放射線を出して
残り半分はまだ放射線を出していないのだ.
現実にはヨウ素は乳幼児は甲状腺に取り込まれるが,
大人はあまり取り込まれない.
また,セシウムはそもそも人の体内にはほとんど
取り込まれない.
つまり,崩壊する前に出て行ってしまうということだ.
通常の消化であれば取り込んだものは数日で
排出されるのだから,
セシウム人間でないならばあまり気にしなくても
良いということなのだ.
さて,あなたはセシウム人間?それとも普通の地球人?
【参考サイト】
Exploring the Table of Isotopes
→ 放射性同位体の崩壊に関する情報
周期表 (Japanese Periodic Table)
→ ちょっとしゃれた周期表
【ちょっと追加】
放射性物質としてのみを言っているので,
化学的には問題がある(いわゆる毒物)も
あるので,こっちは別の話.