※これはフィクションです

私を自由にする大きな翼

遠く遠くへと連れて行こうとするその翼を私は持っている。


何も話せず産声を上げるだけだった時から、随分と時間が経ち私は歩くことや話すことができるようになった。

それと同時に

小さい時に背中に違和感を覚えた

それはまさしく憧れだ

テレビに映る正義のヒーロー

皆をピンチから救い笑顔にする。


私はその時微かに思った

私もなりたい…と


背中の違和感はどんどん大きくなっていく

成長するに連れますます痛みが増していく


私は一歩一歩少しずつ自分の夢の道を歩いてく

その度に背中は痛くなる


高校3年生の私は、一番得意だった絵を使い皆を笑顔にすることに決めた。

小さいときから唯一褒められた私の長所

それを活かして私は皆を笑顔にする

必ず


その時背中から翼が生えた

羽は不揃いで、まだ発展途上の小さな翼


私は決心した

きっと近い将来自分自身が望む未来になってることに


大学に受かった

美術の大学だった

受かったと同時に私の自信も大きくなる


これから私は皆を笑顔にする作品を沢山生み出していくんだ!


数年後

私は現実を知った

学校である、展示会に私の絵を飾ることになり

もし誰かが私の絵を気に入れば買ってもらえるシステムになっていた

勿論私は自信満々で挑んだ。

しかし

沢山の人が絵を描いてる為、私の絵は誰も見てくれなかった

誰も立ち止まらず過ぎ去っていき、他の人の作品が売れていくのをただ、眺めていた


背中の羽は大きな翼をもち今にも飛ぼうとしてたはずが、誰かに翼を掴まれ

今まで一生懸命、綺麗になるよう育ててきた羽を誰かにもぎ取られている

逃げようにも強い力で私を抑えていて逃げられない


せっかくの綺麗だった羽が…

私の夢が…


私の心は深い傷を負い

暗い暗い闇の中へ足に重りをつけられ

投げ飛ばされた気分だった


私の羽は全てもぎ取られた

この先飛べなくなった羽を見て、私は泣いた


すると後ろから声が聞こえる

私の羽をもぎ取った奴の声だ

直感でわかる


私は怒り怒鳴った


どうして、こんなことをするの!

これじゃあもう二度と飛べないじゃない!!

これじゃあ…わたしの…私の生きている価値が何もなくなってしまう!!

小さい頃から私に求められていたのは絵だったの!

絵だけよ!!それを失ったら!私は…


死ぬしかないじゃない!!!

何も価値のない私なんて!!

あんた誰だよ!!

誰なんだ!!


今まで黒かった相手の顔がくっきりと見えた

私だった


私自身が自分で羽を失わせたのだ


私は気づいてしまった

絵がいつの間にかプレッシャーになっていて、描くことが嫌になってたこと

褒められる度に、今よりももっと頑張らないとと思っていたこと


もう一人の私が一言放った


貴方は貴方でいいんだよ

自由になって


私の心は救われた

暗かった、光がないと思っていた場所がどんどん明るくなっていく


空が青い

そして私の背中にはもう羽はないけど、どこへだって行ける自身がある


その後

私は大学をやめ、海外へボランティアとして行った

夢を叶えた訳じゃないけど、今こうして自分の手で目の前の人を笑顔にすることで今を生きている。

そして新たに夢ができた

それと同時に背中に小さな羽が生えた

けれども、以前よりも 

私の背中は前よりずっと軽い


私は私を生きていく