昔から僕は「大丈夫」という言葉が好きだった。
それは言葉だけでは無くて、本当に大丈夫だということだ。
生まれてからすぐに母親に捨てられた僕にとって
絶対に大丈夫、なんてことはこれまで一度もなかった。
特に施設を出てからは、生きていくのに精一杯で
他の人からみれば普通な事が僕には死活問題だった。
これまで、何人かの人に「大丈夫」と言われ
安心した途端に地獄に落とされたりもして
根拠のない大丈夫が一番嫌いだった。
明日が見えなくて不安な時
生きている重みに押しつぶされそうになった時
僕は誰かに「大丈夫かな?」と聞くことができなかった
自分が酷く臆病でカラッポだということは自覚しているから
酷い結末を知ることも見ることも怖かった。
暗くてよく前が見えない道を駆け抜けた結果
僕は本当に守るべき存在を失ってしまった。
でも、今は太陽のようにすべてを照らし、温め、導いて
くれる人と共に歩いている。
彼女から「大丈夫。」と言われれば本当に大丈夫な気になる
今日も僕の隣で眠る太陽を愛しく思える。
そして、彼女は今日も僕を温かく照らしてくれる。
僕が一番欲しかったモノを僕は手に入れることができた。