久しぶりに、生まれ育った街へ帰るため

 

車に乗った

 

田舎の街の道路はガラガラだったけど

 

生まれ育った街に近づくにつれて

 

少しずつ車が増えていく

 

車を降りると

 

改めて

 

人とモノと情報の多さにビックリして

 

私は少し立ちくらんだ

 

ビルがあって 

 

道路があって

車が走っていて

人がいて

 

うれしいことも

かなしいことも

 

すべてが

奇跡のバランスで

成り立っていて

 

街のエネルギーみたいなものに

今の私は簡単に呑み込まれてしまいそうで

 

自分が

前よりも随分、弱くなっていることに気付く

 

誰だって

生きていくことは大変だ

 

それはわかってる

 

でも今の私は

今この街でまるで無力だ

 

今になって思うと

あの頃の私は

あの街で

 

どうにか生き抜こうとしていたんだなあ

 

そう思った。

 

帰郷したついでに、私が知っている

 

奇跡の桜を観にいく途中

 

出身中学校に立ち寄った

 

随分昔に無くしてしまった卒業アルバム

 

「あの頃の自分」をもう一度見たくて

 

教頭先生にお願いした

 

個人情報保護の関係でアルバムは見せてもらえなかったけれど

 

私が写っている個人写真だけコピーしてくれた

 

「懐かしい」なんて、平静を装っていたけれど

 

本当は「あの頃の私」の

 

真っ直ぐな笑顔から逃げるのに必死だった

 

15歳の自分を見ていると

 

どうしても「家族」があった時代を思い出してしまって

 

その度に

 

あの頃には戻れないんだなあ

 

なんてぼんやり考えてしまう

 

「今を大切に」

 

「未来のために」

 

なんて口にする度

 

これまで自分が失ったモノの大きさを実感する

 

そして、私の知る限り

 

世界で一番綺麗な桜を観に行った

 

残念ながら桜はまだ満開では無かったけれど

 

展望台から見える景色は昔と変わらず

 

私の心を穏やかにしてくれた

 

大切なのは

 

「何がしたいか」

 

ではなく

 

「自分がどうありたいか」

 

変わらずそこにあった風景が

 

私にそう語りかけてくれたような気がした