私が飲食店を経営していた頃のお話
以前、カップルで来店してくれたお客様が
再び、来てくれた
しかし彼女さんの姿がない
以前、ご注文されたランチをお客様にお出しした時だった
彼女さんが亡くなってしまったとのことだった
「私で良ければお話をお聞きしますよ」
と提案すると彼はポツリと心境を語ってくれた
「いっぱいの幸せをありがとう。
私は幸せ者だ。
だって最期にあなたの顔を見れたから。
これも日頃のなんとやろなのかな?
病室のベッドで手を握りながら彼女は言う。
最期ってなんだよ。
お前は死なない、そうだろ?
泣きながら返す僕を見て笑いながら
あなた、前言ってたよね?
私が先に死んだら俺も後追うよって。
震えた声で彼女が言う。
あぁ、すぐに行くから先行って待っててな!
彼は本気で返した。
彼女がいない世界なんてきっと色のない世界と同じだと思うから。
ありがとう。
でも、絶対に来ないで。
その言葉が聞けただけで私は満足だよ。
あぁ、幸せだなぁ。
いい?
あなたは絶対に違う人を見つけて幸せになってね?
私の事は忘れて下さい。
大好きなあなたの足枷にはなりたくないの。
絶対に私の後を追わないで!!
約束しないと化けて出ちゃうよ?(笑)
返事が出来なかった。
ここで返事したら彼女がもうすぐ死ぬ事を
認めてしまうようで怖かった。
頭では理解してるつもりだが本当に認めたくなかったのだ。
ゆーびきーりげーんまんうーそついたら…
そうかすれた声でいいながら彼女は天国へ旅立ちました」
それから2年
好きな人は出来ないらしい。
だって彼女じゃなきゃ意味ないから
彼女とじゃなきゃ楽しくないから
でも、彼は後を追おうと思ったけど
約束守って追わなかった
自分まで死んだら彼女との思い出が
この世界から消えてしまうから。
辛いよ、毎日本当に辛いよ彼は言う。
いつかは俺もそちらに行きます。
その時はいっぱいいっぱい話しようね?
いっぱいいっぱい抱きしめて
いっぱいいっぱい頭なでて
いっぱいいっぱいキスをしよう。
幸せをありがとう。
あとすこし頑張って這いつくばってでも、
生きてみます。
彼はそうしてコーヒーを飲み終え
また新しい「明日」へ歩き出した
愛する人の死を乗り越えて前へ進む彼を見て
私は感動した