暖かくなってきました
今年はこちら方面は雪が積もることもなく
受験生はラッキーでしてね
昨年は何度も長靴で試験場に向かった息子は
雪山へ行ったきり・・・
今週末には帰ってくるらしい
昨年のsnowflake期間限定企画
とんちんかんに参加表明し多大なご迷惑をおかけした
まぁ記録なので春になる前に記録
大宮BLなので興味のない方はスルーで
Ti Amo
頬を撫でる風がひんやりしてきた朝 ふとジャケットのポケットに手を入れると
いつの間に入ったのだろうか 枯葉が1枚
足が止まり その葉っぱを手にする
また 空が凍えてくる季節がやってくるのだろう
ひとりが好きで あまりヒトとは関わりたくなくて
そういう仕事にもついてきた 最低限、働く以上関わりは必要ではあるが
専門である書誌学の研究を兼ねて行ったローマ バチカン美術館にある世界最古といってもいいバチカン図書館 もう何日も何時間も夢中で通った
数日たってシスティーナ礼拝堂の最後の審判を見ていないことに気づき 息抜きに行ってみることにしたある日
思っていた以上の感激にいつもの駅への道とは違う・・、
石造りの街並み 街灯は薄暗く角々の建物の2階部分に貼ってある標識もよく見えない 人通りもない
ローマではタクシーはタクシー乗り場でしか捕まえられない
たしか川を渡らなければローマテルミニ駅方向へは行けないはず
数歩あるけば遺跡というローマ 目の前に大きな城壁のような建物、頂上に天使がいる
やっと川のそばに、ほっとして川面にうつる街灯を見ながらタバコに火を点けしばし休憩
「火かして」
ひと安心して 周りに誰かいるのにも気づかなかった えっ日本語?
反射的にライターを差し出す
「ありがと」
薄明かりの中 よく見れば 俺とあまり変わらぬ背丈の男性 だよね
川かぜにたなびく栗色の髪 ふわふわした服装
「あんた 旅行?」
「まぁ旅行といえば そうだけど・・・」
「いつも 大聖堂前のバールにいるよね?」
なぜ知っている? 優先順位が図書館のせいか 観光客が少ない午後
タバコが吸える道路側のテーブルで軽食をとっていた
「えっ?」
俺の目の前にまわり グッと顔を近づけ
「見られてるの知らなかったでしょ うふふ」
初対面にもかかわらず あまりの近さに息が止まる
栗色の瞳 口角の上がった赤みの指したくちびる
男をきれいだなんて思ったことはなかったはずだ
見とれている自分にも息が止まる
「あっ ごめん 俺 カズ あんたは?」
「・・・・」
「アレ 見ず知らずの人間には答えられない?」
「そんなことはないよ ちょっとびっくりしただけ」
「大野・・・・智」
「智か」
「うん」
「ねぇ お腹空かない? いい店知ってるよ」
「アハハ 変な店にはつれていかないから安心して」
毎日 ラテン語とにらめっこ 耳からはイタリア語・・・
日本語で話すことに飢えていたのか ひとりの食事 いつもそうだけど
異国でそうさせるのか・・・
タクシー内で運転手と流暢なイタリア語で話す カズ
こいつは何者なんだろうか 少し不安がよぎる
俺の不安に気づいたのか
カズの手が俺の左手首をつかんで
「テルミニのそばでイタリア家庭料理の店、美味しいワインが飲めんの そこ行くから」
高級ホテルの並ぶ表通りの脇を入り裏通り たくさんのお店が道路側に大きなテントを張り大勢の人で賑わっている
カズに手を引かれながら、ひとがすれ違うのがやっとの路地を入るとその店はあった
イタリア家庭料理というなら小太りの中年女性が出てくると思ったが物静かな男性が店主のようだ
「静かないい店だね」
「そうでしょ ウフ」
カズがすすめたワインのせいか 何時にもなく饒舌な俺
店を出ると気がつかなったが雨が降ったようで街全体が霧でおおわれている
「どこ泊まってんの?」
「マッシモ ダゼリオ」
「いいとこ泊まってんじゃん」
「行っちゃおうかな・・・」
「えっ?」
「うふふ うそだよ」
「カ カズはどこに泊まってるの?てか住んでるの?」
「ドミトリー ひと駅先の ってもう電車ないから歩いて行くわ」
「ごちそうさま じゃあね」
チラッと寂しげな色を見せたかと思ったら
俺の頬にチュと音をたて触れるか触れないかのキス
振りかえざまに上げたカズの手をつかみ引き寄せる
「もう遅いよ 一緒に行こう」
俺の腕の中で見上げる栗色の瞳が左右に動く
「えっ?」
グッと力を入れて抱きしめる 鼻先をかすめるどことなく不思議で懐かしい香り
俺はこの香りの魔術にかかった
カードキーでドアを開け すぐの6畳くらいのスペース、クローゼットになっていて奥が広いバスルーム 横の部屋が広めのリビングスペースのあるベットルーム
見回しているカズの肩を強引に引き寄せ、頭をつかみ半ば強引にキスをする
ウウ~ン 胸を押され 睨むカズ
「ごめん・・・・」
「ううん ちょっとびっくりしただけだから」
手をはなさそうとしたら
「そのまま」と耳元で囁きながら背中に腕がまわってくる
顎を掴み ついばむようなキスをする
俺って何? 何をしているのだ? 当たり前のように女性としか付き合ってこなかった
この俺が男とキスなんかしてる・・・・
頭のはしでは感じてはいるのにお酒のせいか カズの香りなのか 理性はどこだ
カズの口から漏れる 甘い声
体の芯から湧き上がる熱
俺にもまだこんな情熱があったのか
どこかで冷静な俺がささやく
カズは俺のシャツのボタンをひとつづつ外していく
カズのシャツの下から手をいれ 背中をまさぐる 手から伝わるカズの熱
ふたりしてベットに倒れこみ 上になってカズの肩に顔をうめ思い切り息を吸い込む
あぁなんと魅惑的でこれは媚薬なのかと思うほどの香り,
「う~ん くすぐったいよ」
首をすくめるカズの耳にかぶりつき 舌で弄ぶ
「あっぁ あー」顎をあげてのけぞり 甘い声を出しつづける
「智 キ・・スして・・・」
軽く開いた赤みを指したくちびる 食むようにキスをする
舌で口内を丸くカズの舌を追いかける
そして絡め取る
カズのサラサラと柔らかい髪の毛の中の俺の手に感じる湧き出る甘い蜜の熱
「シャワー 浴びたい・・・」
「ダメ カズの香りが・・・」
「えっ?」
カズが熱をおびて ますます香り立つ
香りの森の中で・・・・さまよって・・・
中庭側にある窓からさす月明かり・・・
俺の上にまたがるカズの裸身は陽炎のようにゆらめく
強く抱きしめると崩れ落ちてしまいそうな 刹那
この小柄な男に なぜこのような色香があるのだろう
溺れていく恐怖 エクスタシー
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