another story <blue>③ | kei'

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日々のこと

慢性satoshic

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初夏だというのに 肌寒い雨の夜

2部のステージまでの休憩時間
雨の月曜のせいか テーブル席の空きが目立つ

裏の厨房の横の半地下の楽屋前

もう大学行ってるよりここでバイトしてる方が長い斉藤くん
『啓さん 雨の日のせいか 声の調子いいですね』
『そう ありがとう♪』
なかなかオダテ上手 まあウソでも悪い気はしない・・・

『外は結構な雨ですよ こりゃもう客入んないなぁ~』
ひとりでもいたら・・ステージは行なう それがプロ?
ジャズ歌手なんて プライドばかり高くて・・・ね
自分たちは違うって 鼻持ちならない人種 自分もそうかしら


外の雨を気にしだした客たちがゾロゾロと帰宅支度
斉藤くん
『さっき来た客 人待ち顔だから・・・啓さんおつかれ』ってピースサイン
ちょっと生意気になってきた

ピアノの三浦さん もの凄くセンスのいいタッチ ただ頑なな性格のせいか
そりの合わない人とは組まない
『啓ちゃん もうひと頑張りいきましょう』
『はぁ~い』

ごくごく薄~いフォア ローゼズをひとくち口に含んで・・・
いつものように いつもの歌を唄う
ほめてくれた斉藤くんのために唄おう~

[Rainy Days And Mondays]

最後のナンバーは雨の月曜日にはぴったりの曲

もう終わりと思ったころ 強い視線を感じ カウンターのほうに目を向けると
グラスを持った手の脇から Vサインを見せている男性が・・・

まぁ 気に入ってくれて なにかしらアピールしてくる男性がいないこともない
サッととったキャプの下に  見えた顔
それは紛れもなく 書店に行けば 何かしらの雑誌の表紙を飾っている

あの子 ではなく 大野智  くん

一瞬の乱れを感じてくれたのか 三浦さんがもう4小節弾いてくれる


お母さん 「今度」 あったわよ

『探したけど・・ウフフ 啓 さんって言うんだ』
『どうして来たの?』
すごく 嬉しいはずなのに 裏腹のいいよう・・・
『仕事は?大丈夫なの?』
『・・・・』
たばこに火をつけながら・・・
彼もまた 火をつけて
『大丈夫じゃなきゃ 来ないよ』
例の斉藤くんはキョロキョロ、目を白黒させてパニクっている

『もう終わり? 出られるの?』
『おしまい 着替えるだけよ』
『腹へってんだ どこか行かない? 飲みに』
1日中 雑誌の取材で 終わってすぐ来たと・・
明日は午後からTVの収録・・・
グラビア撮影じゃないから ちょっと飲んだって大丈夫って
たいへんよね 顔の映りまで気にして生活しなければならないなんて

三浦さん
『啓ちゃん 雨止んだみたいだよ お先にね 明日は赤坂だよね』
『明日もよろしくお願いします』
『OK』
その横でまだ閉店まで勤務が残っている斉藤くん
何か聞きたそうだけど オーナーがそばにいるので  ね
先に出て 地上にでる途中の踊り場に 首をちょっと前に出して
立っている姿は 均整がとれていて やはり  違う

『お待たせ どこ行く』
『オイラの知っている店でいい?』
『OK! じゃ出発』
ちょっとテレ隠しにおどけてしまう

サッと腕をとられ 自分の腕を絡みつけて 足早に歩き出した
あまりのさりげなさに抵抗もできず さっきの雨でできた水たまりをよけながら

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次 どうなるかしら アメ限で行くか 行くまいか・・・思案のしどころ

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