5月上旬の特選映画をアップロードします。今回4本を映画館で観賞、そして、選んだ特選映画1本は、ガス・ヴァン・サント監督の自殺願望の映画『追憶の森』でした。さほどの秀作でもありませんが、人間と時代のアポリアを何とか映像により対象化しようとする「映像の思想家」の片鱗を見たからです。
中高年が富士山の樹海で自殺することなど、原初的ではあるが、今改めて新しく鋭角的な問題ではないですーね。がしかし、先日5月初旬頃、東京・品川区の東急大井町線荏原町駅構内で、13歳の女子中学生2人が手を握りながら通過する急行電車に道連れ投身自殺しました。これはちょっと分析したくなる特殊な問題ですかね…。
内閣府自殺対策推進室・警察庁生活安全局生活安全企画課が発表するところでは、平成27年中の自殺者の総数は24,025人、前年に比べ5.5%減でした。 性別では、男性が16,681人で全体の69.4%、40歳代が4,069人で全体の16.9%、50歳代が3,979人で16.6%、60歳代が3,973人の16.5%、70歳代が3,451人の14.4%でした。40代から70代が全体の64.4%でした。若年層の数字がよくわかりませんが、女子中学生が自殺することは極めて珍しいです。私はできたら、中高年よりも、若年世代が、学内での苛めや生き甲斐や生活に悲観して自殺する社会現象と、その精神病理を、是非ぜひ映画にしてほしかったです。私には社会の新しい現象のように思えて仕方ありませんでした。若年層の自殺を映像化した作品って、あったけカナ・・・?そうそう、「ソロモンの偽証」があったかな…。宮部みゆきや湊かなえは、そう言えばこの辺りのテーマをミステリー小説にしていたかな…。ただ、何となく私は、彼女らの「母性」の視線での描き方が、何なんか物足りなかったのです。
さて、1本目は、高校のかるた部が競技かるたの全国大会に挑戦する末次由紀の人気コミックを映画化した青春映画『ちはやふる-下の句-』(小泉徳宏監督)の後篇でした。ヒロインの千早役に広瀬すず、競技かるたの幼なじみの太一を野村周平が演じる。前編を見た私にとって、小泉徳宏監督は後編でどんな展開と内容を盛るのか、チョット興味がありましたので、敢えて鑑賞しました。もう一人、千早と太一の幼馴染の新(真剣佑)のライバルで、個人戦で日本一となったヒロイン・若宮詩暢役に、松岡茉優が登場するストーリが、続編らしい波乱を巻き起こす・・・とは、思わなかったーな。
近頃勿体付けた題名の洋画に騙されて、観賞後にがっかり後悔する映画が多いので、さて、ゴールデンウッィークの最中に観に行ったこの作品に感激できるかなと、私は疑心暗鬼でした。がしかし、こんな映画ならば余暇を映画で楽しんだーと満足できる娯楽性豊かな映画でした。私こんな青春ドラマが好きなんです…。
2本目は、愛する妻を事故で喪い、生きることに絶望し、死に場所を求めて青木ヶ原樹海に遥々やって来たアメリカ人・アーサー(マシュー・マコノヒー)と、会社組織をリストラされそうなため自暴自棄から樹海を彷徨い歩き、しかしながら自殺を思いとどまって樹海から脱け出そうとする日本人・タクミ(渡辺謙)が出会う自殺願望の映画『追憶の森THE SEA OF TREES』(ガス・ヴァン・サント監督)
でした。
以前に一度聞いたことのある監督だなーと調べたら、やはり自らゲイであることを公表した活動家ハーヴィー・ミルクをショーン・ペンが演じたあの伝記的映画『ミルク』(2008年公開)のガス・ヴァン・サント監督でした。第81回アカデミー賞では作品賞を含む8部門にノミネートされ、主演男優賞と脚本賞を受賞した名作であるのにもかかわらず、以前この映画ブログで無惨にも掲載禁止となったので、尚更に私としては拘泥したい監督でした。この際、ガス・ヴァン・サント監督のほかの作品も観たくなったので、『グッドウィルハンティング』(1997年公開)と『エレファント』(2003年公開)の2本をDVDで観ました。チョット気になる監督作品は何本か続けて、作品の流れの中で観賞するのが一番ですーね。特に、「グットウィルハンティング」は、スラム育ちの、里子家で虐待された青年がー、しかも大学の構内掃除の仕事をしている街の不良が、難解な高等数学を解いてしまう、数学の天才の物語でした。もう一度見ても感動の傑作です。彼こそ若年層の自殺を映像化できる監督なのにーな…!!!
3本目は、平成へと年号が変わる直前の一週間の昭和64年に起きた未解決の少女誘拐殺人事件「ロクヨン」をめぐり、県警警務部秘書課広報室の広報官・三上義信(佐藤浩市)を主人公に警察内部の本庁キャリアと県警本部との対立や県警記者クラブの匿名事件と事件公表などの衝突などを浮き彫りにしていた犯罪捜査&刑事映画『64-ロクヨン-前編』(瀬々敬久監督)でした。
TVの刑事ドラマではよく見ている横山秀夫の原作小説です。前編は、時効が目前に迫っていた平成14年に再び誘拐事件が起こるところまでストーリが展開する。後編でもう少し詳細コメントを書きます。ただ、刑事ドラマの多い昨今で、この佐藤浩市と「警視庁捜査一課長」の俳優・内藤剛志は、このベテラン刑事役がぴったりですーね…。
4本目は、会社を大金横領で解雇されて、今はコンビニバイトで生計を立てている中津(東出昌大)と、驚異的身体能力を持つパンティー泥棒の常習犯でニートの土志田(窪田正孝)、彼がパンティーを盗む現場を目撃したことから仲間の一人になった女子高生のカオリ(小松菜奈)、両腕に忍ばせたハンマーで街の不良をボコボコに殴りローブで吊し上げる定年退職近いサラリーマン日下(片岡鶴太郎)が手を組み、街のクズのダニを懲らしめる自警団を結成する『ヒーローマニア-生活-』(豊島圭介監督)でした。
豊島圭介監督という人は、娯楽映画をそつなく面白く製作するが、観賞後に何の印象も、まして今年の暮れにはどんなストーリなのか何の記憶も残らない吉本の下手糞なお笑いドタバタ喜劇のような映画でした。
(尚、 誤字脱字その他のために、アップした後で文章の校正をする時があります。予告なしに突然補筆訂正することがありますが、ご容赦ください…)
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