2月中旬特選映画【6】★映画のMIKATA「フィフティシェイズオブグレイ」★映画をMITAKA | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。




2月中旬の特選映画をアップロードします。今月に映画館で観賞した特選映画は6本で、2月は通算12本でした。『マンゴーと赤い車椅子 』も味のある作品だなと一時思いましたが、『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』の妖艶なSMプレーに魅せられ、特選映画にしました。アナ役のダコタ・ジョンソンの美しい肉体が鞭打たれる苦悶とも悦楽とも見える表情に、この上ない快感を覚えました…。原始男は、槍を投げ弓を打つ古代よりサディストなのかもしれませんーね。女はすると獲物なのかな…?グレイが自分の幼児期をアナに語るシーンがありました。母はジャンキーの売春婦で、貧しい家庭で育ったと…。サドもマゾも、近代社会の歪みかなー。ひょっとすると己の幼児期の苦い痛みの追体験と慰撫なのかもしれない。


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1本目は、屈強な用心棒兼運転手のジョック(ポール・ベタニー)と共に主人公が盗まれた名画の行方を追う『チャーリー・モルデカイ 華麗なる名画の秘密 』(デヴィッド・コープ監督)でした。口ヒゲをたくわえた美術商チャーリー・モルデカイ役にジョニー・デップが主演、イギリスの諜報機関MI5に依頼されてゴヤの名画の捜索に乗り出す、ややコメディータッチの映画でした。


デヴィッド・コープは、監督というよりもむしろ脚本家としてこれまハリウッドの大作をたくさん手掛けています。例えば、「トイ・ソルジャー」 (1991年)、「ジュラシック・パーク」(1993年)、「ミッション:インポッシブル」(1996年)、「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008年)、「メン・イン・ブラック3」(2012年)等々の脚本スタッフとして参加しています。だからジョニー・デップ主演の映画監督も一本しか制作していないし、脚本も書いていないーね。どうりで、なんとなく彼のセリフも演技も違和感を覚える筈です…!そうね~、確かに『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズの海賊役や『ローン・レンジャー』の覆面の怪人役に見られる様に、やや滑稽な服装とコメディータッチのお道化たセリフもまたジョニー・デップらしい一面なのかもしれませんが、ただ、今作のギャグ満載のチャーリー・モルデカイ役のコメディー演技は、彼の面さをやや粗雑に扱ている気がしました。というよりも、むしろ彼の男の魅力と妙味をうまく演出していないなーと感じました。


ただ、今作でのドタバタ喜劇を見ていて、うーん、チャップリンのオタオタする喜劇、面白くてやがて哀しきのコメディーのパロディーでも演じているのかな…とひょっと思いました。ジョニー・デップもお前もかー、お前もチャップリンの喜劇を手本に近づこうとにしているのかーな?ジョニー・デップファンのみなさんー、どう思いますか…?


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看護師として働く宮園彩夏(元AKB48のメンバー秋元才加)は階段から転落して脊髄を損傷、半身不随になり車椅子生活を送ることになる。長い入院とリハビリ訓練の中で、心は荒み気分は沈み。生きることに投げ捨てになる。2本目は、同じ車いすの障害者や祖母・勝子(三田佳子)の優しい心遣いと励ましによって立ち直っていく、彩夏の姿を描く『マンゴーと赤い車椅子 』(仲倉重郎監督)でした。赤いマンゴーが祖母と家族の励ましの色であり、彩夏の生きる活力が赤い車いすを表現しているようです…。


仲倉重郎監督は、1999年頃より脊髄損傷で車椅子生活を送っているため、車椅子の映画監督ならであの視点、仲倉重郎でしか撮れない障碍者の心と体のハンディキャップがリアルに表現できているなーと思いました。例えば、段差のある階段を車いすで登るテクニックや、車いすのタイヤがパンクするなどは、なかなか健常者には気づかない視線ですー。ロックのボーカルが難病で次第に身体が動かなくなる恐怖など、障害者でなくては書けない心の痛みですー。この映画を序章として、私はこの障害者を主人公にした映画をもっと撮影してほしいです。 たとえば例えば、交通事故で左半身麻痺と記憶障害の後遺症を持つ車椅子の女性と、網走市内を走るタクシードライバーとの淡い恋を描いた作品、北川景子と錦戸亮が主演したラブストーリの『抱きしめたい -真実の物語』(2014年公開)などは、仲倉重郎監督ならばどう制作するかー?私には少し興味があります…。是非ぜひ障害者を主人公にした映画をたくさん制作してほしいです。今公開されている『きっと、星のせいじゃない』(ジョシュ・ブーン監督)などは感動的な障碍者映画の延長にあります。«ユニバーサルデザイン≫そのものの発想は、ベトナム戦争時の負傷兵の心と体のハンディーキャップから概念化されたと聞きます。特にパラリンピックで活躍した車いすのスポーツ選手や義足のアスリートなどを主人公にした作品が見たいです…!私に、そんな作品の脚本を書かせてほしいです。


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アメリカンフットボールのプロリーグ、クリーブランド・ブラウンズが、12時間後に迫ったNFLのドラフト会議で大物ルーキーを獲得するため、スポーツの勝敗とはまた別世界の裏の汚い駆け引きを描いたスポーツ映画です。3本目は、選手獲得の結果で弱小チームの来年度の起死回生が決まる日、ゼネラルマネージャー・サニー(ケヴィン・コスナー)を主人公にしたスポーツの裏舞台を描いた『ドラフト・デイ』(アイヴァン・ライトマン監督)でした。


スポーツのプロリーグが少ない日本では、こうした選手の狡猾なトレード合戦、優秀な選手獲得のためのチーム間の駆け引きは、プロ野球チームしか見られませんが、兎も角、ギャンブル並の心理戦と、壮絶な騙し合いと巧妙な駆け引きは、確かに映画として見ていても面白いストーリですね…。日本プロ野球の場合、高校野球の球児たちをチームに入団させるドラフト会議は、どのチームがどの投手やバッターをくじ引きで引き当てるか、テレビでも中継されるくらい大変ドラマチックな瞬間です。


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4本目は、ニューヨークの地下道に暮らし、悪の権化。犯罪組織フット団から街を守るべく戦う、忍者の扮装をしたカメのヒーロー「タートルズ」たちとテレビレポーターのエイプリル(ミーガン・フォックス)の活躍を描く『ミュータント・タートルズ』(ジョナサン・リーベスマン監督)でした。ヒーローたちの正体は人間の言葉を話し、体長180センチもあるカメだった。 それも昔、エイプリルが実験用に飼育していたネズミと亀が突然変異したものだった。


「ミュータント・タートルズ」のルーツは、既に1984年、ケヴィン・イーストマンとピーター・レアードの二人がアメコミとして誕生させたようです。その後瞬く間に人気は高まり、1987年にアニメ版が生まれている。スプリンター、レオナルド、ミケランジェロ、ドナテロが登場している。


「タートルズ」といえばヒップホップの仕草とリズムが定着しているようです。フット団といざ戦闘という直前にも、エレベータの中でヒップホップのリズにお道化た踊りが戦闘ラッパのように流れていましたーね。このあたりの愛嬌のあるギャクが人気の秘密なのかもしれません…!


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5本目は、スペイン製作のパニックホラー『REC/レック』シリーズ第4弾『REC/レック4 ワールドエンド 』(スペイン製作。ジャウマ・バラゲロ監督)でした。このシリーズはこれまで、「REC/レック(2007)」 第1作 、「REC/レック2(2009) 」第2作、「REC/レック3 ジェネシス(2012)」 第3作が公開されています。が、私は初めて観賞しました。本作では、大海原に浮かぶ逃げ場のない巨大貨物船で、次々と人間を獣のように変身させる恐ろしいウイルスが感染する。


ただ、他のパニックホラーと比較しても、さほど大胆で斬新なストーリ展開ではないだろうーね。率直に言ってB級ホラーなのかな…。ゾンビの恐怖が感染する「バイオハザード」シリーズ(2002年第一作)が、私は感染系ホラーの傑作であると思っています。だから、やや見劣りがしました。






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風邪を引いた同室の友達の代わりに、女子大生アナ(ダコタ・ジョンソン)は学生新聞の取材のため、巨大企業の若手経営者グレイ(ジェイミー・ドーナン)を訪ねる、が、未だバージンで今迄まだ恋愛体験もないアナは、グレンと話すうちにすぐに一目ぼれ、彼に心酔して虜になる。大富豪のグレイもまた純粋無垢で可憐なアナに興味を示す。次第に親密なデートを重ねているうちに、グレイと肉体関係を結び処女を捨て、グレイの最愛の恋人となる。しかし彼は、アナとノーマルな恋愛のできない肉体であった。ある日、ヘリコプターでグレイの豪邸に飛び、SⅯの赤いブレイルームへ案内される。6本目は、若くて美男子な大富豪グレイが、無邪気で可憐で純粋な女学生・アナに対して、サドマドの悦楽の苦痛と、性的官能を肉体に受容する男女関係の契約を求める『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』(サム・テイラー=ジョンソン監督)でした。


ノーマルな性的快楽を求めるアナは、ベッドで裸のグレイを抱きしめながら一緒に寝たいし、食事するときも散歩するときもいつも一緒にいたいと思っていたが、グレイはサド的な従属関係しか女性に求めなかっ

た…。夜のセックスの後に寂しく独りピアノを弾き、昼間はビジネスに忙しく働くだけで、アナとは離れた遠い存在であった。結局、アナはグレイと恋愛を続けるためには、彼がアナの肉体に与える苦痛を喜びとして受け入れる他がなかった。


家庭で家事と育児に忙しい主婦が、座興で書いてインターネットにアップした小説が人気を呼び、ベストセラーとなった官能小説が原作です。読者は未だ心と体の恋の炎とロマンスを燻らせている主婦たちです…。新しいネット時代の新しい出版文化です。あのイギリスの作家J・K・ローリングの魔法ファンタジー『ハリー・ポッター』シリーズによく似ています。暇に任せて書いた小説が思いもかけずにベストセラーになった。ベストセラー事情はよく似ています。しかしこの小説は、流石に女性向けのエロティックな小説「マミー・ポルノ」だけあって、成熟した男と女の官能の童話というべきストーリです。白馬の王子様が若く美男子の大富豪である点は、女性が従来から持ち続けている憧れのロマンスパターンです。が、その相手が鞭打ち、女性の肉体の苦痛に快楽を感じるサディストだったところが、ベストセラーになる人気の秘密なのだろうかね…?現代女性たちの肉体は、裸の暴れの背に乗り荒野を駆け巡っているのだろうか?先刻このブログで掲載したロマンポランスキー監督のあの「毛皮のヴィーナス」の、人間の心の襞を裏返した世界です。私として最後の瞬間に、グレイは帰るアナを拳銃で打ち殺すシーンにしたかったなー。


尚、この恋愛作品の続編が製作されることをジョンソン監督は既にコメントしている。より濃密なSMシーンを期待するー、ではなくて、エレベータの扉で別れた二人のその先の恋の結末のストーリが気になります。





監督の隣に並んでいるイケメンはどうやら彼女の夫らしいです。