7月推奨「ダークナイト ライジング」★映画のMIKATA【19】★映画をMITAKA… | 流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

流石埜魚水の【特選映画】、★映画のMIKATA★映画をMITAKA・・・

都市生活者の心と言葉を掌にのせた小説、電脳化社会の記号とイルージョンを巡る映画、都市の孕むシンボルと深層を探るエッセイ、街の風景と季節の色を彩る短歌…。小説と映像とエッセイと短歌をブログに・・・掲載します。


◆映像情報
上映時間 164分/劇場公開(ワーナー)/初公開年月 2012年7月/28日/
オフィシャル・サイト
http://www.darkknightrising.jp/

◆スタッフ
監督: クリストファー・ノーラン/製作: エマ・トーマス。クリストファー・ノーラン。チャールズ・ローヴェン/製作総指揮: ベンジャミン・メルニカー。マイケル・E・ウスラン。ケヴィン・デラノイ。トーマス・タル/キャラクター創造: ボブ・ケイン/原案: クリストファー・ノーラン。デヴィッド・S・ゴイヤー/脚本: ジョナサン・ノーラン。クリストファー・ノーラン/撮影: ウォーリー・フィスター/視覚効果監修: ポール・J・フランクリン/プロダクションデザイン: ネイサン・クロウリー/ケヴィン・カヴァナー/衣装デザイン: リンディ・ヘミング/編集: リー・スミス/音楽: ハンス・ジマー/特殊効果監修: クリス・コーボールド
◆ キャスト
 クリスチャン・ベイル:ブルース・ウェイン/ダークナイト=バットマン/マイケル・ケイン:アルフレッド/ゲイリー・オールドマン:ジェームズ・ゴードン市警本部長/
 アン・ハサウェイ:女盗賊のセリーナ・カイル/トム・ハーディ:ベイン/マリオン・コティヤール:ミランダ・テイト/ジョセフ・ゴードン=レヴィット:ジョン・ブレイク/モーガン・フリーマン:ルーシャス・フォックス/マシュー・モディーン:フォーリー市警副本部長

暑いですねー。熱中症にならないようにエアコンで涼しく快適に過ごしましょう。ハワイに行けるお金持ちは避暑地でひと夏をすごすのもいいですねー。近所のプールでひと泳ぎするのも健康と猛暑にはいいですねー。動物園の風通しのいい日陰のベンチで昼寝するのもいいですよー。そうそう、スーパー銭湯で汗を流した後に、リクライニングチェアーでビールでも飲んでオリンピック競技を見ながら寛ぐのもいいですかねー。でも映画好きは、クーラの効いた映画観で2、3本観ましょうー。兎も角も、この夏を快適に自分流に生きましょう。暑中お見舞い申し上げます   ロンドンオリンピックのライブ中継が真っ盛りです。なでしこジャパンのサッカー予選を観戦する声援から始まり、映画監督のダニー・ボイルが演出を担当した開会式典で、エリザベス女王と007のダニエル・クレイグの映像共演に拍手しー、喜劇俳優Mr.ビーンの登場にも抱腹絶倒しましたー。流石にヒューモアの国民性だなーと感嘆しました。女子柔道の激しい気力の衝突もありました。水しぶきと筋肉の緊張が一瞬の勝敗を賭ける水泳競技もありました。これでは、退屈な駄作映画を見ているよりもよほど興奮するー、映画の笑いよりも間髪の技で勝負が決まるオリンピック競技の方が感激するー、という映画ファンも多いのではないでしょうか。私も毎晩深夜までテレビに釘付けです。今回は、夏休みの子供向けアニメ映画が多くて、時間を惜しんで鑑賞する映画が少なかったです。でも、一応評判の高い「おおかみこどもの雨と雪」だけは観ました。ジーとする物語だなー、僕もこんな童話が書きたいと痛感しました。旧作をリライトして「ニッサン童話」賞にでも応募してみますかー。

 7月下旬の推奨映画をアップロードします。映画館で観賞した映画は 2本でした。1本目は、新しい法王を選出するために各国の枢機卿たちが招集され、ヴァチカンのシスティーナ礼拝堂で投票が行われる、ある意味で厳粛な宗教映画でした。が、選ばれたメルヴィル(ミシェル・ピッコリ)は、法王という地位の重責と、カソリック教徒たちの頂点に立ち、信仰の最高指導者として崇められる自分に心が揺れ、街中へ失踪する、宗教的権威のヒィエラルキーを崩壊逆転させる「ローマ法王の休日」(ナンニ・モレッティ監督)でした。2本目は、「バットマン ビギンズ」「ダークナイト」に続くシリーズ完結編といえる「ダークナイト ライジング」(クリストファー・ノーラン監督)です。ゴッサムシティを狙う暗闇の悪の象徴・ジョーカーを倒した8年後、再びブルース・ウェイン(クリスチャン・ベイル)が、ゴッサム・シティの平和を破壊するベイン(トム・ハーディ)の前に、バットマンの姿で立ちはだかるー。とは言え、ストーリの連続性を、ヤヤもすると失念しそうな第3作目でした。

「ローマ法王の休日」もホンワカやさしいペーソスとヒューマンな温かみを感じさせる味わい深い映画でしたが7月下旬の推奨映画にこの≪バットマン≫シリーズの突出した娯楽性を評価してダークナイト ライジング」を選びました。

 1本目の「ローマ法王の休日」は、どうしたらこんなヴァチカンの権威を覆してヒューモラスな宗教映画が描けるのだろうかと、原作兼脚本と監督を努めたナンニ・モレッティと、法王もまた一人の人間であり、自分の信仰に誠実な聖職者で、気弱で優しげな新法王を演じたミシェル・ピッコリの演技力にもまた感嘆しましたー。ひょっとしたら、ローマ法王の権威をここまで失墜させるようなこのような映画にヴァチカンからクレーム報道が発表されるのではないかと、心配するくらいです。しかし、私には、演劇好きで、信仰とは何かーと自問自答する市井の聖者というイメージは、まるでカロル・ボイチワ枢機卿の再来を望むようなストーリと思えましたー。寧ろ、欧州の政治の混乱を見たときに、この映画には、改めて今世界が法王に求める期待感が描かれているのではないのかな・・・!

ローマ法王が亡くなった後に、次の法王を決めるために、外界と遮断した部屋に籠って行われる法王選挙「コンクラーベ」の厳かな雰囲気と伝統的なセレモニーは、ハーバード大学で宗教象徴学を専門にするロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス主演)が登場する「ダ・ヴィンチ・コード」の続編「天使と悪魔」(ダン・ブラウン原作。ロン・ハワード監督。2009年公開)で精彩に描かれて、未だに私たちの記憶に新しい傑作映画です。

以前にも引用した岩浪新書の「バチカン ローマ法王庁は、いま」(郷富佐子著)には、1978年10月のヨハネパウロ二世の誕生をサンピエトロ広場の信徒達と群集に告げる白い煙の立ち昇る瞬間を描いていますが、バルコニーでポーランド出身の「カロル・ボイチワ枢機卿」が就任の挨拶したとき、群集はドイツ軍の石切り場の強制労働を生き抜き、共産圏で生き残った彼の経験の重みに拍手喝采したー。ミシェル・ピッコリの演技と雰囲気は、ヨハネパウロ二世によく似ていました。

 2本目の「ダークナイト ライジング」は、、クリストファー・ノーラン監督による「バットマン ビギンズ」(2005年公開)「ダークナイト」(2008年公開)に続くシリーズ完結編といえる第3作目の作品です。私は映画を見ながら、ハテ旧作のストーリ展開のつながりはどうであったかなーと混乱しました。そこで、これまでのストーリを簡単にまとめておきます。第一作で、大富豪一族の御曹司に生れたブルース・ウェインは、お屋敷の井戸で体験したコウモリの大群に異常な恐怖心を持ち、さらに両親が眼前で惨殺されることからさらに大きなショックと恐怖心を残した。父の遺した財閥企業を受け継いだブルースではあるが、子供の頃に体験した恐怖心と根深いトラウマ、忌まわしい過去の復讐心と「悪」への憎悪に悩まされていた。そこで、ヒマラヤの奥地に潜む秘密結社「影の同盟」の中で心身を鍛え、自分の心の弱さと心の闇から自分を解放しようとする。そして再び彼は新しい人格でゴッサム・シティへと舞い戻って来る。街は犯罪と暴力がはびこってたいた。ブルースは、恐怖心の元凶であったコウモリを「悪」への武器にして、黒いこうもりのマントを身に纏い、コウモリの羽ばたく仮面をかぶった「バットマン」姿に変装して、悪の組織と戦いを始めるー。

第2作で゜はバットマンは、ゴッサムシティの警察組織のゴードン警部補と手を組み、闇の世界で暗躍する白塗りの化粧に裂けた口に血のように赤いルージュを塗った「ジョーカー」との戦いを始める。バットマンと平和なゴッサムシティには、次々と凶悪事件が巻き起きていた。そんな中で、新しく街にi赴任した正義感に燃える地方検事・デントもまた、バットマンの悪との戦いに協力しあう一員となる。ジョーカーは街を混乱に陥れ、バットマンたちを破滅の窮地に追い込むー。今回の「ダークナイト ライジング」はその続編になります。

第3作のこの作品にこれまでにない何か新しい魅力的要素があるとすれば、セクシーな肉体でバットマンを翻弄する魅力的な女盗賊の悪役の「アン・ハサウェイ」の登場でしょうかー。他の映画で登場した魅力的な悪役を様々な場面に起用する≪バットマン≫シリーズもまたステキな映画を想像できます。魅力的な悪役はバットマンの敵でなくて、パートナーなんですねー。単純に楽しみ、映画で時間を忘れるというのが「娯楽映画」の真骨頂なのですね。今回の表の悪役「ベイン」(トム・ハーディ)と、一夜をバットマンと共にした身近な女という意外な影の悪の「ミランダ・テイト 」(マリオン・コティヤール) もまた魅力的な悪役でした。これまでにない優れたストーリトリック、逆転劇の伏線です。私としては、結局、アメリカ人の本質、アメリカの≪正義≫がよく表出されている作品だなと思います。「悪」との戦い、滅ぶか滅ぼされるかの闘いしか「正義」は決着がつかないー、ということですかね。

私としては、『ドラゴンタトゥーの女』のように、シリーズ3作品を違う監督が新しく製作して、一本にまとめた3時間程度の長編映画「バットマン」が見たいです。バットマンは、最後に原子爆弾を抱えて海上に消え、ゴッサムシティの破滅を救いました。そして、銅像と墓石が建てられました。がでも、ウェインは生きていそうですねー、これは続編がありそうだなーと予感しました。まるで「シャーロックホームズ」のような終わりかたでした。