「れんげ野原のまんなかで」 森谷明子 2006-044 | 流石奇屋~書評の間

「れんげ野原のまんなかで」 森谷明子 2006-044

あの伊坂幸太郎氏の「アヒルと鴨のコインロッカー 」を排出したミステリ・フロンティアレーベルの第11回配本の「れんげ野原のまんなかで」を読了しました。

図書館で起こる様々な事件を、そこに勤務する司書が解決していくというストーリなのですが、この「図書館で起こる」ってのが、極めて親近感が沸き、個人的に「あり」なシチュエーションなわけです。

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森谷 明子
れんげ野原のまんなかで
出版元
東京創元社
初版刊行年月
2005/02
著者/編者
森谷明子
総評
20点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:3点 
読了感:4点 
ぐいぐい:3点 
キャラ立ち:3点 
意外性:3点 
装丁:4点

あらすじ
秋庭市のはずれもはずれ、ススキばかりがおいしげる斜面のど真ん中に立つ秋庭市立秋葉図書館、そこが文子の仕事場だ。無類の本好きである先輩司書の能瀬や日野らと、日がな一日あくびをしながらお客さんの少ない図書館で働いている。ところがある日を境に、職員の目を盗んで閉館後の図書館に居残ろうとする少年たちが次々現われた。いったい何を狙っているのか?(第1話「霜降――花薄、光る。」)<<東京創元社HPより抜粋>>


「図書館を舞台にしたミステリ」。
図書館を猛烈に利用している私にとっては、それだけで親近感がありますが、ここに登場する「秋葉図書館」は、「比較的、市街から離れている」「利用者が少ない」ってことで、普段から通っている図書館に雰囲気が似ており、余計に親近感が沸いてしまいました。

で、そこに勤める司書が探偵役となり、日常に起こるちょっとした謎を解いていきます。(雰囲気は加納朋子氏あたりに似ています)
例えば、普段利用しない小学生達が図書館に隠れて一夜を過ごそうとするのは何故か?とか、様々な人が「何を借りているか」が分かってしまうリストがコンビニのコピー機に放置されていたのは何故か?など、日常のちょっとした事件の謎を解いていきます。
ミステリ自体は、比較的分り易い種のものであり、奇をてらった趣向はありません。
きっちりミステリのルールが守られた正統なミステリ小説
ってことですかね。(ま、ミステリに正統って表現は如何か?という自問はありながら)

各章は、
「霜降―花薄、光る。」
「冬至―銀杏黄葉」
「立春―雛支度」
「二月尽―名残の雪」
「清明―れんげ、咲く」
という季節感の溢れるタイトルで、作中も四季の移り変わりの表現が、美しく描かれていると思います。

で、冒頭に戻ってしまいますが、閑散な(もちろん良い意味で)図書館の雰囲気が文章のあちこちにちりばめられ、「図書館フリーク」の私にとっては、やっぱり「ほっとする小説」だったりします

こういった親近感を持てるってことが、改めて分ったので、「図書館」をテーマにした他の小説も読んでみたくなりました。(と、極めて個人的な感想でしめくくります)