「ブルータワー」 石田衣良 2006-035 | 流石奇屋~書評の間

「ブルータワー」 石田衣良 2006-035

キマシタネ。
石田衣良の描く200年後の世界。
これは完全なSF。
意外に好きなのですよ、ちゃんとした歴史を持った未来小説。

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石田 衣良
ブルータワー
出版元
徳間書店
初版刊行年月
2004/09
著者/編者
石田衣良
総評
21点/30点満点中
採点の詳細
ストーリ性:4点 
読了感:3点 
ぐいぐい:4点 
キャラ立ち:3点 
意外性:4点 
装丁:3点

あらすじ
平凡な一人の男が、天を衝く塔を崩壊から救う。高さ2キロメートルの塔が幾多の危機を越え、雲を分け聳え続けるのだ。世界を救うのは、夢みる力!魂の冒険と愛の発見の物語。石田衣良の新たな挑戦―心ゆすぶられるヒューマン・ファンタジー。<<Amazonより抜粋>>


随分前に読んだ、椎名誠氏の「アド・バート」を思い出しました。
あと、やっぱり「マトリックス」ですかね。
で、やっぱり魅力ある未来小説ってのは、退廃しているんですよね。ははは

今回の退廃の原因は、化学兵器として人が作成したインフルエンザウィルスの「黄魔」。
人々はその猛威から逃れるため、高さ2000メートルもある塔を作り、隔離された生活をしている。
そこには「高さ」による圧倒的な差別があり、絶え間ないテロが起きていたりします。

そんな200年後の世界に、悪性の脳腫瘍を持ち、余命わずかの瀬野周司が意識だけタイムスリップをして、どうにかして、「200年後の世界」を救おうとするといった話です。

他のSFとの違いは、この200年後の世界が、瀬野周司の意識の中だけの話であることと、意識が現代と200年後を行き来することができるということ。
そして、現代と200年後の世界には瀬野以外にも、対称となる人物がそれぞれいるということ。
このシチュエーションは、なかなか興味深かったです。
ただ、この対称となる人物の現代と200年後をきっちり対比できていれば唸るほどの作品だったかもしれません。

例えば、200年後の大地の家の副棟梁であるアラクシや、吟遊詩人のカネマツなど、比較的キーパーソンと呼べる登場人物の対称となる人物が登場しなかったりしますんでね。


ラストでは、200年後の世界の退廃の原因である「黄魔」が、現代のとある研究から発していることに気がついた瀬野は、200年後には物質を持ち込めないことから、ある手段に出ます。
この辺り、なかなかにしてファンタージーなラストだったりします。

個人的には200年後の世界に登場した「ライブラリアン【ココ】」が欲しいですね。
アレはいいですよ。なにかと・・・