さやかの病気が分かってから、今まで数多くの涙を流して来ましたが、
悲しさのあまり号泣した最初の日は、さやかの大腸がんの手術をする前日でした。
告知された日は、実家の父に電話連絡した時も激しく泣きましたが、
悲しさというよりも、張り詰めていた物が一気に溢れるような感覚で、
悲しさによる号泣という意味では、手術前日が最初でした。
この日。
私は手術前日という事もあり、
仕事はお休みをもらってさやかの病室で過ごす事が出来ました。
手術前日という事もあり、さやかも不安そうにしていましたから、一緒についてあげられて良かったと思います。
そして夜になって、
私はさやかから手紙を受け取りました。
宛先は私の両親に向けたもの。
この手紙を読んだ時、始めて悲しみのあまり号泣してしまったのです。
その時の状況は以前にも書きました。
内容はこの通り、
男の子を授かる事が夢だったんだと、
それが実現出来て良かったと、
そんな内容でした。
さやかがそんな風に思っていてくれた事は、とても嬉しかった。
そして治療も前向きに頑張ると書いてくれてはいましたが、
男の子を産んだ事に後悔はない。
やり尽くしたような表現を読んだ瞬間に。
涙が溢れました。
「こんな事書かないでくれよ!」
私は涙を流しながら、そうさやかに言った記憶があります。
今までは喪失する事を、私が勝手に想像する事によって悲しみが生まれていましたが、
さやかがそう考えている事を実感した時、心の芯から悲しみが襲ってきました。
現実感。
というのを感じ始めたのも、この時だったかもしれません。
でもさやかはあっけらかんとしていて。
「なーに泣いてんの。」
と笑っていました。
今思えば、
さやかが泣いている時は、私は泣かない。
私が泣いている時は、さやかは泣かない。
そんな関係だったような気がします。
もっと一緒に泣きたかったな。
少しだけ。残念に思います。