「お帰りなさい」という言葉は全く言い慣れていなかった。

 

言う機会もあまりなかった。
 

今は家にサポートで週に半分くらい来てくれている、さやかのお義父さんとお義母さんが買い物から帰ってきた時に言う機会がある。

 

さやかが元気でいた頃は、「おかえりなさい」は言われる方で、専ら「ただいま」と言う側だった。
 

 

「おかえりなさい」を言うのって、結局難しい。

 

相手が帰ってくる時に自分が別の事をしていて集中していたり、帰ってきた人が家の中のどの位置まで来た時に言うタイミングとか。

 

 

玄関だと遠過ぎて聞こえないかもしれないし、リビングに来てからだと大分待つし。

 

大した話じゃないけど、案外考えてしまう。

 

 

今思うと、さやかの「おかえり!」は絶妙だった。

 

特にタイミングも何も考えてなかった可能性が大だけど、

 

その声から、帰って来てくれて嬉しい、という気持ちが伝わってきた。
 

 

だから私は、仕事がどんなに遅くなってもご飯を外で食べて帰る事はほとんど無かった。

 

私が帰る事を心待ちにしてくれる人がいるから。

 

 

妻のおかえりの声を聞いて、妻の作ったご飯を食べて寝て、疲れを吹き飛ばして、次の日は元気になって仕事に行っていた。

 

もう彼女の作ったご飯は食べられないし、彼女の「おかえり」の声は聞けない。

 

 

聞きたいよ。。何でもう会えないんだ。
 

 

 

失った物はとても大きいけど。
 

 

それでも子供達の笑顔がある。
 

 

贅沢ばかりは言ってられない。