2017年10月17日。
 

朝起きたのは、

いつもの寝室とは違う場所。
 
 
最後の夜をさやかと過ごした場所。
 
葬儀場の遺族控え室。
 
 
朝、目を覚ました時、
 
右には娘、左には息子が眠っていました。
 
 
私達家族は3人になっていて、
 
文字通り、川の字で寝ていました。
 
 
これから私が命がけで守っていく存在。
 
どちらも本当に可愛い。
 
 
守れる気がする。
 
空で見守ってくれれば大丈夫。
 
 
おはようさやか。
 
昨日は楽しかったね。
 
 
今日はさやかを空へ送る日。
 
喪主なんて初めてだから、
 
緊張はするけど。
 
 
子供達の変わらぬ笑顔を見て、
 
今日これからの事を考えて、
 
さやかと過ごした日々を思い起こしたら、
 
力が湧いてきました。
 
 
癌と闘った日々も最後まで全力だったから、
 
ここで気は抜けない。
 
 
喪服に着替えに一旦自宅に戻りました。
 
岩手の姉夫婦や秋田に住む叔母、従兄弟など、
 
遠くからみんなが来てくれて、
 
全員揃っていました。
 
 
久しぶりに会った遠く秋田に住む叔母は、
 
私と目が合った瞬間に抱きしめてくれました。
 
大人になって会う機会は減ったけど、
 
私が子供の時は、 頻繁に遊びに行ったりと、
 
いつも優しくしてくれて、お世話になった人。

 
暖かい。。
 
ふいに涙が溢れて止まらなくなった。
 
辛かった。悲しかった。悔しかった。
 
 
私の中で張り詰めていたものの存在に気付いた時でした。 

 
さやか以上に頑張ることなどあり得ないから、
 
まだまだ頑張り足りないと思っていたけど、
 
私も頑張っていた事に気付きました。
 
 
私も楽になれたのかな。。
 
 
複雑で様々な想いが爆発して涙が止まりませんでした。
 
 
家族みんなで葬儀場へ向かいました。
 
さやかは既に祭壇に移され眠っていました。
 
相変わらず穏やかな表情。
 
 
今日はみんなが来てくれてるよ。
 
 
綺麗なお花が沢山飾られて華やかじゃん。
 
 
いつものように持ち物チェックしたかな?
 
 
俺が選んだ物だけど、文句はないかな?
 
 
娘から聞いたよ。昨日、夢の中で会いに行ったんだって?
 
久しぶりにママの笑顔を見れたから、嬉しかったって言ってたよ。
 
 
たまには俺の夢の中にも会いに来てくれよ。

 
 
 
話したい事は尽きない。
 
 
葬儀が始まる。
 
お坊さんが唱えるお経の中、想いを巡らせる。
 
 
さやかと出会ってから、
 
良い事も悪い事も、
 
楽しい事も辛い事もあった。
 
全てをさやかと一緒に乗り越えてきた。
 
もう君はいない。本当に悲しい。
 
 
特に息子はまだ1歳。
 
娘は辛うじて記憶が残るかもしれないけど、
 
息子は間違いなく母の記憶は残らない。
 
これから先も、
 
母親の優しさ、柔らかさを与えてやれない。
 
それがとても悔しい。
 
 
ベビーカーに乗せられた息子。
 
こんな時でも無邪気な笑顔を振りまいている。
 
頭を撫でてあげました。
 
 
そうだった。笑顔が一番大事だった。
 
忘れてたよ。ありがとう。
 
 
祭壇に飾られていた花を、
 
みんなでさやかのお棺の中に添えました。
 
 
大量のお花。
 
包まれているさやかの姿はとても美しかった。
 
お花もとっても似合っている。
 
 
喪主として、夫として、父として、
 
最後に私が妻宛てに書いた手紙を、
 
みんなの前で読み上げ、さやかに捧げました。
 
 
 
さやかが欲しいと言っていた手紙。
 
恥ずかしいし、手紙なんて書いた事が無いし、まだまだ君は死なないと思っていたし。
 
なんだかんだで言い訳を付けて、
 
ずっと書けなかった手紙。
 
書いたのは亡くなる4日前になってしまったけど、

今考えると渡すのが間に合って良かった。
 
 
あの時さやかは、
 
愛に溢れている文章と言って、泣いて喜んでくれました。
 
 
手紙には沢山の感謝の気持ちを綴りました。
 
 
結婚してくれてありがとう。
 
子供達という宝物を授けてくれてありがとう
 
全力で私を支えてくれてありがとう。
 
そして最後に。
 
一緒に病気と闘ってくれてありがとう。
 
 
本当に辛かったけど、病と闘ったこの1年がさやかと夫婦として過ごしてきた中で、一番本気でさやかと向き合う事が出来た。
 
本当の夫婦になることが出来た。
 
 
最期まで傍にいて、さやかに寄り添えた事は私の誇りです。
 
子供達と一緒に、さやかの分まで幸せになって、また天国で家族一緒になった時に語りあおう。
 
その時まで待っててください。
 

そんな言葉をさやかに捧げました。
 
 
葬儀場から火葬場へ移動。
 
 
本当にお別れの時。
 
 
ママの体は消え去り、
 
ママの魂は空へと登るんだよ。
 
これからは空からママは見守ってくれるから。
 
寂しくないよ。
 
 
まだよく分からないかな、と思いながらも、
 
娘にそんな話をしました。
 
 
でも娘は、分かっていました。
 
ここでお別れになる事。
 
ママは死んだ事。
 
もう会えない事。
 
 
でも。。

 
ずっと見守ってくれている事。
 
夢で会える事。
 
ママは側にいる事。
 
 
お棺が閉められる。
 
さやかの最後の姿を目に焼き付ける。
 
 
火葬炉の扉が下げられた瞬間。
 
 
「バイバイ、ママ!」
 
 
怖かったけど、泣きじゃくっていたけど、力を振り絞って、
 
娘はずっと今まで言えなかった母へのお別れの言葉を言えました。
 
 
さやかが教えてくれた、
 
強く生きること。

 
もう大丈夫。
 
子供達も私も、きっと頑張れる。
 
だからもう、心配しなくてもいいから。
 
 
バイバイ、さやか。
 
 
また会おうね。