2017年9月30日。
 
この日から妻は、私には明かさずに日記を書き始めていました。
 
 
この日記の存在を知ったのは、妻が亡くなった翌日。
 
お棺の中に入れて、一緒に天国におくるものをどれにするか、整理をしていた時です。
 
 
日記を書き始めたと言っても、
 
この妻の日記の最後は2017年10月7日。
 
 
ほんの8日間しか書けていない日記です。
 
 
亡くなる前の1週間ほどの期間は、
 
せん妄の症状がさらに悪化し、
 
文字が書ける状態ではなくなりました。
 
 
ほんの8日間の日記でしたが、
 
妻の悲しさ、悔しさ、葛藤、無念。
 
そして日を追うごとに、字の形は崩れ、痩せ細っていく。
 
 
最後の日の日記はほんの1行。
 
娘の秋の運動会の前日。
 
「体調がわるくやすませてもらった。。」
 
消え入りそうな文字で締めくくられていました。
 
 
文の内容だけでなく、文字の形からも、
 
妻の命の炎が消え衰えていく。
 
その様子が伺えました。
 
 
2日ほど遡り。
 
2017年9月28日。
 
K病院入院3日目。
 
大量吐血をし、A病院からK病院に緊急転院となった妻。
 
その後は吐血もなく、食事も少しずつ再開。
 
日中の眠気が強く、会話はままならない事もありましたが、精神的にはとても安定していました、
 
A病院のストレスから開放された事も大きかったと思います。
 
 
ヘモグロビンの値を改善させるために行ってきた輸血の効果も良く、
 
この日、妻は退院。
 
正真正銘に我が家に帰る事が出来ました。
 
 
ついに我が家に帰れる時が来た。
 
A病院に入院したのは9月19日。
 
途中一度だけ外泊で帰ってきましたが、実質10日ぶりの我が家。
 
 
ですが、妻の状態はあまりにも悪く、
 
退院を祝う、という雰囲気ではありませんでした。 
 
 
我が家に帰ってきたものの、すぐに妻は寝室で寝たきりの状態に。
 
義父、義母と子供達と一緒に、重苦しい空気。
 
妻不在の食卓で、無言で夕食を済ませるしかありませんでした。
 
 
翌日。
 
2017年9月29日。
 
妻は久しぶりに我が家で朝を迎えましたが、
 
体調不良で相変わらずほとんどの時間を寝室で寝たきりで過ごしていました。
 
それでも頑張って、たまにリビングに顔を出す妻。
 
 
子供達と一緒の時間を過ごしたいと頑張ろうとしますが、
 
子供達の騒ぎ声と自由な行動に耐えきれず。
 
すぐに疲れて、リビングと寝室の行ったり来たりを繰り返す。
 
 
私もフォローしたかったけど、
 
体力的な限界が来ていたのか、朝から発熱し、安静にしていました。
 
 
家庭は破綻寸前でした。
 
 
何かを変えなければ壊れてしまいそう。
 
私は盛岡に住む実家の両親に相談し、
 
育児サポートで3日間だけ来てもらう事をお願いしていました。
 
 
この日の夕方。
 
盛岡に住む実家の両親が到着しました。
 
 
疲弊していた私達とは真逆で、
 
久しぶりに東京に上京し、明るくテンションの高い父と母の姿は、
 
今の私達からすると、何だか現実離れをした人達に感じました。
 
 
たいぶ年を取っているけど、自営業を続けていて現役の社長である父は異常なくらいパワーがある人。
 
妻の状況は逐一報告していて、辛い状況は十分に把握していたから、
 
ここはあえてわざと能天気に接してくれたのだと思います。
 
それが有難い。
 
 
全ての選択が上手く行かず、
 
深い闇の中にいた私達の、
 
淀んでいた空気を少し変えてくれた存在でした。
 
 
妻が闘病中に残した日記はお棺には入れませんでした。
 
病気になる前の楽しい時期を記録した日記もあり、それは一緒に入れましたが、
 
闘病中のものは、辛いことを思い出させたくないと思ったので、
 
今でも私が保管しています。
 
 
この日の様子を妻は記録していました。
 
 
--妻の日記より--
朝から眠気がひどい。
困る。
何とか解消してもらわないと。
 
この異常な眠気は肝臓の状態の悪化から来るものではないだろうか?
 
マンションの秋祭り。
知り合いを何人か見つけたけど。
自分からは声をかけられない。
 
目の黄疸をバレたくないと思って。
何だか楽しくなかった。
盛岡の両親が来てくれた。
子供達と遊んでいる姿を見ると、
楽しそうで安心する。
 
これが当たり前の光景なのかな。
 
普通に生きたい。
 
普通のママとして、
当たり前のことを当たり前にやりたかった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

[クーポンで7%OFF! 3/6 18:00-3/10 0:59] \楽天1位/...
価格:2990円(税込、送料無料) (2020/3/7時点)