2017年8月9日。

息子の入院6日目。
 
息子は明後日にでも退院出来る見通しが立ちました。
 
 
完調とは言えないまでも、
 
呼吸音の状態が改善してきていて、
 
この調子で行けばそのくらいの退院になると担当医師が説明してくれました。
 
 
息子もかなり体調が回復して、
 
満面の笑顔。
 
 
この写真が妻の一番のお気に入りでした。

他人から見たら、ただの親バカでしょうが。
 
本当にいい写真が撮れました。
 
 
妻の病気が発覚してから、子供達の写真を撮る機会が増えたように思います。
 
 
妻はこの後、入院生活が長くなる時が訪れます。
 
 
病室の傍らには必ず、この息子の満面の笑顔の写真が貼り付けられていました。
 
妻の生きる希望になった写真の中の1枚です。
 
 
この日もいつものように、
 
午前中にお義母さん、お義父さんと息子の看護をバトンタッチ。
 
 
そしてこの日は、骨転移の状態と今後の治療方針についてJ大学病院の担当医師に相談に行く日でした。
 
 
朝9時。
 
満員電車に揺られて体調が悪そうな妻。
 
どうやらそれだけではなく、
 
朝っぱらから娘が相手にして欲しくて、
 
ワガママを言ってグズったのが腹立たしかったらしい。
 
 
娘には多くの我慢をさせている。
 
妻も気持ちに余裕がない。
 
今にも爆発しそうな家庭の状態でした。
 
 
いつも頼っていたスーパー銭湯でのストレス発散も、
 
体調が不安で行けない。
 
解決しなければならない事はたくさんある。
 
 
でも今日は、骨転移にどう向き合うかを決める。
 
それだけに集中しなければならない。
 
 
J大学病院に到着。

主治医が予約を取ってくれていたので、待ち時間もそれほどなく呼び出された。
 

骨転移の状況を説明してくれたのは大学教授。
 
教授のイメージは人それぞれだと思いますが、この先生はじっくりと親切に説明してくれました。
 

転移のある場所は、背骨や仙骨など複数。
 
「多発性骨転移」
 
と診断されました。
 
 
また多発性か。。
 
肝臓も肺も多発性。
 
何でだよ。
 
何も悪い事してないのにな。
 
 
その後、先生が続けました。
 
「ただ多発性ではありますが、骨転移の分類としては造骨型になります。骨が溶けやすく骨折や痛みを生じやすい溶骨型とは違います。」
 
どういうこと?
骨転移にも種類があるのか。
 
「骨転移に対する治療は放射線治療になりますが、抗ガン剤等の他の治療と並行して行うのは負担が大き過ぎます。」
 
確かに治療が増える事を気にしていました。

新たな敵と対する余裕はどこにもない。
 
 
「造骨型は骨が固くなっていきますが、骨折のリスクも低いです。他の臓器の治療を優先すべきと考えますが、いかがでしょうか。」
 
明確な提案を頂けてありがたかった。
 
そして「造骨型」という、あまり悪さをしないタイプの骨転移だという事が分かって安心した。
 
 
念のため、ランマークの注射と副作用予防の薬を処方をしてもらうよう、主治医と連携して頂きました。
 
 
多発性骨転移だとしても。
 
 
もはや気にしている場合ではない。
 
 
死に直結する他の大きな問題を抱えているのだから。
 
 
重篤な状態ではない事を知って、不機嫌だった妻の顔に笑顔が戻ってきました。
 
妻が笑っている事。
 
それが最も価値がある事。
 
 
骨転移の事は忘れる事にしました。