【架空ライブ2025】第4部(懐かしの湘南・鎌倉のコーナー、M18~M20)
桑「…懐かしの湘南・鎌倉コ〜ナ〜!!」
場内に大きな拍手。桑田さんも椅子に座った。
桑「はい、ということで…ええいま聞いていただいたのが、原さんの『風のタイムマシンにのって』という曲でございまして、あの我々はデビュー初期なんかね、もう海だの砂浜だの、そういったネタしかないのかって言われてきたバンドですけど、江ノ島とかね、思い入れのある場所を曲に入れたいな!とか。そう思って色々と曲を作ってきまして、今回もあの原さんにね、歌っていただきましたけれどもね…」と原さんの方を振り返る。
また大きな拍手。
桑「ということで、ちょっと今からね、そんな我々の原点…原点というべきかなんというか、そういうね、ええ、鎌倉とか湘南とか、そういう場所への思いを馳せた曲をやってみようという、いかにも取ってつけたようなコーナーでございまして…」
客席から笑い。
桑「それではまず聞いていただこうと思います。『湘南SEPTEMBER』という曲です。」
18. 湘南SEPTEMBER
曲が始まると波が打ち寄せる映像が。「さくら」収録の湘南SEPTEMBER。ゆったりとした曲調。凄いのは私が生まれるよりも前のリリースであるはずなのに、どこか懐かしさを感じるところ。特にイントロは目をつぶって聴くと瞼の裏に熱い何かが込み上げるような、そんな感じがする。コーラスも綺麗である。桑田さんが少し前のインタビューでも語っていた通り、確かにサザンの初期のイメージは「砂まじりの茅ヶ崎」「夏・海・恋」そういうものに固定されていたのだろうが、逆にいえば海を歌うバンドとしてサザン超えする人たちは出てこないのではないだろうか。徹底的に研究され尽くしたテーマだからこそ唯一無二である。それに、たとえば今のサザンに初期のような曲、あるいはこの湘南SEPTEMBERのような曲を作ることは、むしろ難しいのではないだろうか。時代の流れに合わせて変化してきたサザンだからこそ。それぞれの世代で輝く曲になっていると思う。
桑「…湘南SEPTEMBERという曲を聞いていただきました。…ええ、では次にいきましょうかね。それであの…あ、あの座ってくださいね。またちょっと私話しますから。…あのもう皆さんお気づきだと思いますけど、このコーナーね、時間調整のためですから」
拍手と笑い。
桑「時間に余裕なくなったら、もう話すのやめてとっとと曲の方に行きますから。あの、もうね、若いスタッフたちが裏で走ってますから。で、あの、そろそろ話すのやめてくださいって言われたら、もうおとなしく曲の方に移るという、そんな感じになってます。はい。…ええ、では、いっちゃってよろしいんですかね。…はい、あ、じゃあ行きましょうか。紅白と繋ぐってわけでもないのにねぇ笑、もう情けなくて仕方ない、ごめんなさいね皆さん。…それでは、次の曲にいってみましょうか。ちょっと不思議な感じの曲です。よろしくお願いします。」
19. 古戦場で濡れん坊は昭和のHero
原さんのイントロで始まったのは、サザンの名盤「KAMAKURA」より「古戦場で濡れん坊は昭和のHero」。原さん曰く、サザンとして初めて変拍子に挑戦した曲とのこと。「鎌倉」は美しい風景や文化など明るい一面がある一方で、長い歴史の中で一族が滅ぼされるなど負の側面も持っている場所(ところ)。そんな摩訶不思議な世界観がこの曲では描かれているという。ライブでは2019以来となる。背景映像は鶴岡八幡宮・極楽寺(坂)などの情景だがどこか暗く、闇が渦巻くような演出。もちろん私はKAMAKURAがリリースされた時に生まれてはないので、2019年初めてライブでこの曲を生で聴いた。一回聞いただけではわからなかったが、ライブの後もどこか耳に残る、「君の入江に立つよ」のメロディとその後のリフレイン。知らぬ間にこの曲の虜となっていた。そもそも「古戦場」「濡れん坊」「昭和」「Hero」というキーワードがつながるあたりに発想のいい意味の破天荒さが現れている。「涙のカノン 手に負えないようなBabe」ここも好きである。「雨ん中稲村の」。雨“の”中ではない。「雨ん中」なのだ。ソロの「Soulコブラツイスト〜魂の悶絶〜」でもこの「雨ん中」というフレーズが出てきたり、あとは「愛倫情事」という造語も「盆ギリ恋歌」で出てくる。いずれも最近の桑田さんの歌詞である。40年前から時を超えて、ひょっこりと現れるような歌詞がまた魅力でもある。もちろん他の曲でもこういう現象はよく見るが、古戦場は自分の中でお気に入りである。「君の面影遥か」のあとの余韻も良い。
桑「…はい、ということで鎌倉をテーマにした『古戦場で濡れん坊は昭和のHero』という曲を聴いていただきました。みなさんに良くして頂いている『KAMAKURA』というね、アルバムに入っている曲でございまして、もう40年近く前?もうそんくらいになるんですか。我々ももう、鎌倉の地に本当に色々と思い出がありまして、お世話になっているわけですけど。ここで、その『KAMAKURA』というアルバムの中からもう一曲だけ聞いて頂こうと思います。私の、それこそサザンとの出会いの前になるんですけど、高校時代とか、そういった頃を想った曲です。『夕陽に別れを告げて』聞いてください。」
20. 夕陽に別れを告げて〜メリーゴーランド〜
イントロが始まるとオレンジ色の夕陽のようなライトがステージに差し込む。山本拓夫さんのハーモニカが美しく鳴り響く。背景には鎌倉から離れていく電車から外を眺めているような映像が流れる。「遠く離れてHigh school」「鎌倉の陽よ サヨナラ」「恋人の居場所も今は知らない」。前曲で抽象的に混沌とした情景が描かれるのとは対照的に、桑田さんの記憶に残る“あの頃”がくっきりと輪郭を見せるように描かれている。この曲への私の思い入れは、また別記事にて書いてあるので時間があったら読んでみていただきたい。「もう逢えないだろうMy Friends」のリリース当時と現在の捉え方の違いやコロナ禍でまた違う聞こえ方を見せたことなどを取り上げた。曲の最後には、背景に鶴岡八幡宮の銀杏の木が映されていた。桑田さんが通った鎌倉学園通称「かまがく」とはまた関係ないのかもしれないが、原さんの語るところによれば、この銀杏には思い入れがあるとか。桑田さんが病気で倒れたあの10数年前、同じ頃に樹齢1000年を絶つように暴風が吹いて大銀杏も倒れてしまったという。しかし、現在はまた「子銀杏」が芽生えて育ち続けている。まさに桑田さんの音楽活動や人生そのものに寄り添い見守るかのような銀杏。やはり鎌倉には、科学では説明がつかないような不思議な力が働いているのかもしれない。あるいは、実際のところたまたまであったとしても、そう捉えること=意味を見出すことが大切なのかもしれないが。「そんな街とは時が止まったまま浪漫の舞台」なんて表現する歌詞もあったり。