【架空ライブ2025】第3部(M14~M17 ニューアルバムコーナー)

 カウントが始まり、なんとなく怪しい感じのメロディが流れ始める。客席の中には何かを察した人もいたのか少し笑いも起きていた。そしてなんとなく聞き覚えのあるメロディが。スクリーンには少し遅れて曲名が。


14.  アミダばばあの唄

 皆さんご存知「アミダばばあの唄」である。明石家さんまさんに桑田さんが提供した曲である。「桑田くん、曲作ってくれる?」と頼むと「いいよ」と即返したという、いかにもこのお二方らしいエピソードである。ただもちろん私もひょうきん族などの世代ではないし、詳しいことも知らないので調べてみたら確かに昔サザンのライブでこれをやったことはあったらしい。「この曲を持ってくるとは」なんて思っていたが、改めて歌詞を読んでいるとこれまた韻の踏み方など桑田節なのだが、凄いのはさんまさんのイメージが思い浮かぶという点。天才が天才に向けて作った曲。サザンのライブで聴けるとは思っていなかった。背景には、またどっから取って来たんだというようなさんま師匠の映像が流れていた。


アミダくじ アミダくじ ひいて楽しいアミダくじ〜


 YouTubeにも過去の映像が上がっている。改めて皆さんも聞き返してみてほしい。



 「どうもありがとうございます…」静かに桑田さんが頭を下げる。


 再びMCが始まった。


桑「はい、ということでございまして、『アミダばばあの唄』という曲を聞いていただきました。えっと…もう30年以上前になりますか、皆さんご存知のお笑い界の大師匠であります、明石家さんま大先生にですね、おそれ多くも提供させていただいた曲でして…あのさんまさんがね、あの私のソロの曲の中でも色々とね、あのお名前の方借りさせてもらってるんですけど(「メンチカツ・ブルース」のことと思われる)、芸歴がもう50年?、そう、50年ということでございまして…」


大きな拍手が。


桑「ちょっと今日は、このサザンのメンバーで演らせていただきました。色々とある社会ですけど、ああいうお笑いっていうのはいいななんてことをね、最近もよく考えていまして…それであの、我々も刺激を受けているという、そんな形でございますけど、それじゃあここで皆さんお待ちかねの、メンバー紹介に移らせていただこうと思いま〜すが、いいですか?!


大きな歓声と拍手がステージに届く。


メンバー紹介はサポメンから。ちなみに今日のメンバーはこの方々。



桑「はい、ということで、えぇ…メンバー紹介でございました。このメンバーで今回このライブの方をやらせていただいているということで。あの、今年の頭にね、3月くらいに16枚目のアルバムで『THANK YOU SO MUCH』というのを出させていただきまして、おかげさまで、なんと、驚くことに、まさかの、1位をとらせていただいちゃったんですね…!


客席から拍手が。


桑「おまけにあのライブツアーということで全国の方を回らせていただきまして、ほんとに多くのお客さんにね、来ていただきましたから。ねえ、嬉しかったよねぇ関口…」


関口さん「…」無言で微笑みながら頷いている


桑「…あ、ええ、あの嬉しいということでよろしい…?あ、そのようです。あのツアーの時はね、まだリリース前という場所もあったのでほんとに退屈で仕方なかったと思うんですけど…そんなことない?…ああ、ありがとうございます。」


客席から声援と拍手。


桑「それでその、そちらの、あのなんだっけ、あのアルバムの…ああそうだ、THANK YOU SO MUCHの(笑)…方から、少しだけお送りさせていただこうと思います。よろしくお願いします。」


桑田さんが松田さんへ合図を送る。


15.   ジャンヌ・ダルクによろしく

 松田さんのカウントで始まった前奏に合わせて客席から手拍子が鳴り響く。横アリはその規模もあり、ドームよりも一体感が強い。誠さんのギターソロが始まると、場内の照明は真っ赤に。歓声が上がる。2024年リリース「ジャンヌ・ダルクによろしく」。TBSのパリオリンピックテーマソング。背景映像には聖火台のCGが。曲が進むにつれ、両サイドには様々な競技の選手の映像が流れる。この曲は恋のブギウギナイトに次いでリリースされたが、初めてやさしい夜遊びで聞いたときに神曲と確信した。サザンの曲は恋ブギにせよ盆ギリにせよ、最初はん?と思っても後からじわじわとクセになることが多いが、これは一発目で心を掴まれさらにその後も飽きることなく好きな曲だ。個人的には「闇から光ん中へ」の部分。この、曲の1番にはないけど2番で組み込まれる字余りのような感じ(音楽用語に詳しい人がいればなんと表現するか教えてほしい)がいい。

 そしてタイトルも。普通オリンピックのテーマとなれば、「夢・希望・勝利・栄光・未来…」などの言葉を使いそう。しかしこれまたびっくり。「ジャンヌ・ダルク」である。カウントダウンTVのインタビューでは「フランス・女性(昨今の社会的なテーマ)・革命」などのキーワードからジャンヌ・ダルクに繋がったと話していた。何度生まれ変わっても私はこの発想には至らないだろう。


「ここは女神が舞う処」のラストではバスケのダンクシュート。


16.   神様からの贈り物

 前半が落ち着いた雰囲気だったこともあり、ジャンルダルクで客席側のボルテージも上がった。続いて来たのは「神様からの贈り物」。日本のエンタメ、特に桑田さんがリスペクトしている先達への想いが詰まった一曲。大好きな一曲なので、この曲自体が神様から私への贈り物のようだと私は思う。

 背景映像はそんな桑田さんが尊敬している先達の歌手や音楽界の巨匠たちの映像。さらに、昭和だけでなく平成・令和と第一線でエンタメを牽引するスターたちの姿が。2020年のほぼほぼ年越しで演奏された「東京VICTORY」のときは、実は将棋の藤井聡太さんやゴルフの渋野日向子選手の映像が使われていたというのが記憶の片隅にある。私の記憶が正しければそうなはず。そういえば「東京VICTORY」で思い出したことがある。

 2014年。実にもう10年以上前だがその少し前に五輪の東京開催が決定し、それをきっかけに作られたのが「東京VICTORY」であった。そして翌年の2015年には「葡萄」がリリースされている。そこに収録された「平和の鐘が鳴る」はNHK放送90周年のテーマソングである。ここで今回のアルバムを改めて見てみると「神様からの贈り物」が放送100周年のテーマソングである。ここの「東京VICTORYー平和の鐘が鳴る」と「ジャンヌダルクー神様からの贈り物」はまるで対応しているよう10年の時を超えて、同じテーマに対して全く異なる路線の曲を作ってしまうという。しかもそれは全て神曲。本当に“枯れない泉”だと心から尊敬する


「また逢う日まで」

「上をむいて歩こう」


など、歌詞でも登場する偉大なフレーズ。

遠い未来、「四六時中」「素直におしゃべりできない」こんなフレーズが次代のアーティストの曲中にも入ったりするかもしれない。


ニッポンの夜明けは暗い でも先人は凄い


17.   風のタイムマシンにのって

 前曲までの明るさを引き継いで、由比ヶ浜へと我々を誘う。こちらもニューアルバム収録。原坊ボーカルである。「還暦過ぎてもバンド女子」にして「サザン総合プロデューサー」である原由子氏。その歌声は今も健在である。原さんは以前マツコの知らない世界に出演した際に


「私はマツコさんの嫌いな横浜で生まれ、バンドと共に湘南・鎌倉の歌を歌ってご飯を食べさせてもらってます」と。


ソロの「鎌倉On The Beach」は「鎌倉物語」の続編のイメージだとご自身でも説明していたが、それだけ鎌倉や湘南の曲へ思い入れは強いのだろう。今回のライブでも、海辺の道を車で走り抜けるような爽快さに、原さんの明るい声が合わさると情景が広がる。背景にはアニメのオープニングのような映像が。「炎の聖歌隊[Choir]」を思い起こすような、海を横目に走る車の映像が。2番になると夕陽が海をオレンジ色に染める。あとでわかったが、この車、よく見ると原坊が運転するあの車であった。「タイムマシン」というのは、“過去”への哀愁のようなものが歌詞で出ているが、一方でサザンの“未来”に向けたメッセージでもあったら嬉しいなんて思ったりする





桑「原由子ちゃ〜ん!」

原さんが笑顔で頭を下げている。これももうライブではお馴染みの光景になった。


一度場内が暗転した。