【架空ライブ2025】第2部(M4〜M13, MC②)
4. お願いD.J.
第一部の開幕はこれまた懐かしのお願いD.J.。セカンドアルバム「10ナンバーズ・からっと」の1曲目。これは上の世代の方々は特に嬉しい選曲なのではと思った。ここ最近はライブでやっていない。2019のふざけるなツアーの時に“DJ繋がり”と言っていいかは分からないが、「DJ・コービーの伝説」がセトリに入っていた。昔は「お願いD.J.」の方がライブでは主流だったのだとか。背景スクリーンには「SOUTHERN ALL STARS」の文字。全体的に暖色の照明である。「Oh! Mr.D.J. 今宵5時まで離しませんわ」メロディ歌詞ともに頭でリピートする。私は幼い頃から父の車でサザンを聴いてきた世代の一人である。父が口ずさんでいる印象が強い。サザン初期のメロディっぽさはあるが、だが決して古い・昭和という印象は抱かせない。今の曲といっても過言でない。これがサザンの凄いところである。
5. 壮年JUMP
2018年リリースでベスト盤「海のOh, Yeah!!」にも収録。三ツ矢サイダーのCMにも使われた。今回はレア曲が多いが、これもやってくれるとは思わなかった。個人的には大好きな曲なのだが、2018ロッキン、2019ふざけるなで終わってしまうのではとも思っていた。サザンは常に新曲を作り続けている。「闘う戦士たちへ愛を込めて」も含め、“一つ前”の曲という位置付けになっているように思っていた。ダンサーは登場しなかった。
歌詞には桑田さんのアイドルへの尊敬のようなものが表れているのかと最近ようやく読めてきた。「なんてったって最強なのはアイドル」というのは小泉今日子さんの「なんてったってアイドル」から引用したと考えられる(というかそうであろう)。そして明るい曲調だが、どこか悲しい歌詞が魅力でもある。ラスサビの「誰にだって胸トキメキのアイドル アイドル だけど雲の上」という部分。 最初は、桑田さんが学生だった頃にテレビの向こうの世界に対して「雲の上の存在だなぁ」と憧憬を抱いていたことを指しているのかと思った。しかし少し違う見方もできるのではないかと。この曲のリリースと近い時期に、桑田さんと同世代の歌手西城秀樹さんが亡くなった。深く考えすぎなのかもしれないが、そういう去り行く仲間たちへや時の流れにも思いを馳せて作ったのかも、なんて考えもした。「夢とロマンのスーパー・ヒーローは 未来のドアを開け去っていった」という歌詞も、ただ次世代にバトンを渡しただけ、というニュアンスではないのかもしれない。そして、この曲がリリースされてから6年近くだが「闘魂の炎が燃え上がる」の歌詞も今では重たく響く。時の流れは止められないもの。「神様からの贈り物」や「ミツコとカンジ」は壮年JUMPから続いているような印象も抱く。
背景の映像は砂浜と水色の綺麗な海が出ていた。「シュワっとサイダー」の部分では泡の演出も。
「僕はメロメロ〜ときたもんだ!」
6. 走れ!!トーキョー・タウン
場内が暗転し、中央のスクリーンに東京の夜景を走り抜けるような映像が流れ始めると演奏が始まった。これもまたレアな曲がいらっしゃった。「匂艶 THE NIGHT CLUB」のB面。界隈では昔、タグの企画というものがあった。テーマを決めて各々が曲を投稿する。サザンB面で推しの曲を5曲だけ挙げるというタグ企画で、私はこれを入れている。好きになったきっかけは2020年のほぼほぼ年越しである。メロディが癖になる。どう表現すれば良いか、うまい言葉は見つからない。が、ふと気づくと頭に流れていることが多いのだ。このなんと言うべきか、マイナー曲が少しずつ出てきてライブのセトリがどこに向かうのかわからない感じ、読めない感じがゾクゾクする(と自分でセトリを作っておいていうのもどうかと思うが汗)。
(リアルを追求するためにあえて触れるが、)徐々に座る人が増えてきた。無論、自分なりの楽しみ方をするのは自由である。ただ私は、それこそ茅ヶ崎のような万人受けの曲が占めるセトリよりもこういう裏のサザンが見れるライブこそずっと立って楽しみたい。
7. YARLEN SHUFFLE〜子羊達へのレクイエム〜
走れ!!トーキョー・タウンでサザンの深みへと我々を連れ出し、続いて聞こえてきたのはこの曲である。世間的なサザンのイメージは「夏・海・恋のバンド」あるいは「TSUNAMIのバンド」という感じかもしれない。対してサザンの裏の真骨頂は、と訊かれたら私は「鋭く斬り込む風刺」と答える。もちろん他にもサザンの裏の面はあるだろう。しかし、KAMAKURAの頃からすでに社会問題に斬り込んできたのは確かであり、そういう曲は全て、ただ誰かを叩いて終わりというのではなく「人間の奥深くにあるドロドロした何か」を描写していたりする。
何やらあやしい動きをするダンサーが複数人ステージの上の方に見えた。2019のY型もそうだったが、「この曲でダンサー?」ということはライブで結構ある。照明はこの曲が収録されている「さくら」を彷彿とさせる青紫〜ピンクを基調としている。Creepy NutsのR-指定さんはこの曲の魅力を語っていた。「もう嫌になっちゃう政府を見 嗚呼 跳梁跋扈する系譜を見…」の部分。まるで英語のように聞こえてくる。「say for me」「backs care for me」など。私もここは特に好きな歌詞。どうやって作ったのかといつも問いたくなる。風刺・メッセージを届けつつ、韻を踏んだり隠語をうまく擦り込ませたり。これこそ桑田節。
童(わらべ)よ 怨むでない 望まぬ逆境で
もう嫌になっちゃう兵器を見 嗚呼 人情なき演説(スピーチ)を見…
明日無き Every Day
というアレンジが。新曲「史上最恐のモンスター」でも触れられているウクライナを指すであろう歌詞に。こういうアレンジもライブの醍醐味。
(※以前からライブでの歌詞アレンジには興味があり、どうやって元からある歌詞を変えているのか、など疑問に思っていたのもあるので今回は生意気ながら歌詞を考えてみました。桑田さんの歌詞を変えてしまうような真似、ご気分を害された方、ごめんなさい🙇♂️ )
p.s.「明日無き Every Day」は矛盾っぽい歌詞がいいなと思って入れてみたけど、時代遅れのロックンロールバンドの歌詞を引き継ぐ感じで「夢無き Life and Time」とかもいいなんて思ったり。なんでも、とにかく桑田さんっぽい歌詞を考えるのが楽しいのよこればっかりは。
8. メリケン情緒は涙のカラー
暗転した場内に照明が激しくピカピカと光るのと同時に始まった。最初は、生演奏特有の聞こえ方もあってか、My Foreplay Music?なんて思ったが、すぐに「ああこっちか」と。ミスブラでも有名なアルバム「人気者で行こう」収録。年越しライブ「ゴン太君のつどい」では一曲目に演奏されたそう。ギリ生まれていない世代だ。また新鮮な感じがする。このテンポのよさ。あまりライブ映像でも見たことがなかったから、改めて歌詞を見ようなんて思ったらダメであった。サイドのスクリーンの歌詞がどんどん変わっていく。高音域の多い曲のような気がして、よく演ってくれたとしか言いようがない。アルバムをイメージしたのか、赤を基調とした照明。背景映像はなかったが、サイドのスクリーンには激しくキーボードを叩く原坊が何度も映る。最近のライブは、もうこのままDVDにしちゃえばいいと思うくらい、サイドの映像に臨場感があって良い。
9. 夜風のオン・ザ・ビーチ
場内が暗転してから少し間を置いて波の音が聞こえてきた。この打ち寄せる波の音もサザンライブの醍醐味。カウントが始まるまで何の曲かなぁと想像する、この数秒間がなんとも言えない良さがある。曲が始まれば、もうその曲のこと以外考えないし他のメロディが入ってくる隙はなくなってしまう。この数秒間に、海に関連する曲の中でもどんなタイプが来るだろう、流れ的に自然な曲となると、、、など高速で頭を駆け巡る。この数秒である。この数秒間しかない一瞬の楽しみである。
ただ、今回は少し違うようである。正面の映像には「辻堂」の標識が表れた。となると、、なんだろう。
カウントはなく、グラスを傾けたようなピアノの音で始まった。名盤「ステレオ太陽族」から「夜風のオン・ザ・ビーチ」さんのご登場。ほぼほぼ年越し以来。辻堂海岸の砂浜を女性が歩いているという、少し昔の画質っぽく加工されたMVがバックで流れる(あの画質をうまく表現する言葉が見当たらない、イメージは2022のなぎさホテルの背景に流れていたような感じの)。前曲までのスピード感を一旦この穏やかなメロディで落ち着かせたような印象だ。
10. 思い出のスター・ダスト
映し出されたのは、横浜の港と船。この流れでLOVE AFFAIRはありえない。となると何か…
「Nude man」収録。こちらもまた古い曲「思い出のスター・ダスト」。辻堂から場所を移して横浜へ。「目の前にかすむチャペル」「二人立たずむスタジアム」など歌詞に合った映像が流れる。サビのハモリがたまらなく綺麗である。たぶん今のサザンはここまで英語の歌詞が入った曲を書かないだろう。そんな変化なども感じつつ。歌詞の「秋風に舞うよな恋」。季節感は、前曲も夏の終わりのような印象で落ち着いた雰囲気を引き継いでいる。ラストの「だって何もかもいいじゃんBabe That is all I have to say to you, baby」と歌うというより語りかけるというか、程よく崩した感じが好きである。歌い終わりにフェードアウトしていくように、桑田さんが「どうもありがとぅね…」。
このマイナー曲の流れは、2014の「ひつじだよ全員集合」のセトリを思い起こす。となると、次は「涙のアベニュー」あたりが来るか。
11. LONELY WOMAN
秋が終わり季節は冬へ。涙のアベニューではなかったものの、ひつじだよでもやった曲である。「愛と欲望の日々」のカップリングであり「キラスト」にも収録。パステルで描いたような映像が流れている。サビではどこか悲しい冬の空。この曲のタイトルは「LONELY WOMAN」あるが、私の好きなフレーズは「誰もがOnly human, we’re all alone」の方。Lonely womanと韻を踏んでいることはもちろんだが、この「誰しもみんな人だから」という何というか、悩みを受け止めてくれるような、慰めてくれるような歌詞が好きだ。ラスサビでは雪の結晶が降ってくるような演出。後ろ姿が消えていくような映像で締めくくられた。MVがない曲は自分の中でそういう映像を思い浮かべてみるのもまた一つの楽しみ方かもしれない。こういうおっとりしたメロディの曲は色々と思いを馳せるので、気づいたらラスサビでもう終わってしまうということもよくある。ライブではこういった喪失感もまた風物詩。
12. 彼氏になりたくて
キーボードの音が聞こえ始めると同時に、ピンク色の明るい光線が数本客席を照らし始める。「葡萄」収録の「彼氏になりたくて」。これも葡萄ツアーが終わってからはやってくれないと思っていた。いわゆる隠れ名曲というものの一つだ。今回は金原千恵子ストリングスがおらず、そのパートの音は片山さんが補っているのか。前曲の冬が終わり、春を迎えた様子を表すように水彩画の映像が背景に流れる。たぶんわかってくれる人はいると思うのだが、要するになんというか…こういう曲が好きなわけ。良さを言語化できないものほど、逆に尊かったりする。途中の「春を待ちわびたように君は旅に出た」この部分のメロディは特に好き。正直、葡萄の旅で終わってしまっては勿体無いくらいの名曲だと思っていたが、では茅ヶ崎やロッキンに似合うかと言われれば、そうではない。サザンはやはり、屋外と屋内では全く異なるバンドに大化けする。稀にどちらでも本領を発揮する曲はあったりする(少し横道にそれるが、その代表が「MOON LIGHT LOVER」だと茅ヶ崎で思い知った)。フルートの綺麗な音が曲を締めくくる。
13. わすれじのレイド・バック
一度場内が暗転すると、今度はオレンジ色の暖かい照明が。前曲から遠い過去の記憶へ遡るような、どこか懐かしさを覚える演出。「わすれじのレイドバック」は1980年、実に今から45年前にリリースされたシングル。2019年、ふざけるなツアーでもセトリ入りを果たしている。
ここでまたまた横道にそれてしまうが、この曲にはちょっとしたエピソードがある。
2019年、葡萄ツアーや桑田ソロイヤーを経て、すっかりファンの一人となっていた私は色々と自分でツアー以外の曲も聴くようになっていた。「わすれじのレイド・バック」はその時に初めて知った。1回聞いただけで気に入り、YouTubeを色々とあさって昔の映像を探していたところ、コメント欄に「今回のツアーでやってくれて…」という言葉を見つけてしまった。思いがけないネタバレであった。しかもその時は自分の中で全く違うセトリを想定していた。そのぶん、あのコメントを見た際の衝撃は大きかった。結果的にふざけるなツアーのセトリはほぼロッキンのメジャー曲やベスト盤の流れを汲まない、コアな曲のオンパレードだったわけだが、それ以来、ライブに参加する際は少し前からほぼ情報を遮断して挑むようにしている。そうはいえ、自分が参加した後は色々と人に語りたくなってしまう、といったほんとに矛盾した人間になってしまった。
と、そんな記憶が蘇るが、気づけば「ささやくだけでいい よがり声には萎えてく」のサビの部分では体を揺らしながら聴いていた。
ふざけるなツアーでは「これからも一緒に盛り上がろうぜ」と歌詞が変わっていたが、今回はセトリの順的に特に変更はなかった。「Oh, oh, oh, oh, oh…」
大きな拍手が。
場内が暗転。すると桑田さんの声が。
桑「どうもありがとうございま〜す!」
拍手と歓声。桑田さんはギターをさげたままである。
桑「…ええ、ということで、色々とやらせていただいていますけども、ね、えぇ…飽きてません?だいじょうぶですか?どうしようかしらこれ」
桑田さんがメンバーの方を振り向く。毛ガニさんや松田さんが優しく微笑んでいる。私はこのサザンの雰囲気が好きだ。桑田さんのMCを、他のメンバーがまるで客席と同じように視聴者のように聞いていて、時に原さんが「全くこの人ったら…」のような表情をしていたり、関口さんも穏やかそうだ。
桑「静か〜な曲ばかりやらせてもらってるんですけど、すっかりしんみりとしちゃって、皆さんもほとんどお座りになってしまったので…」
客席から大きな笑い。
桑「まああの退屈だなぁ!って思ったら、あの『孤独のグルメ』とかそういうのでも観ててください、と、ええぇ、アーティストとしてはあるまじきことを言ってしまいましたけども。ほんとに静かになっちゃったのでここで少し、私の尊敬する大師匠の、まあ曲というんでしょうか、そういったものを景気付けにやらせていただこうと思うんですが、、よろしい、、?」
大きな拍手。ギターを下ろしてスタッフに渡した桑田さん。
桑「…これウケんのかしらね笑。どうだろ?知らなかったらごめんね。じゃあ弘ちゃんいきましょ!」
さあ、何がくるだろう?他のアーティストの曲かな。それとも…
ー続く。