脳内THANK YOU SO MUCHツアー第2部
それでは第2部。ニューアルバム編に移っていこうと思います!
⚠️引き続きになりますが、ネタバレ注意になります!
これからツアーという方はいますぐお引き返しください!!
MCを挟んで、16枚目となるニューアルバム「THANK YOU SO MUCH」のコーナーが始まります。桑田さん曰く、今回のツアーはまだ世に出ていない曲をやらせてもらう申し訳ないツアーだとのこと。ここでもまた客席から笑いが。私としては、これだけ多くの曲をライブで聴ける幸せはないのですが…ここからは新曲が中心になります。新曲については、ライブの演出に加えて私個人的な考察を含めたいと思っているので、⚠️一曲ごとにかなり長くなりますがご容赦ください🙇♂️
M9. 桜、ひらり
全体としては9曲目。新曲の1曲目を飾ったのは「桜、ひらり」🌸でした。
桑田さんの「ではまず『桜、ひらり』という曲をお聞きください」というお言葉のあとには、観客席から「待ってました」と言わんばかりの歓声が上がっていました。この曲には特別な想いを持たれている方もいるのではないでしょうか。2025年元日に公開されたMVでは石川を走り、ツアーの初日である「石川産業展示館」に到着する情景が描かれていました。
能登半島地震から1年。桑田さんは東日本大震災の頃から被災地への応援をずっとしてこられた方です。サザンでもソロでも日本全体を勇気づける曲を世に送り出してきました。2020年はオリンピック民放共同企画のテーマソングとして作られた「SMILE~晴れ渡る空のように~」がコロナ禍の日本を照らしました。2022年には同世代のミュージシャンと「時代遅れのRock’n’Roll Band」を発表し、戦禍に苦しむ遠くの地へエールを送っています。私はこのような曲を聴くたびに桑田さんの感受性や想像力の豊かさに心底感動してしまいます。
震災や戦争とはまた異なりますが、例えば2018年発表の現代社会の矛盾・ストレスと闘う人々への応援歌「闘う戦士たちへ愛を込めて」や少し昔ですがソロの「飛べないモスキート(MOSQUITO)」など、自分とは全く異なる境遇にいる人々の心理や背景をこれでもかというほど表現する歌詞やメロディはどこからくるのだろうといつも思います。背景映像は綺麗な桜の散る映像です。曲のラスサビでは実際にステージ上に桜の紙吹雪が舞いました。「突然 あれからしばらくは 生まれたこの場所が 嫌いになったよ」など明るいメロディなのにどこか歌詞は悲しい、「I AM YOUR SINGER」を思い起こします。この曲はライブツアーのティザー映像に使われていました。砂浜に「THANK YOU SO MUCH」の文字、そして「誰か 未来へ言葉 うまく伝えてほしい」という歌詞からサザンの活動が一区切りを迎えてしまうのかと思い、なんとも言えない気持ちになったのを覚えています。サザンの活動はこれからどこへ向かうのでしょうか。
M10. 神様からの贈り物
10曲目は「神様からの贈り物」。私は現段階ではこの曲をアルバムの中で一番推しています。上手い表現と言えるかはわかりませんが、「桑田佳祐のやさしい夜遊び」で初めて聴いたときはこの明るい感のメロディが直感的にあいみょんさんを想起させ、桑田さんが本当にお若い感性をお持ちなのだと思いました。
あまり書きたくないことではありますが、桑田佳祐やサザンの曲は「パクリが多い」であったり「マンネリだ」という一部の意見を目にすることがあります。桑田さんご自身も2018年の「壮年JUMP」で「なんてったって最強なのはアイドル」という歌詞を、笑いながら「パクってしまったんですけど」とインタビューで語っています。しかし私が思うに、桑田さんは昔から日本のポップミュージックやエンタメに心から憧れていたのではないでしょうか。YouTubeで昔のベストテンの映像を見たことがあります。司会の黒柳徹子さんからの問いかけに「(サザンが目指すのはアーティストではなく)目立ちたがり屋の芸人です!」と答え、デビュー曲「勝手にシンドバッド」を披露したサザン。勝手にシンドバットからはとても想像できませんが、その当時から桑田さんは歌謡曲をはじめ当時の日本のポッポスに影響を受けていたのだろうと、それから数十年後のひとり紅白やAAAのセトリをみて感じました。特に「神様からの贈り物」は「JAZZと歌謡曲とシャンソンの夕べ~R60」が伏線となっていたのではないかと思いました。間奏部分の背景映像で昭和の歌番組を思い起こさせる「ヒット・ザ・ビッグタイム」が流れ、尾崎紀世彦さんや弘田三枝子さん、坂本九さんなどのスターに加え、服部良一さんなどの当時の音楽界を盛り上げた作詞家・作曲家の方々の写真も流れていました。自分の知識不足もあり、全員分把握しきれなかったのが後悔です。しかし、「ああ、桑田さんの血となり肉となってきたのは“あの方々”だったんだな」と思いを馳せられただけで大満足。歌詞の「テレビとおんなじだ!!」というのはこちらの台詞です、桑田さん。両親が学生の頃から日本の音楽界を席巻してきたサザン。小学生の頃は親とテレビで見ていた私が今こうしてライブに参加している、目の奥に何かじーんとしたものを感じました。
「あの歌と出会い あなたがいれば 何にも怖くない」この世の真理だと思います。
曲が終わると桑田さんのMCが始まりました。「いま聴いていただいたのが『神様からの贈り物』という曲でございまして、えぇ、つまり『昔は良かったなぁ』という曲でして」ここで客席からは共感の笑いが。「まぁ、そんなことを謳ってしまったらミュージシャンは終わりですけれども…ええ謳ってしまったんですけれども」と。
M11. 史上最恐のモンスター
11曲目です。夜遊びで流れた一番新しい曲です。実は私はこの曲をライブで初めて聴きました。夜遊びでは2月1日にすでに発表されていましたが、あえて意図的に試聴せずに参戦しました。その理由としては、「ライブで初めて聴く」という体験をしたかったからです。2019年のふざけるなツアーでは東京ドームにて「愛はスローにちょっとずつ」を初めて聴きました。親の世代と違い、もうサザンには代表曲とも言えるものが何曲もあります。そんな中で新曲を“生で”聴くという貴重な経験をしてみたかったというのがありました。実際、少し不気味な足音のようなイントロで始まった曲。「やれやれPeople ほらほらNature」「お止めになって雷神さん(Rising Sunっぽい歌い方)」など、桑田節が詰まった曲。「また嘆きのニュースがゴールデンタイム」という歌詞で、この曲の路線が少し理解った(わかった)ような気がしました。想起したのはソロの「漫画ドリーム」。「悲しみのニュースがなぜジョークになっちまうんだろう?」桑田さんなりの風刺の仕方。
サビの「ギリギリボーダー」というのは地球が限界を迎える境界のようなものでしょうか、一方で最近ニュースにもなった「終末時計」を思い出しました。終末時計は世界の情勢などを踏まえて人類最期の日までの時間を象徴的に表すとされていて、過去最短になったという記事を見ました。万葉アルバム収録の「ブリブリボーダーライン」とは全く違う雰囲気。同じ詞(ことば)でも全然ニュアンスが変わるんだなぁと思いました。「あゝウクライナ(Ukraine)の春は待ちぼうけ」というのはこれまたタイムリーな話題でかつ直球の歌詞。途中、背景映像では大きなゲンゴロウが出てきたのが印象的ですが、サビではサーモグラフィーで地球を表現したような映像が。真っ赤に染まる地球は地球温暖化を指しているのか、あるいはただ科学的な意味だけでなく地球がもう我慢できないことを示しているのか。「灼けそうなアイランド」は「爆笑アイランド」や「都会のオアシスの外は灼熱の島」という歌詞が出てくるソロの「どん底のブルース」を想起させます。サザンは「夏・海・恋」という世間的なイメージがありますが、世の中のどうしようもない問題へ斬り込む風刺もまた唯一無二のバンドだと思っています。
M12. 風のタイムマシンにのって
12曲目は原坊ボーカルの「風のタイムマシンにのって」。前曲の重たい雰囲気のトンネルから抜け出して海を横目に走り抜けるかのような爽快感。原坊の曲は声が全く変わらず若いままのため、「初めて聴いたらどの世代にリリースされたかわからない問題」というのが自分の中にあります(?)。「私はピアノ」から永遠に若い声のまま。「還暦過ぎてもバンド女子」と原さんはご自身で言っていますが、31年ぶりのオリジナルアルバム「婦人の肖像 Portrait of a Lady」ではそんな時が経っているとは思えませんでした。サビの「夢の開演Now It’s Time」は桑田ソロの「炎の聖歌隊Choir」にも通じる感じ。「春は往来闊歩して」などどうやったらそんな歌詞が出てくるのか、あのVocabularyはどこからくるのか。難しい単語のはずなのに、テンポの良い曲にもピタッとハマる感覚。背景映像のまた綺麗なこと。タイムマシーンで昔の情景に向かうようでした。前曲が暗い未来へ恐れを抱いているのと対照的に、サザンが半世紀近く前から見てきた美しい過去を振り返るかのよう。
曲の最後に桑田さんの「原由子~」という声。これもまたライブの風物詩。
スタッフが忙しく動いているのが見えました。そして次のコーナーへ。
こんな長ったらしい文章ですが、言葉にしにくい考えも少しでも伝わってくれたら嬉しいです。
次はアコースティックコーナーを中心に書いていきます!
読んでいただいた皆さん、THANK YOU SO MUCH!!!