Believe 37/Side-S
「ん、待ってもうちょっと、」
雅紀が両手を俺の首に伸ばして甘えてきた。
ニヤけそうになるのを必死に堪(こら)えながら
「なんだよ、どした?」
グッとせり上がって
鼻の頭にキスを落とすと
「だって・・・、
しょぉちゃんがおれを感じて『出した』なら、それっておれのモンでしょ?外に出しちゃうのもったいなくって。くふふっ!
それに、もうちょっとしょぉちゃんとつながってたいんだ。
・・・だって今だけは、
しょぉちゃんはおれだけのモノでしょ?」
そう言って目を伏せた。
憂いを含んだその表情(カオ)が、明るく言う声のトーンと対照的で
胸をギュッと締め付ける。
「バカだな・・・、
俺は、
俺のココロは、
いつだって、・・・これからもずっと、雅紀のモンだって。」
「くふふ、それホント?おれ信じちゃうよ?」
「信じてくんなきゃ困ンだろ、
可愛くて、オトコっぽくて、妖艶で、エロくて、一生懸命で、頑張り屋さんで、おっちょこちょいで、ちょっとバカで、
・・・こんなに一緒にいても気になって気になって飽き足んねェヤツ、他にいねーって。」
「くふふふっ、何ソレちょっと後半軽くディスってね?」
「ぶはっ!それがカワイーんだって!」
コロコロと笑うその笑顔にホッとしながら、
目尻に光った粒を見逃さなかった。
ペロリとその塩(しょ)っぱい粒を舐め取ってキスをして
「想いとは裏腹な現実(リアル)に巻き込んでゴメン・・・。
この先も、
オトナの事情に抗えない状況が待ってるかもしれない。
でも、
それでも、
俺の想いは雅紀だけのモノだから。
・・・勝手な事言ってるのは理解(わか)ってる。でも、
・・・それでも、
俺を、
俺の想いを、信じてくれるか・・・?」
こんな理不尽を最愛の人に背負わせるなんて
こんな自身の勝手で最愛の人を縛るなんて
何でも常識の上で行動し真っ当を生きてきた俺の精神(ポリシー)に反するけど。
それでも。
それでも、雅紀だけは。
「しょぉちゃん・・・」
「愛してるんだ。
どうしても、・・・どうしても雅紀だけは譲れないんだ。
どんだけ勝手を言ってるか理解(わか)ってる、でも雅紀が俺を見限るまでは、俺を嫌いになるまでは一緒にいて欲しい。
もし万が一嫌いになった後も、俺が雅紀を想う事は赦して欲しいんだ。」
「待って待って、しょぉちゃん!
大丈夫!だぁいじょぉぶだって!ね?」
つい夢中になって想いを吐き出していた俺の頬を雅紀の両手が包み込んで
焦点の合った先で
雅紀がマリアのような柔らかく優しい顔で笑った。
「じゅうぶん分かったから。
しょぉちゃんの想いは、伝わったから。
・・・ありがとう、おれも、ずっとずっとしょぉちゃんを想ってていいってことでしょ?」
「雅紀・・・」
何とも言えない想いが湧き上がって、
その想いはダイレクトにまた、
まだ雅紀のナカに留まったオレに伝わった。
「ん、」
その脈動はオレを包み込んだ雅紀に直接伝わり
「・・・もぅ、今超感動的なシーンなのにぃ!しょぉちゃんの えっち!」
くふふと照れを誤魔化す雅紀に、
また想いを乗せて律動を重ね
その可愛らしさを
俺しか知らない色に染め上げた。
→38