Believe 6/Side-S
「親しい友人、・・・それでは誤解を生みませんか?」
嫌な、予感がする。
「嘘じゃないからいいのよ、」
副社長の顔色が少し変わった気がした。
「あえて誤解を誘うと───?」
「さすが飲み込みが早いわね、好きよ、頭の良い子は」
雅紀の顔が浮かぶ。
雅紀の、悲しげに笑う顔が。
「しかし・・・、今この時期に俺までこんな・・・、」
左手の時計に右手で触りながら呟くと、
「こんな時期だからよ、」
副社長の声が凛と、空気を割った。
副社長の顔を見ると、
ハァ、と溜息をつきながら両手で顔を覆った。
「会社(うち)のこともあるし───、
局側(あっち)からも強く言われててね・・・、」
「事務所(うち)の事って・・・?」
「色々!」
副社長の声が俺の言葉を遮る。
「色々重なったのよ。あんたタイミングが悪すぎたわ・・・、」
何だよそれ・・・!
事務所の事って何だよ、
今までみたいにスルーじゃダメなのかよ、
チラチラと雅紀の顔が浮かんで胸が痛み、数分前の自分と矛盾した想いが溢れる。
「・・・その・・・、局の深層部の人ってのがね・・・」
ハァ、という深い溜息に、何か大きな力が働いているのだと肌が察した。
「何か───、言われたんですか?
事務所(うち)に、何か影響が───?」
「さすがのウチもねー。
・・・正直参ったわ。
言いたくないけど去年から増田も伊野尾も斗真も亀も大倉も!
まったく、最近みんなユルイのよ。」
「それが、何か関係あるんですか・・・?」
だとしたら、事務所のイメージダウンを食い止める、って事か・・・?
「分かるでしょう?櫻井、
貴方は今まで努力してクリーンなイメージを死守してきた。
学歴も、生い立ちも、アイドルとしてその存在を偶像化するのにもってこいの素質を持ち合わせているの。」
今まで、副社長には具体的に言われて来なかった言葉がこれでもかってくらいに並べられる。
「この写真が届いた時、局(あっち)からも連絡が来たわ。あっちはあっちで、同じようにこのアナウンサーに賭けてるみたいね。
詳しくは言って来なかったけど、きっと内部調査で櫻井の言う不倫関係の片鱗が浮き出たんじゃないかしら。」
高い金属音を鳴らして副社長がジッポから煙草に火をつけた。
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