Super Moon | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

ある時は嵐情報。またある時は櫻葉妄想小説。自由に生きております。
腐寄りにつきノーマルアラシックさまは速やかにご退出くださいませ。

「お疲れ様でした、」



局を後にする俺の頭上に、
雨こそ落ちてこないがどんよりと重たそうな雲が広がる。



『雲の上からなら見れたのにね』



数年前のスーパームーンの夜も、確か曇り空で
いつか機上からの満月を撮って雅紀に送った写真を
俺の膝に頭を乗せて眺めていたのを思い出す。






「櫻井さん今日もお疲れ様でした、」

「うん、お疲れ様。明日は夕方4時ね?」




マネージャーの車を降りて
また空を仰ぐ。



来年は1年間、いわゆるスーパームーンは観測できないらしい。



そろそろ白く見えるようになりそうな息をフゥッて吐いて、
明かりの灯る部屋の窓を見上げた。


帰ろう、雅紀の待つ部屋へ。







チュ・・・、


ソファーの上、
そっとこめかみに唇を落とすと柔らかく雅紀が微笑んだ。



「ん・・・、お帰り、」

「ただいま。」

「ゴメン、ウトウトしちゃった、」



立ち上がって手を広げた雅紀を



「寝ててもいいのに。でもありがとう、待っててくれて。」



そっと抱き締める。



「スーパームーン、見れなかったね。
来年も見える日あるのかなぁ?」

「来年は『シャイ ムーン イヤー』なんだって。」


「くふふ、何それ?」



体を離した雅紀が、
覗き込みながら笑う。



「スーパームーンが観られない年回りなんだってさ。」



へぇそうなんだ?って言いながら腕をすり抜けて、
『飲むでしょ?』ってキッチンへ雅紀が向かう。



「残念?」



追いかけるようにカウンターへ歩きながら声を掛けると



「ん〜、まぁね、一緒に見れたら嬉しかったよね、」



『はい、』ってカウンターを廻り込んだ雅紀が
ビールの入ったグラスを渡しながら首を傾けた。




雅紀のこういうところにいつも心が和んで癒されると、
頬が緩む。


グラスごと雅紀の手を掴んで引き寄せて
後頭部を捕まえて唇を塞いだ。



「ゎ、・・・んっ、」



長いくちづけの後、
ふふって笑いながら目を伏せた前髪にまた

唇を寄せた。



「来年は1年間観られないけどさ、」



黒目がちな二つの瞳が至近距離で俺を見つめる。



「2018年の元旦にまたスーパームーンになるんだって。」

「ぅーわ、マジで?元旦に?
そしたら一緒に見れるね、しょぉちゃん!!」



途端にクルクルの瞳(め)を輝かせ
少年のような笑顔で『やったぁ、』って飛びつかれて



やっぱ観たかったんだよな、って、頭をポンポンってした。



俺にとっては

泣いたり笑ったり、コロコロと表情を豊かに変える雅紀が
俺の月みたいなもんなんだけどな。


掌の中でサラリと踊るカフェオレ色の髪に三度(みたび)、唇を押し付けて



ずっとずっと、軌道を変えずに俺の周りから離れずにいてくれて

2年後も10年後もその先も

引力の如く惹き合って共に歩めたら。



そう願いつつ、くふふと笑う唇を

また


塞いだ。




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