君がいるから *5S | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

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君がいるから *1S *4A




雅紀が泣きそうになってるのには気付いてた。



言葉は交わさずとも、

同じ風景を眺めて

同じ空気を纏って



それだけで分かり合えてる、っていう不思議な感覚───




"解ってるよ"




そう伝えたくて触れた指先。



ピクリとした雅紀の指に、スルリと自分の指を絡めてしっかりと繋ぐ。




互いの体温が行き交い、

沈みゆく陽に雅紀の瞳(め)から光の粒が零れ落ちるのを視界の端に捉えた。



優しい光を放ち小さくなってゆく太陽と

それを反射するキレイな泪・・・




「時間が・・・、止まればいいのにね、

えへ、」




雅紀が照れ隠しのように呟いて笑った。




「そうだな、」




ギュッと繋いだ手に力を込めて

消えゆく太陽を見送った。




「は〜、沈んじゃったね。」




肩から掛けたタオルを靡かせて雅紀が立ち上がって、

潮が引いて遠のいた波打ち際へと歩く。




後を追うように近付くと

雅紀が拾い上げた枝で



『LOVE』



って足元の砂に書いた。




「ベタだろ、」




俺が笑うと



『大スキ』



って書き直して




「だって・・・、

他にコトバが見つからない。」




って、


俺をまっすぐに見て、


また一筋涙を光らせて


首を傾げて笑った。




「───、」




波が、

雅紀の書いた文字を攫って

少しずつ消していく。




「マサキ・・・、」




腕の中に抱き寄せて、

足元へ寄せては返す波に

溢れる想いを託すように




頬に伝う涙を唇に受けて

頬を辿って瞼にもキスを落として


おでこに唇を押し付けて。




「・・・ホントだな。


他に、コトバが見つからない。


・・・愛してるよ、


マサキ・・・」