「どうぞ?」
促されて、玄関へ入る。
「ぉじゃましまぁす・・・」
急に翔ちゃんとの間の空気の流れが止まったみたいに
外の世界の音も遮断された中
至近距離で靴を脱ぐ。
翔ちゃんの後を追うように見覚えのあるリビングへ。
前に来た時とカレンダーが変わっていて
ソファーには相変わらず洗濯物が積み重なっていて
もう冬なのに端に追いやられたまま出ている扇風機。
「適当に座って?
・・・っつっても座れないか、
ちょっと待ってな、」
翔ちゃんがソファーの上から洗濯物を抱えて
「ちょ、ココ座ってて?」
どこかへと運んでいく。
なんとなく落ち着かなくて、
ソファーの端にちょこんと浅く腰掛けた。
目の前のローテーブルには積み上がった本とノートパソコン。
片付けようかな、でもこう見えて翔ちゃんの分かるような順番とかかもしれないし、
やたらに触らないほうがいいかもしれない。
そんな事を思っていたら
戻ってきた翔ちゃんが目の前から本の山をパソコンと一緒に
一気にテレビの横へ運んだ。
「何もないけど、」
そう言いながら、
台所から出てきた翔ちゃんが照れ笑いするようにビールを手渡してくれた。
僕が来てなかったらどこで飲んだんだろうな
絶対片付けなんてしないだろうし
想像したらおかしくてちょっと緊張がほぐれた。
「何か、緊張してね?」
翔ちゃんに言い当てられてキョドりそうになる。
「えっ?!・・・くふふっ、そぉ?!
そんなコトないよー!
なぁんか久々だなぁって思ってただけ!」
「そ?」
「そうだよ!」
あぁ、びっくりした・・・
緊張なんて、今更おかしいよね
やっぱ、帰ればよかったかな。
なんか、どうしていいか分っかんない・・・
・・・
・・・
・・・
なんていうのも最初だけで
ビールが進めばいつもみたいにはしゃいで
DVDのオートチェンジャーのタイトルを当てるゲームをしたりしてるうち
嵐の昔のDVDを見たくなって
家でいつもやってるみたいに部屋の電気を間接照明に切り替える。
「よしオッケー、しょぉちゃん!」
ソファーに寄りかかってる翔ちゃんの横に座ると、
「やっぱまずはこれでしょぉ~、」
って再生ボタンを押した。
画面に流れる国立の映像。
「まずは、つっていきなりディスク2かよ」
「くふふっ!まぁいいじゃん、
始まる瞬間もたまんないけど、この中盤から見るのもオツなもんですよサクライさん!」
自分たちのコンサートを観るなんて
ほかの人にしてみたらヘンって思うかもしれないけど
僕たちは
仲間の楽しそうな顔を見たり
ファンのみんなの嬉しそうな顔を見たりしながら
ここにこうしていられるのは
仲間とファンとスタッフ、みんなに支えられてるからなんだって
初心に返るとか、
そういうんじゃなくて
なんていうか
みんなの愛情を感じて胸の中が暖かくなるから
だから観たくなるんだって、
よく飲むと話題になるんだ・・・
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