Moon#9
・・・と、バタン!と大きな音がして愛しい声に名前を呼ばれた。
「・・・しょぉちゃんっ!」
振り向くが早いか、
次の瞬間、この胸の中に愛しいヒトが飛び込んできた・・・
「ごめん・・・ やっぱ、起こしちゃったか。」
何も言わずに雅紀が唇を重ねてくる。
甘い誘惑に、
もっと・・・、
そう思ったが薄着のままの華奢な肩が理性を動かす。
「雅紀、風邪ひくから。」
雅紀の肩を抱いて冷たい空気の中足早に玄関へと戻る。
映画の撮影を控えた大事な身体だ。
雅紀のためにも、俺のためにも、
風邪なんて引かれたら困る。
玄関に入ると
ドアが閉まりきらないうちに、雅紀が唇を求めてきた。
ちょっと待てって・・・
待てよ、雅紀・・・
いつになく積極的な雅紀に戸惑う。
・・・別に、根に持ってるわけじゃねーんだけどさ、
確認ね。確認。
「雅紀、お前・・・
修行中じゃなかったの?」
「もぉ、やめた・・・
おれも、しょぉちゃんのコト、ちょきんするっ!」
「今さらかよ・・・」
なんだよそれ・・・
一瞬呆れたが、雅紀らしさに胸がくすぐったくなって温かな、幸せな気持ちが広がる。
と、同時に、
理性の箍(タガ)が・・・
外れた・・・
「・・・じゃ、
・・・俺も遠慮しなくていいな?」
雅紀の肩を掴むと
玄関のドアに押し付けて
深く、深く、舌 を 絡 め 取 る。
「・・・っん、
・・・ぅんっ・・・
ふっ・・・」
右手を雅紀の後頭部に挿し込み、
引き寄せて呼吸を奪う。
昨日の分も、
今日の分も、
明日の分も、
その先の分も全部、全部って、
この熱を伝えようと夢中になって雅紀の舌 を 貪 る。
ここんとこずっと一緒だったから・・・
離れるのはキツイけど・・・
俺もソチで頑張るから・・・
お前を想いながらやり遂げてみせるから・・・
お前も映画、頑張れ・・・
初座長、務め上げてみせろよ・・・?
ちゃんと栄養摂って・・・
ちゃんと寝て・・・
頑張れよ・・・
キツイ時は俺に吐き出せばいい・・・
どんなお前も受け止めてやるよ・・・
頑張れ、雅紀・・・
俺がいなくても・・・
ちゃんと頑張れよ・・・
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