「あいつ、サクライさんに逢いたいって思ってるくせに迷惑だろうからとか言ってちっとも動こうとしないし、かと言ってもう3週間も経つのに毎日ずっと元気ないし。
・・・それでこんな風に待ち伏せなんてしちゃったんですけど、やっぱりご迷惑でしたよね、ごめんなさい。
オレが勝手にしてることで、あいつはこの事知りませんし関係ありませんから。・・・あいつの事、許してやってもらえませんか。」
「許すも何も。私も気にはなっていたんです。ただ、あれから急な仕事で海外に飛んだり仕事が立て込んで身動き取れなくて。実際、明日が3週間振りのオフなんですよ、
・・・なんて言い訳ですね、」
そう言ってマグの中のほろ苦さを一口流し込む。
「そう・・・だったんですか・・・でも良かった、あいつ嫌われたんじゃなかったんですね?」
「嫌う?! 何で、嫌う理由がない。」
「いや・・・あいつは自分が言われて傷付いたのと同じ事をサクライさんに言ってしまったって。
サクライさんがフィズにも来ないのが嫌われたいい証拠だ、って・・・もし次会えたら謝ってスッキリして別れるくらいの勢いでしたよ?」
「そうか・・・悪いことをしたね・・・」
カザマさんはコトンとマグをテーブルに置くと、姿勢をスッと正した。
「サクライさん、こんな事オレからお願いするのもアレなんですけど・・・、アイバくんに逢ってやってもらえませんか?」
「え・・・」
「なんつうか、見てられないんですよね、もう何十年もつるんでるんですけど、あいつのあんな覇気のない姿見るの初めてで・・・。」
「そうですか・・・分かりました。明日にでも、実家の方に行ってみます。先ほども言いましたけど、私も気になっていたので。」
こちらも姿勢を正して正面から答えると、カザマさんは『良かった』と柔らかく笑って、マグを傾けた。
「・・・いいですね、お二人の関係・・・凄く、羨ましいです。」
「いや、そんなことないっすよ、」
いや・・・、本当に羨ましい。
心から、そう思った。
自分にも親友と呼べる友人はいるが、果たして自分のためにここまで動いてくれるだろうか。
自分は友達のためにここまでしてあげられるのだろうか。
どちらにしても、はっきりYesと思えない自分の情けなさに少し残念な気持ちを抱えながら、カザマさんと別れ家路に着いた。