チュ・・・
おでこから唇を離すと、雅紀が前髪の間からクルンとした瞳(め)で俺を見つめてくる。
右手の指でまつ毛にかかった前髪を耳の方へと流してやりながら、雅紀が理解できるようにゆっくりと言葉を探しながら紡いでいく。
「俺はさ、一緒にいたいと思うパートナーを見つけて、その人と一緒にいること自体が幸せのベースになるんだと思ってる。
俺にとって雅紀、雅紀がそのパートナーだと思っているよ。
それとも雅紀は・・・雅紀の子供を産んであげられない俺はパートナーにしてはもらえない?
俺は・・・雅紀に子供を持ってもらうために身を引いた方がいい?」
雅紀の両肩に手を当てて、俯きがちな顔を覗き込んで目を合わせる。
「そんなこと・・・!おれ、子供をもてなくたって、それよりもしょぉちゃんと一緒にいたいよ!
身を引くなんて・・・ゆうなよ・・・」
「うん。ありがとう。俺も同じ気持ちだよ。ゴメンな。俺もそこは触れないようにって今までうやむやにしてたからさ・・・。
もうこれからはそこを心配して悩むことも、引け目を感じることもないから。雅紀は雅紀のままで十分、俺が好きな雅紀なんだからさ。もっと自信持てって。」
「ん・・・しょぉちゃん、ありがと・・・」
引き合うようにそっと抱きしめ合うと、2人の気持ちが溶け出してゆるりゆるりと絡まって温かな空気が2人を包み込むのを感じる。
雅紀からそっと身体を離して目を合わせ、肩を抱いてソファーへ移動し隣り合って座る。
コテン、とこの肩に凭れた雅紀の頭に、首を傾げて左のこめかみを当てると、ゆっくり、ゆっくり、ひとつずつ雅紀が打ち明けた本心を拾い上げていく。
「ゴメンな・・・、俺、夜会の雅紀見てスゲー楽しそうだなって思ってさ。
俺といる時も楽しそうだけど、なんつうか、また違ったおれの知らない雅紀の気がして・・・
俺、雅紀のこと全部分かってるつもりになってたからさ。ちょっとショックだったっつーか、妬けたっつーか。」
雅紀の右手を上から握っていた俺の右手の指を、雅紀の左手がいじる。
「それに・・・お前・・・酔うとハンパなく可愛いって自覚ねェだろ?そのくせにクッション抱いて見せたりキス顔見せたり・・・
銭湯だってだぞ!行くのはいいけどあそこまで撮らせんなや!」
本気の抗議を半分茶化して、左半身を雅紀の右半身にボンと当てる。
「・・・ごめん・・・でもおれだって・・・しょぉちゃんの番組だしと思って頑張ったんだよ・・・
他の番組だったら、しなかったよ・・・」
「そっか。
そうだよな。
ありがとな。
・・・ハハッ、みっともねェな、ヤキモチなんてさ。・・・認めたくなくてさ。俺のちっぽけな見栄っつーか。小せェって雅紀に思われたくなくてさ・・・
結果、逆にそんなに悩ませちゃってたんだな、ゴメンな。」
首を小さくフルフルとして、俺の左手を雅紀の両手が包み込む。
→#13