前回のお話 【#1】
翔ちゃんに逢える、そう思うだけで自然と足取りも軽く、早足になる。
新しいアルバムの曲中の口笛を吹きながら目黒川沿いを歩き、待ち合わせの店の前へと歩いて行く。
「ぅわぁ・・・メンノンみたい・・・」
約束の場所に、大好きなヒトの姿を見つけて頬がサッと高揚する。
とくん、とくん、と胸が高鳴るのを自分の耳の中で感じる。
雑誌から抜け出したままみたいな翔ちゃんがおれの存在に気付いてわずかに首を傾げ、口角を上げる。
「しょぉちゃん! ゴメンねお待たせっ!」
「お疲れ、雅紀。順調に行ったんだね。」
「うん!いい表情だって褒められちゃった!くふふっ!」
「ははは 確かに!あなた最近いい表情してるわ。よかったね、褒めてもらって。」
「うん、しょぉちゃんのおかげ!」
「えっ、ナニなんでよ?」
「えっ?ふふふ。だって細居さんそーゆってたよ?プライベートが充実してるからだって。」
「ははは。そ?」
翔ちゃんが嬉しそうに笑うから、おれの気持ちもフワフワってしてもっともっと嬉しくなる。
「いこ、いこ!しょぉちゃん!おれ前に一回だけ来たんだけどゼッタイしょぉちゃんも好きな感じの店なんだって!!」
店内をキョロキョロしながら素直に後をついてくる翔ちゃんが可愛くて、こっそりその表情を盗み見て『ふふっ』ってなる。
ショッピングデートの時はおれが主導権を握れるから張り切っちゃうんだよね。
→【#3】