これまでのお話
帰りたい、帰りたい、もうここにはいたくない。
そう思って離れようとしたのに翔ちゃんに腕を掴まれてしまった。
「なんで泣いたの?なんで、キスしたの?なんでごめんなの?」
えっなんで?なんで翔ちゃんがそんなこと聞くの?
色々聞きたいのこっちの方なんだけど・・・
「えっ・・・だっ・・・て・・・しょぉちゃん、本気じゃないでしょ?
おれ・・・しょぉちゃんのこと、ほ、本気で好きになっちゃって・・・だから・・・
割り切ればいいかなって思ったけど、やっぱりそんなのできないし!
期待しちゃうし!
おれだけのしょぉちゃんでいて欲しいって思っちゃうし!
でもやっぱ好きだから!
最後にキスしてもう終わりにしようってこんな気持ち・・・!」
・・・翔ちゃんに、抱きしめられた。
・・・強く、強く。
「バカだな・・・本気じゃねぇのにあんなことすっかよ・・・お前こそ、オンナの方が好きなんじゃなかったのかよ・・・」
「しょ・・・んぅ」
唇を塞がれて、言葉が呑まれていく・・・
熱くて、厚みのある翔ちゃんの舌が押し入って来て、強くおれを浚(さら)っていく。
後頭部に翔ちゃんの右手を差し込まれて、引き寄せられるから息が苦しいのに逃げられない。
泣くつもりなんてなかったのに閉じたまぶたの内側から熱い水分が脈を打つように流れ頬を伝い落ちる。
背中に回された翔ちゃんの左腕の力に、胸がぎゅうぅってなって、切なくて嬉しくて、甘い痺れが渦まいていく。
「・・・っぁ、ふっ・・・」
「・・・っ、ハァッ・・・」
互いの熱い舌を離れ、見つめ合う。
湿りを多く含んだ翔ちゃんの瞳が、優しく瞬きをする。
「ぁ・・・しょぉちゃん、おれ・・・
しょぉちゃんのこと、好きなの。
誰よりも、いちばん、大好きなの・・・」
「・・・うん・・・俺も・・・
俺も、雅紀の事・・・好きだよ、誰よりも。」
→【13】