Trick or ... #5 Side-S | 山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

山風に吹かれた櫻葉へのつぶやき。

ある時は嵐情報。またある時は櫻葉妄想小説。自由に生きております。
腐寄りにつきノーマルアラシックさまは速やかにご退出くださいませ。

これまでのお話




都内を流れるように走る、雅紀のクルマ。



俺は、計算通りに雅紀に送ってもらうことになって嬉しくてついニヤけそうになるのを隠すように、唇を内側へ丸め込んで窓へと顔を向ける。


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流れる街を眺めながら、あの日、ハワイでニノと交わした会話を思い出す。





「翔さん、あの人はバカで鈍感だからハッキリ好きなら好きって言葉で言った方がいいんですって。」

「そうかなぁ、いや、でも俺そういうの苦手だし。」



「知りませんよ。じゃあ翔さんが思うように態度でアピールし続けたらどうです?いくらあの人でもそのうち気付くんじゃないですか?」





そう・・・俺は「好き」とか「愛してる」とか、なんだか上っ面の言葉に聞こえてあんまり好きじゃない。



バラエティーやドラマで言うことはあっても、プライベートでは言った記憶がないくらい。



そのせいで言葉が欲しかったとフラれたこともあったっけ。



報道の仕事をしているせいもあって、言葉が人のキモチを動かすことも知ってる。十分なくらい。



好きだ、愛してると言葉で雅紀に伝えたら、キモチ悪がってこの腕をすり抜けてもう二度とは触れる場所に戻ってこないか・・・、もし万が一雅紀のキモチがこっちに向き合ってくれたとして、俺の言葉で振り向いた雅紀は果たして本当に雅紀のキモチで向き合っていることになるのか?



雅紀のコトを見ているとコロコロと忙しく表情を変えて飽きさせないんだよ。



ずっと見ていたいと思うし、色んな表情を見てみたいとも思うんだ。








あの、ハワイの夜・・・


アルコールの勢いも借りたけど、雅紀のあの征服欲を掻き立てる表情がさ。


たまんねぇよな。


アレ・・・性別越えてるよ、俺だって普通に考えたらオトコなんてありえねェけど。






・・・そんな出口の見えないことをグルグルと考えていたら、ハンドルに手を掛けた運転席の雅紀が呟いた。



「・・・いいよなぁ・・・」

「え?」

「あっ!ううんっ?!なんでもないよっ?!」



雅紀が見ていた方向に目をやると、目の前の横断歩道を渡る、長い髪を束ねてヒールで闊歩するスーツ姿の女性。




あぁ・・・



さっきまでのニヤけた俺の胸に杭を打ち込まれた気分。



そうだ。雅紀はノーマル。




恋愛映画やドラマが大好きな、普通のノーマル。




・・・俺が言葉だ態度だ言う以前の問題。




あのハワイは・・・



俺の独りよがりか・・・





【6】