「かんぱ~い!」
「ハイ、おつかれ~。」
レストラン居酒屋の個室で二人、グラスを合わせる。
なんか・・・流れでニノとゴハンに来ることになったんだけどさ。しかも何でかおれのオゴリで・・・ま、いっか。
この店、この前アンジャッシュの渡部さんに教えてもらって気になってたし。ホントは翔ちゃんと来たかったんだけど・・・、
いいもんね!そうだよ、翔ちゃんが先におれのことフッたんだからさっ、翔ちゃんが悪いんだもんねっ!
そうだ、くやしいからこの美味しそうなハンバーグと唐揚げ、LINEで翔ちゃんに送ってやろうっと!
「・・・で?どうなのよ、最近?」
だいぶお酒も進んで新しいフローズンな泡のグラスが運ばれてきたところでニノに聞かれる。
「えっ、何が?」
多分、翔ちゃんとのこと聞かれてるんだろうなって思ったけど・・・この話すると落ちそうで・・・おれらしくないかなって、トボけてみた。
みた、んだけど。そっからニノは黙って料理食べては目を合わせてニコって笑うだけだからさ・・・
「あんま・・・会えてなくてさ・・・」
ポツリと零す。いつもは割とおれに当たりの強いニノでも、こういう表情をするときは決まってさ・・・話を聞いてくれる時なんだよね・・・
おれは、ニノの この顔に弱い。普段はおれあんま自分の相談とかしないんだけど、ついキモチが緩んで話せちゃうのは、結構回って来てるアルコールのせいもあるのかな?
ニノは・・・ポツリポツリ話すおれに時々目を合わせては話の邪魔にならない相槌を入れながら胸につかえた言葉をスルスルと巻き取っていく。
グラスが空になるころにはココロもずいぶんラクになってて、なんだか・・・早く翔ちゃんに電話して声を聞きたい気持ちになってたんだ。
「あ、もしもし、しょぉちゃん?」
タクシーを降りてニノを見送った後、マンションに向かいながら携帯を耳に当てる。
「おぉ、雅紀。どした?もう帰り?」
「ん。明日早いし、さっきにのと別れたとこ。もうすぐ部屋ぁ・・・あ・・・今、電話だいじょぉぶだった?」
「大丈夫だよ。こっちももうすぐ終わるとこ。楽しかった?旨そうな唐揚げ、見たよ」
「ぁ・・・ごめんね・・・おれ・・・」
翔ちゃんの優しい声に、意地悪のつもりで送りつけてた写真のことを思い出して急に自分が嫌になった。
そうだよ、最初から翔ちゃんは悪くなかった。おれが勝手に落ちて、勝手にひがんで、勝手に怒ってただけじゃん・・・
「雅紀?どした?なんで雅紀が謝んの?」
翔ちゃんの心配してくれる優しい声が耳から胸に沁み込んでおれの真ん中がギュって痛む。うまく、言葉が出ない。何て返せばいい?
・・・だけど、これ以上黙ってたら絶対翔ちゃん心配してこっち来ちゃう。
翔ちゃんも明日早いはずだから、メイワクかけちゃいけないと思って頑張って明るい声を出す。
「えっ?やぁ、ごめんねぇ、おればっか美味しいの食べちゃって!っつって!くふふふっ!
しょぉちゃん、今度一緒に行こうねっ!おれ今日ちっと飲み過ぎちゃったからぁ、もう寝るねっ?部屋、着いたし。じゃぁまたね、今日もおつかれさまっ!」
よし・・・頑張りましたマサキくん。これで多分、大丈夫。
熱いシャワー浴びて、今夜はもう寝よう・・・
シャワーから出て髪を拭きながら何気に携帯をチェックしてたら翔ちゃんからのメールに気が付いた。
『雅紀 さっきは電話ありがとう。 最近会えてないし現場でもあんま二人にはなれないけど 雅紀が写真送ってくれたり電話をくれたりすると 心が温まるよ。
気にかけててくれてありがとう 明日も互いに頑張ろうな おやすみ 翔』
あぁ、罪悪感。
ゴメン、翔ちゃん。純粋な気持ちで送った写真じゃなかったのに・・・
明日はちゃんと、翔ちゃんのコトを想って写真を送ろう、そうしよう・・・ありがとうって言われて、ちゃんと『どういたしまして』って思えるメールを送ろう・・・
そう考えてるうちに・・・自然とまぶたが重たくなって・・・おれは・・・眠りの渦へと吸い込まれていった.・・・
to be continued...
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