社長に頼まれたデモテープを持って
櫻井くんの大学前の
コーヒーショップで待つこと20分
「お待たせ!」
普段と少し違って
オトナな雰囲気の櫻井くんが
後ろから声を掛けてきた
「社長から携帯に留守電入ってて焦ったよ。ゴメンな?わざわざ来てもらって。場所、すぐ分かった?」
「あ、全然。どうせ今日はもうすることなかったし。でも大学の近くでやっぱ周りも大学生ばっかでさ、ちょっと緊張した」
窓に向かうカウンター席にいた俺の隣に
眩しいような笑顔で
目を見つめたまま腰を掛ける
彼の様子を観察しながらそう答える。
「あ、ちょっと分かる、それ。俺も最初の頃は完全アウェイな気分だったよ。さすがにもう慣れたけどね。で、社長何だって?留守電さ、『松潤にお使い頼んで正門前のコーヒーショップに行ってもらってるから寄って』としか入ってねーの!あの人ホント無茶苦茶だよ・・・」
苦笑しながら
アイスカフェオレのストローを
カラカラと回す櫻井くんの
指先を見つめる。
「・・・くん?・・・本くん、マツジュン!」
「・・・あ?え?あ、ゴメン、何?」
「オイオイオイオイ、何じゃないだろ。はははっ!どした?考え事?っつーか、マツジュンって呼ばれた方が反応すんのな。ははは。」
「や・・・ホラ、櫻井くん、大学の勉強さ、スゲェ頑張りながらやってんじゃん、俺なんて高校なのに結構ダリィとか思っちゃう時あって。なんか、櫻井くん、大学生頑張ってんだなーって改めて思ってさ・・・」
「はははは。なんだよそれ。お前だって頑張ってんじゃん、『マツジュン』?」
『松本くん』って呼ばれるより
『マツジュン』って呼ばれて
なんだか嬉しくて・・・
その日を境に櫻井くんは
俺のことを『マツジュン』って
呼ぶようになった。
櫻井くんもトンがってる
やんちゃなイメージだったけど
ちゃんと話すと
ちゃんとした考えを持ってて
全く違うようで
どこか似ているようで
話も合うし
一緒にいると
居心地がよかった
時間が空けば
あのコーヒーショップで
待ち合わせて
学校の話や
グループの話をよくするようになった
コーヒー一杯で
何時間でも話していられた
嵐になったばかりのあの頃
歳の差のある大野くんでもなく
ジュニア時代から仲良し同士の
相葉くんと二宮くんでもなく
櫻井くんと一緒にいる時が
一番俺らしくいられる気がしていた