
海外版が出ているということは
日本人以外のひとも
この映画をみているということになる。
わかるのだろうか・・。
これはとてもとても
日本的な映画だ。
つまり
どんなに非難されても
談合がやめられない
日本人の癒着体質の映画だ。
義とか
任侠とか
仁義とか
そういう言葉で
癒着を美化していた社会の正体を
「仁義なき戦い」で
徹底的に暴きたてた
脚本家の笠原和夫、監督の深作欣二
かれらが到達した
ひとつの芸術的な暴力映画であります。
今年
東宝が、
過去、最高の興行収入を上げた。
(ま、ほとんどぽにゅと福山が稼いだんだけど・・)
しかし
東映はほとんど死に体といってもいい
先日も、
ある映画が完成しているにもかかわらず
公開中止になってしまった・・というニュースを聞いた。
「県警対組織暴力」
当時、
やくざ映画を目の敵にして
圧力をかけてくる警察権力に頭に来ていた
岡田茂東映社長が、便所の中で思いついたタイトル。
権力に楯ついていた映画会社
それはとりもなおさず
庶民の側に立っているということである。
ところが
そういう体質の映画会社が没落していく。
時代と言えばそれまでだが
はたして彼らの本当の姿を知っているのだろうか?
僕は
前科があるわけでもなく
ブタ箱に叩きこまれたわけでもないが
しかし
警察と対したことはある。
その口の利き方から態度まで
本当に頭にくる。
てめえら、なんでそんなに偉そうな口の利き方するんだ・・・
やめよう・・。
馬鹿に礼儀を求めたこっちが悪い・・
話を映画に戻そう。
「銃砲刀不法所持! 凶器準備集合! 公務執行妨害!」
殴り込みをかけようと勇み立つやくざたちにビンタをくらわせる
菅原文太扮する県警、倉島署の部長刑事様
文太が
県警の刑事に扮するというだけで、完全に警察をおちょくっている。
そして
若い奴等を逮捕するどころか
けしかける。
「お前らみたいな雑魚をブタ箱に放り込んでみても税金の無駄 使いじゃ。
やるだけやって死んでこい! その方が掃除が早いワイ!!」
しかし
「無銭飲食だけはききやせんど!!」と自分の飲食代を財布からぶんどり、
「死んでいくやつにこげなもんいらんやろ!!」と
ダンヒルのライターを没収すると
「殴りこみに行って来い! コラ バカタレ!」と車を蹴り上げる。
もう見事なやくざデカである。
うんうん、
これこそがデカの本当の姿である。
「倉島署 みんなで仲良く くらしましょ」という標語をかかげている建前
みんなと仲良くしなくてはならないのが
警察のつらいところ
やくざだからって
差別しちゃいけません。
彼らだって
人間です。
ちゃんとした市民です。
と、いうことで、
文太部長デカと大原組のヤクザの松方弘樹とも大の仲良し
情報を交換したり
どう間違ってもウプには見えない池玲子嬢を
やずりゆずられ、ドォォンドォォンと性教育。
おまけに
ベテラン刑事・佐野浅夫も「極道じゃ警察官じゃゆうて変わりゃあせんよ」と公言し、
薬屋の人妻と、
文化であるところの不倫を楽しみ、
ラブホ代を
やくざの松方に払ってもらうという、
もう至れり尽くせり、石川セリの癒着ぶり。
敵対する暴力団・成田三樹夫(待ってました!! 工藤ちゃん、工藤ちゃんの成田!!)の組の
チンピラ・川谷拓三を引っ張り
伝説の取り調べ。

もうこのシーンは
ありとあらゆるところで
語られまくっているチン・・いや名場面。
裸に剥かれて、殴るけるの限りをつくされた拓ぼう。
打撲と擦過傷で発熱、2日も寝込んでしまった・・。
でもそのおかげで有名になり
後にTVドラマで主役をはるまでになってしまった・・。
そんなわけで、
警察、やくざ、そして池玲子・・。
みんなで仲良く暮らしてましたとさ・・・終わり・・のわけがない。
そこにやってきたのが
ケツの穴の小さい、織田ユウジ・・じゃなくて
真面目でご清潔な警部補、梅宮辰夫!!
もうなんちゅう、キャスティングだ。
普通ならここは神山繁だろうよ・・・
それが
梅宮辰夫って・・。
もう警察をバカにするにもほどがある
最高のキャスティング!!
おれはな、
癒着も談合もドォォォンドォォンと池玲子も、
ついでにバカケンジも許さんとばかり
暴力団壊滅作戦が開始された!!
しかし
集中攻撃を受けるのは松方の組ばかり
挙句に
解散声明を発表させられてしまう!!
怒り狂った松方、
かっての腐れ仲間、佐野浅夫を人質にして
籠城してしまった。
一度は
文太の説得を聞いて
おとなしく逮捕される松方。
ここで「俺の眼を観ろ、なんにもいうな・・」という
松方の臭いセリフを信じて
手錠を外したのが
運のつき。
今度は
梅宮を人質に取って文太に銃を向けた。
義とか
任侠とか
仁義とか
友情とか
信頼とか
そげなもの
ただの言葉じゃい!!
あとはもう生の執着に取りつかれた獣同志の悲劇しかない・・。
深作欣二も
笠原和夫も
もういない。
警察に楯ついてまで
映画を撮ろうという会社もない。
だから何なのよ・・と言われれば
言葉はない。
でも
ひとつだけ覚えておいてほしい。
景気のいいときには
大量に雇っておきながら
景気が悪くなればケツを蹴って
おっぽりだす冷血集団。
自分たちの保身のためなら
下部の人間の死などなんとも思わない。
それが
権力を持った組織の正体です。
だからこそ
それに対抗するほどたくましさを
僕たちは持っていなくてはならない・・。
いつも、いつも
それを繰り返し繰り返し教えくれたのが
深作欣二、
笠原和夫、
東映映画だった。
だからこそ僕は
こんなときでも
せせら笑うことができる。
ほら、観たことか・・と