
銀魂の新作映画で
冒頭、映画泥棒が、
泥棒していたポルノ映画のタイトル
『あれ、勃ちぬ』
予想は、しておりましたよ。
ある程度。
世評、噂、見た友達の感想などで。
元々、
題材からして、
とても心沸き立つ冒険活劇ではないし
女の子の成長不思議物語にはならない・・そう思っておりました。
そして
実際見てみると、
なんということだ!
これは信じられない映画だ!
映画監督が、
自分の趣味を画面いっぱいにぶちまけた映画は
いままでもたくさんあった。
「8 2/1」「サクリファイス」「こんな夢を見た」「エルトポ」
特に、後期のフェリーニの作品は、
物語が解体されて、ドロドロになって
フェリーニの鋳型にはめ込まれた映画ばかりだった。
そんなことができるのは、
巨匠と呼ばれた監督だけ。
第一、巨匠じゃなければ、
金をだす、人間がいない。
もちろん
宮崎駿監督も巨匠。
だから、
こんな映画が作れた。
しかしだ、しかし、
この映画が他の映画監督の自分の趣味ぶちまけ映画と、
根本的に違うのは、
ヒットしてしまったこと。
他の監督のぶちまけ映画は、
アート映画という名のコケ映画だ。
確かに
宮崎ブランド
ジブリブランドもある。
それにしても、
みんな、なんでこの映画を観るのだ。
楽しいのか?
そんなわけがない。
この映画が楽しいのは、
宮崎駿自身だけ・・だろう。
普通・・
でも、この映画、普通じゃない。
全然、趣味が理解できない人間も
観れるのだ。
それは、
前から僕が言っているように
宮崎駿は、
世界一の映画監督ではなく
世界一の作画監督であるということに関係している。
とにかく、
この映画、作画はもう行くところまでいってしまった。
はっきりいって、実写の監督を含めて、
ここまで優れた映像表現をできる監督は、
これまでも
そして
これからも現れないだろう。
とにかく
もう
完璧の映像とはこれ。
まず
冒頭の震災のシーンの表現は、
神がかっている。
揺れる、壊れる、燃える。
逃げる、ざわめく、走る、転ぶ。
すべての描写があまりにも適切で流麗。
炎、煙、倒壊した建物・・。
すべてが命を宿したように描かれる。
命なきものに、命が宿る。
これぞアニメ。
さて
この映画に関してよく言われる、
物語の起伏がない、なんだかわからない
子どもが退屈して走り回る・・。
物語の起伏はありますし、
よくわかる映画です。
でも観客にはそれはわかりません。
そんなことは
宮崎駿監督にもわかっています。
でも
どうでもいいんです。
そんなの。
もううんざりなんだと思う。
観客なんか。
どうでもいいんです。
誰に向かって映画を作るのか?
自分にだけ向かってだけ作っているんです。
何十億も使って。
それができるのが巨匠というひとなんです。
だから、
映画も撮れない、
絵も描けない凡庸な僕たちが
ゴタゴタいう資格なんかないんです。
見ればいいんです。
考える必要なんかないです。
人はなにかを、特に創作物を見ると
理解したいと思ってしまう
どうしようもない頑固な生き物です。
世の中には、
理解できなくても、
見ておいたほうがいいモノもあるんです。
とにかく
理解とか理屈なんてのはどうでもいいです。
ただ見てください。
そして、ひとりの男が、
映画という極めて非芸術的な集団創造物の世界で
徹底的に、
自分の心だけを描ききってしまった
狂気の映画を
ぜひ
映画館で堪能してください。
わかろうなんてけして思わないでください
この映画を・・。