
僕たちは
シドニー・ルメットの
ポール・ニューマンのすべてを
知らない
こんな時代になっても
両者の未公開、DVD未発売映画が
たくさんあるのだ
奥さんであるジョアン・ウッドワードに
カンヌ国際映画祭 女優賞の名誉を授けた
ポール・ニューマン監督の『The Effect of Gamma Rays on Man-in-the-Moon Marigolds』は
WOWOWで、放映されたのみ
TV放映時に運よく見られた友達に
「凄かった」といわれ
本当に見たくてしょうがない1972年 『怒りの刑事』 - The Offenceも
CSで数年枚にやったきり
観ることは叶わない
この二人が
唯一コンビを組んだのが
この「評決」
二人がコンビを組むのだから
企画段階から
二人がかかわり
二人の為に用意された話・・かと
思いきや
ウキさんによると
当初、アーサー・ヒラー監督、ロバート・レッドフォード主演を予定していたそうだ。
そこから 企画が二転三転
結局、このコンビがやることになった
とにかく
この映画、
その語り口というか
映像、音楽、演技・・・すべてが
奇跡的な美しさに満ちている
しかし
ルメットはえげつないほどの
娯楽監督である
社会派といわれていながら
観客を画面に引きつけるテクは
すさまじいものがある
この映画、
一見すると
静かなトーンで語られているが
よく見ると
かなり
強引なテクを使っている

冒頭
ピンボールをする主人公の弁護士フランク・ギャルヴィン
例えようもないくらい美しいシーンだが
少々、
かっこよすぎる
そのあとの
葬儀場で営業をするのも
そのあとの
頭脳明晰な活躍ぶりと比べると
あまりにも
リアルではない
しかし
これがルメットらしさだ
娯楽としてのテクを全開させながら
それを
観客に気づかせない
その最たるシーンは
病院で昏睡中の主婦の哀れな姿を写真に撮るシーンだ
最初は、その写真を相手にを突きつけて
なるべくたくさんの示談金を引き出そう・・・
しかし
こん睡状態のその姿を
観るうちにその気持ちはかわっていく
このシーン、
この映画の核だ
この後に
フランク・ギャルヴィンが
どんな妨害、困難に突き当たっても
あきらめない動機の根底が
このシーンにある
ここで
ルメットは、
セリフを排し、
ポールニューマンの演技、
とくに
その表情によって
心の変化を表現した
心の変化という最も難しい部分を
ポールニューマンは、
誰でもわかる、わかりやすい表情で
演じた。
ルメットはわかっているのだ
難しい心の変化を
誰にでもわかる演技で表現するのが
ポールニューマンの真骨頂であることを
そして
ポールニューマンのわかりやすい演技が
説明過多に陥りやすい裁判劇を
最低限のセリフだけで
表現する
助けになっている
それは
ほとんどセリフのみの典型のような
「十二人の怒れる男」を撮った
ルメットだからこそできた表現だったとおもう
この映画、
もし再見する機会があれば
ぜひ
注意してほしいシーンがある
それは
フランク・ギャルヴィンが
シャーロット・ランプリング演じる
ローラ・フィッシャーを叩くシーンだ
このシーンの前に
フランクは、
相棒の弁護士にローラの裏切りを
聞かされるわけだが
フランクはそれを信じていない
そのあとに
ローラの待つカフェにいく
そこで
なんと
ポールニューマンは
「お前、裏切ったのか?」いう問いを
その表情だけで
観客にわからせたのだ
さらに
それにこたえるように
シャーロット・ランプリングは
「そうよ・・でも・・・」
と、いうことを表情だけで表現した
信じられないような分かりやすさで
それゆえに
映画は停滞することなく
しかし
トーンは静かなまま
進んでいく
これは
もう
演技、演出の名人芸としか
いいようがない