284 「レストレポ」  殺した敵が見えない。 | ササポンのブログ

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『レストレポ』は
アフガニスタンのコレンガル渓谷で任務に就くアメリカ軍小隊に密着した長編ドキュメンタリー
カメラが潜入したのは15名の兵士が配置されたレストレポ前哨基地。
レストレポとは戦死した衛生兵の名だ。
コレンガル渓谷は最も危険な戦線のひとつといわれている。
これは兵士の日常を追った完全に実験的な映画である。
カメラは最初から最後まで渓谷を離れず、
将軍や外交官のインタビューも登場しない。
観客は90分間、前線に送り込まれたように感じるだろう。

番組解説より


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敵、タリバンは
住民の中に隠れる。

住民も敵の味方かもしれない。

しかし
ただの罪のない住民を
殺してはいけない。
当然のことながら。

住民に仕事を与えて
貧しさから救い
タリバンに入隊しないようにしなくてはならない。

しかし
タリバンは、
麻薬で得た潤沢な資金で
住民の中に入っていく。

道路を作ろうとして
長老たちと相談するが
話は進まない。

兵隊が
鉄条網に引っ掛かって
苦しんでいた牛を殺した。
その牛の持ち主が
殺した牛の弁償をしろ・・と言ってくる。

そして
日々、
タリバンからの襲撃に
緊張が高まる。





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わざとらしい音楽や
不必要な緊張感画面などない。

かと言って
淡々としているわけではない。

そこにあるのは
戦争という名の殺し合い。
ただ
生々しさはない。

その原因は
高性能ライフルだ。

相手が見えない。
カメラでは捕えられない。
敵はスコープの中にだけある。
あまりにも高性能のせいで
相手が死んだこともわからない。

だからこそ
こちらの死も一瞬、
撃った相手もわからない。

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リアルな戦争ゲームをやったことがあるひとなら
わかると思うが
なにが恐ろしいって
戦闘が始まっても
敵の位置がわからないことほど
恐ろしいことはない。

敵の位置がわからないのに
銃弾だけが
飛び交っている。

「敵はどこだ!!
どこから撃ってる!!」

そう叫びながら
とりあえず
音のした方向に
連射する。

裸足のスニーカーの中に
薬莢が入って、
それを取り出す。
急いで、
ライフルをひっこめ、
銃身を立てたまま
弾倉を取り変える。

リアルな動作が続く。

それをちゃんとしたグラグラ揺れない画面で撮影する、
カメラマンの冷静さ。

仲間が撃たれて死ぬ。

泣きだす兵隊。
観ないほうがいい・・と冷静に諭す別の兵隊。

戦争という名の殺し合い
殺し合いという名の
映画の中の登場人物のように見える。

基地もちゃんと自分たちで設営しなくてはならない。
大道具のひとが作ってくれるわけじゃない。
当たり前だが
これは映画ではなく、戦争だ。

しかし
そこにいるのは人間だ。

しかし
相手も人間だ。

しかし
その間に会話はなく、飛び交うのは銃弾。

一体
なにをやっているのだろうか・・俺たちは・・。

そして
またひとり、死ぬ。

それだけの話

ただ
それだけの話を
ただ
それだけ・・と撮っている。

そこに
大義などない。

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