269 「エレクション」 後篇  右を向いても左を観てもバカと阿呆の・・・・ | ササポンのブログ

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原題「黒社会」

ストレート。
あまりにもど真ん中のタイトル

英語タイトルは、エレクション
選挙。

と、神学的の意味。
(ある使命・永遠の救いを与えるための)神の選び・・というのも含んでいるだろう。

つまりは
跡目争いの映画・・だけど、
実のところ
日本やくざ映画における
跡目争いとはちよっと違う。

つまり
黒社会の跡目、つまり会長選びは
2年ごとに必ず行われるのだ。

これが
この映画に大きな意味を与える。

ここからはネタバレゾーンに入ります。

とにかく
香港映画が好きで
いままで
見続けて、いまでも見続けているひとにとっては
いま、
香港映画にこだわり
香港映画を牽引している男
ジョニー・トーのまずはひとつの到達点的な映画ですので
ぜひ見てください。

ペタしてね

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2年に一度の会長選びに立候補した二人の男。

沈着冷静、家族も大切にして
部下の信頼も厚い
すべて
見事に根回し
そして
暴力を効果的に使う男。
サイモン・ヤム演じるロク

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金さえやっとけば
人は付いてくる。
付いてこないやつは
みんな殺す。
すぐにわめいて暴れる
見るからにどうしようもない男
レオン・カーフェイ演じるディ
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この会長選挙は
長老たちの投票で決まるのだが
どう見ても、どう考えても
ロクが適任

ディの強引な賄賂攻撃にもかかわらず
ロクが当選、会長となる。

収まらないディが、
会長に選ばれたものだけが手にできる竜頭棍(りゅうとうこん)の横取りを
画策する。

他の世界から見ると
あまりにもバカらしいことも、
当人たちには
絶対の掟・・。

それはやくざの世界。

会長権力の象徴でもある、
竜頭棍。
他の世界のひとから見れば
ただの木彫りの龍がデザインされた彫り棒である。

それを
大の大人が血まみれになって奪い合っているのだ。
はっきりいって
ボンクラ連中である。

ところが
それが本気で狂気がゆえに
どんどんその世界に入り込んでいくので
画面を観ているこちらがただならぬ
雰囲気になっていく。

つまりは
暴力がどんどん空虚で無意味に思えてくるのだ。

特に
新しい会長に就任するロクは、
演じているサイモン・ヤムの得意技である
静かにほほ笑む悪魔ぶりが
その空虚さを恐ろしいものとして
画面に充満させる。

それが
映画史上最もイヤなクライマックスの暴力によって
決定的になる。

いままで
人格者として権力の頂点に君臨した
知的な男の本性が
一気に暴露される。

それまで
サイモン・ヤムが完璧に知性を演じてきたがゆえに
あまりの無意味でくだらない暴力行為が
まるで人間の本性などこんなもの・・と言わんばかりに・・。

ここで
この「エレクション」という映画が
銃器を一切、使わない・・という意味がわかる。

つまり
殺しはけしてかっこいいものではなく
ただの生身の人間がやる
愚かな、汗まみれ、血まみれの暴力である・・と
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