
競馬ファンは
自分の好きな馬に
勝手に個性をつけて
キャラ化して喜ぶという
興味のない人には
甚だ
迷惑な性癖がある。
その代表選手は
寺山修司だろう。
馬への妄想が
文学にまで昇華されたその一連の文章は
競馬に興味がないひとでも
一読の価値はある。
そんな
競走馬、キャラ化大好き人間にとって
この馬は、
もう
恰好の題材だった。
ダイタクヘリオス
なんせこの馬
笑いながら走るのだ。
ゴールの前で笑っている、
ゴールした後も、笑っている。
嘘ではない。
その証拠が、
この動画だ。
http://www.youtube.com/watch?v=87UKoHheKBw
長い動画だが
最初だけ観ればいい。
しっかりと笑っているのがわかる。
実際は
少し出っぱで
気性が荒いから
口を開けて走っているから
笑っているように見えるだけなのだが
キャラ化妄想趣味の競馬ファンが、
これほどの個性派を
見逃すわけがない。
この馬の
おもしろいところは
笑いだけではない。
35戦して1番人気に6回なるも1着は3歳時の条件戦での1回のみで、
あとの9勝は全て2番人気以下
このため、「オッズを見る馬」と称された。
ウィキさんより
パドックを回りながら
オッズが表示された電光掲示板をみる。
一番人気・・。
「てめえ! 今日はちゃんと走れよ」
どこかのバカ野郎の声がくる。
けっ!!
ダイヘリくん、心の中で舌うちする。
ざけんじゃねえよ、
なんで俺がてめえみたいなジジイのために
走んなきゃなんねえんだよ。
バカ野郎・・。
ターフに出る。
いつものように頭を高くあげながら
笑いだすダイヘリくん。
負けてやるぜ!!
これで俺が勝つなんて思っていた奴の
心も、財布も、
凍りつかせてやる!!!
ゲヘヘヘヘヘヘヘヘへ!!
笑いながら
また一番人気で、負けるダイヘリくん。
なんだよ、バカ野郎・・今日は一番人気じゃねえよ。
誰も俺のことなんか観ちゃいねえよ。
ちっ、
ケイエスミラクルだ・・
ダイイチルビィぃぃぃだあああ?
なんで俺が
女なんかに負けなきゃなんねえんだよ!!
勝ってやるぜ!!
これで俺が負けると思っていた奴の
心も、財布も、
凍りつかせてやる!!!
グゲヘヘヘヘヘヘヘヘへ!!
笑いながら
また人気薄で、勝つダイヘリくん。
それも
ぶっちぎり・・。
6歳になってもマイラーズカップを60kgの負担重量を背負いながら勝利した。
60kgである!!
58kgでも酷量といわれているのに
60kgを背負って勝ったのである。
しかし
その後の3戦で2・1・2番人気に推されたが、連続して馬券対象から外れた。
ある評論家が言った
「この馬に関しては走るか走らないかは、知りません。
馬に聞いてください」
冗談ではない。
いや、むしろ怒りを含んだ言葉だった。
きっと
それをダイヘリくんが聴いたら
また笑うだろう。
ばあーーーーーーーーーーか!!
俺が素直にコメントするわけねえじゃねえか!!
その後も
ダイヘリくんの爆笑劇走は続く。
毎日王冠をレコードタイムで逃げ切った後、
秋の天皇賞では3番人気になる。
しかしダイタクヘリオスはメジロパーマーと超ハイペースで逃げた末に失速。
これを追走したトウカイテイオーも実力を発揮できず、
後方に控えていた人気薄のレッツゴーターキンとムービースターが1、2着となった。
あの、あの・・・超がつくイケメンのアイドルホース、トウカイテイオー。
パドックで人気を集めるトウカイテイオー・・。
どれぐらいイケメンかと言えば
これぐらいイケメン。
そんなアイドルの存在を
ダイヘリくんが許すわけがない。
同じ逃げ馬でも、
少し優等生のパーマーくんの肩を抱いてつぶやくダイヘリ。
「おい、めちゃ逃げして、ペース壊そうぜ」
「でも・・」
「うっせえよ、どうせ、俺たちがこんな大きいレース、勝てるわけねえだろう!!
とにかく俺とお前が、めちゃ逃げすりゃ、レースがめちゃくちゃになって
あんなへなちょこ野郎、だめになんだからよ。」
ダイヘリの脅しに屈してしまう人のいいパーマーくん。
「なにがテイオーだ。バカ野郎。
俺を誰だと思ってやがる。ヘリオスだぞ」
と、訳のわからないことを呟きながら
天皇賞を大混乱に陥れた。
もちろん、
最後、失速しながらも、やつは笑っていた。
次走は前年優勝したマイルチャンピオンシップに出走。
1番人気をここまで4連勝中の4歳牝馬シンコウラブリイに譲るも、
当時のレコードタイムで連覇。
その後はスプリンターズステークスに出走し
久々の1番人気になるも4着。
最後は連闘で有馬記念に出走し
再び天皇賞と同じくメジロパーマーと激しく競り合った結果、
・・・・・・。
12着。
これを最後に競走馬を引退した。
いじめっ子のダイヘリくんが
引退した後、
パーマーくん、
宝塚、有馬記念を勝つ。
きっとホッとしたんでしようね・・。
種牡馬入り後は非常に穏和な生活ぶりを示し、
気性の激しかった現役時代を知る繋養先の牧場スタッフが思わず拍子抜けをするほどだったという。
ある日
放牧地で
ダイタクヘリオスが静かに横たわっていたため関係者が
「病死したのでは」と慌てて見に行ってみると、
横になって草を食べていたというエピソードもあった。
そして
2008年12月
死の当日も牧場スタッフが
放牧のために馬房に行くとヘリオスは既に冷たくなっており、
馬房には暴れたり苦しんだ痕跡も無く眠るように事切れていたと証言している。
楽しかったよ・・・
そりゃ、色々、いわれたけどよ・・
いや・・
ただ単にさ、
普通ってのがいやだったんだよ。
なんか
いつの間にか
敵の後ろにいてさ
ゴールの前でちょこっと勝つってやつ。
次の競争に疲労を残らない走り・・?
ああいうのが
嫌いだったんだよ。
そんなんじゃ
おもしろくねえんだよ。
俺自身がよ・・。
ま、一番人気で走んなかったのはわるいと思うよ。
でもよ、
いい歳したオヤジが俺の馬券握ってさ、
口をあんぐりしてる顔、観たらさ・・・
やっぱ
笑っちゃうんだよ・・。
俺もかなりバカだけどよ、
あんたもバカだねって・・・
ま、お先に行かせてもらうよ。
じゃ、待ってるからよ・・・。
ゆっくりきなよ。