
あまりにも語られ過ぎて
もううんざれとしている人が
世間に蔓延している映画というか、
アニメ。
もちろん、、今回、紹介するのは
ファーストガンダムといわれている
最初のガンダム。
劇場版が3本あるが、
すべて
TVシリーズのダイジェスト版。
特に1作目は
描き下ろしがほとんどなく
出演した声優たちが
その映画の特集号で
「劇場にかけるようなクオリティじゃない」と
言われるほどの出来。
そのあとも、
描き直しの場面はあるが
ダイジェストは所詮、
ダイジェスト。
あまり感心したものではない。
あくまでもTVシリーズを
対象に書こうと思います。
ただ
本来なら
何回にもわけて
語るべきであるが
今回、一度だけで終わりにするのは
もうあまりにも世間でごちゃごちゃ語られ過ぎて
僕自身が
うんざりしてしまっているからです。
ただ、このファースト・ガンダムが
あらゆる面で
革新的であったことは
確かだ。
今回は
僕の評でおなじみの
物語の構成の面から書いてみようと思います。
このシリーズの構成の元となった
有名な小説があります。
「十五少年漂流記」
子供時代に誰もが読んだことのあるこの名作。
元々
このガンダムの企画自体が
宇宙版十五少年漂流記だったし
実際、
このシリーズの脚本を書いた人に
直接、聞いた話でも
十五少年漂流記が好きで
それを元にしたと言っていた。
ちなみに
この小説に出てくるジャックが
アムロ・レイの原形となった。
ファースガンダムが
他のシリーズと比べて
抜きん出て
出来がいいのは
最初の2話を観てみれば歴然とする。
「人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、
既に半世紀が過ぎていた。.
地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、
人々はそこで子を産み、
育て、
そして死んでいった。.
宇宙世紀0079、
地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、
地球連邦政府に独立戦争を挑んできた。.
この一ヶ月あまりの戦いで、
ジオン公国と連邦軍は総人口の半分を死に至らしめた。.
人々はみずからの行為に恐怖した。戦争は膠着状態に入り、
八ヶ月あまりが過ぎた」(ナレーション)
あっさりと
書いたように見えるこのナレーション。
実のところ
これだけで
複雑な現在状況をあっさりと
説明してしまっている。
このナレーションだけで
ライター陣が並大抵の腕でないことがわかる。
サイド7で進行中の
連邦のV作戦をキャッチした
ジオン軍が攻撃をかける。
その指揮をとるのが
もはやアニメ史上最大のギザ有名男となった
シャア・アズナブル。
「私もよくよく運のない男だな」
数々の名ゼリフを残したシャアの最初のセリフ。
攻めるジオン軍、逃げる住民の中に
アムロ、フラウボウ、ハヤトがいる。
そして
アムロの父親は、
住民よりも新型のモビルスーツの運搬を優先させる。
この新型のモビルスーツに
アムロが乗り込み
起動させるまでの物語の進め方の
手際の良さ。
こののちに
このガンダムのオープニングを真似て作った
「エヴァ」の一話の、
モタモタしているわ
何も説明していないわ・・に比べると
ライターの腕が歴然とする。
そして、
恐るべき新型のモビルスーツの性能と
アムロの類まれなる操作本能によって
作戦が失敗したシャアがつぶやく、名セリフ。
「認めたくないものだな、自分自身の。若さ故の過ちというものを」
そして気が付くと
主要人物を
1話23分たらずで
漂流船ホワイトベースに乗せてしまっている。
あまりの見事な構成に唖然とする。
2話では
そのシャアの恐ろしさと
ガンダムの凄さが全開する。
「でもブライトさん、
このスピードで迫れるザクなんてありはしません。.
1機のザクは通常の三倍のスピードで接近します!」
「シャ…シャアだ… 赤い彗星だ!」
「ルウム戦役で5隻の戦艦が
シャア一人の為に撃破された…
に、逃げろーッ!」
「見せてもらおうか、連邦軍のモビルスーツの性能とやらを」
この辺になると
ロボットアニメを作り続けた
サンライズの
ライターや作画家の
職人技が炸裂する。
赤いザクを駆り、その卓越した操縦能力でもってアムロを追い詰めるシャア
「どうだ!(ニヤリ…)
なに! バカな、直撃のはずだ!」
マシンガン直撃でも
ノーダメージのガンダム。
ガンダムのそのあまりの装甲の厚さに思わず唖然とするシャア。
そして
もうガンダムでしか通用しない、
他の物語で使ったら
ギャグにしかならないセリフが炸裂する。
「させるかーっ!」
ガンダムというのは、
このシリーズ独特のセリフというのがある。
「やらせるかァ!」
「私の弟、諸君らが愛してくれたガルマ・ザビは死んだ! 何故だ!?」
「坊やだからさ…」
基本的に
このシリーズのセリフは
時代劇です。
「素人め!間合いが遠いわ!」
ロボットアニメで、間合い・・
こういうセリフは
いまの若い人はきっと書けないでしよう。
「うむう、パプワがやられガデムも死んだ… どういうことなのだ?」
「MSにしろ、あの船にしろ、
明らかに連邦軍の新兵器の高性能の前に敗北を喫した、
それは分かる」.
「しかし… 一体どういうことなのだ?」.
「連中は戦法も未熟なら、戦い方もまるで素人だ…」.
「どういうことなのだ…」
シャアのつぶやきのなかにも
敗北を喫した・・とか
戦法も未熟なら、戦い方もまるで素人だ・・なんていう
戦国モノみたいセリフが出てきます。
さらに言えば
これられセリフも
7,5調の美文、
歌舞伎に近いモノがあります。
それを踏まえて
もう一度
このシリーズを観てみると
新たな発見があります。
そして、
さらに驚くことに
この2話で
ホワイトベースの登場人物の性格を
すべて
説明しきっています。
これらが
2話合計46分でやっている。
あげくに
シャアの性格まで見せている。
これこそが
この物語の構成こそが
このシリーズの
最も優れている点です。