150 「天空の城ラピュタ」 (2) 止まってしまったパズーが再び、動き出したとき・・ | ササポンのブログ

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ひとを観ていないものを観ます

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この映画、いまでこそ、
TVで何度も放映していて
好きな人もたくさんいる作品だが
公開当時は、
一部の人たちに
ちょっとした失望感を与えた。
一部の人たちというのは、
僕のような「未来少年コナン」ファンである。

漫画活劇、宮崎冒険アニメ・・ということで、
やはり
コナンを期待したのは
無理からぬことでした。

しかし
この映画の主人公、パズーは明らかに
コナンとは違っていた。


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この映画でパズーは、
シーターがさらわれた後、
なんと、家に戻ってきてしまったのだ・・
それも
金を貰って!!

それは
冒険活劇の少年にあるまじき行為であり、
恥ずべき行為であると言ってもいい。

もし
コナンであれば、絶対に家になんて帰ってこない。
飛行船にしがみついてでも
救いに行くだろう。

しかし
パズーはそうしなかった。
貰った金も
捨てられなかった。

宮崎監督は、
パズーをリアルにしたかった。
現実の少年にしたかった。
現実の少年なら
こうするだろう・・という行為を取らせた。

しかし
そこに恐ろしい落とし穴があったのだ。

いったん、立ち止まった
リアルな少年パズーをふたたび、走らせることが
とても困難になってしまったのだ。


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そこには
宮崎アニメの持つひとつの特徴がある。

つまり
宮崎監督の映画主人公が
なぜか
常に
受動的であるということ。

つまり
受け身であるということ。

よく思い出してほしい。

宮崎監督の書いた主人公で
自分から
行動を開始したのは
他人の原作を使った
「魔女の宅急便」のみで、
後はすべて状況によって
動かざる得なかった・・というパターンだ。
あのアクティブの化け物である
ナウシカですら、
本来は
風の谷を出る気はなかった。
原作ではそうでもないのだが
なぜか
映画のシナリオを書くと、
そういう主人公になってしまう。
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実際に、
この映画を製作時期のインタビューで
宮崎監督が
パズーで映画を引っ張れない・・・とぼやいている。

それは
ここで、パズーを止めてしまったことが原因である。

そこで
宮崎監督が、
再び、ドーラを出して
パズーのケツを蹴っ飛ばした。
とにかく
とっとと、動きゃがれ!!と怒鳴って
パズーを無理やり動かした。

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これによって
物語は動き出し、
感動的な例の救出シーンとなるわけだが、

ここのシーンにも
宮崎監督の苦肉というか、
苦心ぶりがうかがえるシーンがある。

それは
シーターを救出するときに
ほんとひと時
ドーラが岩を食らって気絶するところがある。
そこで
パズーが操縦して危機を脱出するというシーン。

なぜこのシーンを付けたかと言えば
これがなければ
もうほとんどドーラひとつりの力で救出したように
見えてしまうからだ。

つまりパズーという少年を
リアルな魅力で描こうとすることは
冒険活劇の少年としての魅力をそぐことになってしまう・・。

この恐ろしい矛盾を
宮崎監督は、とうとうラストまで解決することは
出来なかった。

いや・・
この後の作品でも
リアルな少年による活劇をなかなか作れなくなった。

「もののけ姫」も「ハウルの動く城」も
リアルな青年が出てくるが
彼らが物語を引っ張ることはできなかった。




もしかして、
ここまで読んだ人は、
僕がこの映画をけなしていると思っているかもしれない。

本当に優れた作品を論じる場合、
僕は
本当に高いレベルで論じる必要があると思っています。

この映画のレベルは
並みの映画など遥かに超えています。

あの救出シーンの映像、音楽、そして
声を担当した俳優たちの見事さは、
見ていて失神状態に陥ります。



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以前に、ぽにょの時にも書いたけど、
宮崎監督は、まだ悩んで迷って作品を作っています。
あれほどの構築力と世界観と権力を持ちながら
まだ自ら迷い、自分を追い込んでいます。

それに対して僕は
尊敬の念を持ちます。
本当に世界に対して緊張を持って相対している芸術家たち

イチローや
武豊や
押井守や
宮崎駿・・。

彼らの活躍をリアルに体験できることを
幸せに思いたい。
そして
彼らの世界に対する迷いや戸惑いを
ちゃんと理解しておきたい。

そう思っています。
これまでも
これからも・・。
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シーターを救いだしたパズーの姿は、
確実に
ぽにょを無条件で受け入れた宗介の姿に繋がっていきます。


ここから
リアルで生きている宮崎映画の少年が、
どんな少女を救いだすのか?

これを楽しまない手はありません。
バカな情報や偏見によって
宮崎アニメを
色眼鏡でしか見れない人は
本当に気の毒です。


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