
ここ数年の作品の中で
純粋に娯楽として
一番おもしろかった映画です。
とにかく
何回見ても、
どんな形で(TV放映時のカット版)観ても
途中から見ても、
とにかくおもしろい。
恐らくいま、最も成功し、
そして最も好ましい
押井チルドレンのアレックス・プロヤス監督。
この映画でも
ゴースト・・という言葉を平気で使っています。
なぜ、
アレックス・プロヤス監督が最も好ましい押井チルドレンかと言えば
おもしろい娯楽を撮っているからであります。
2035年のシカゴ。
新しい家庭用ロボットの出荷準備をしている巨大産業会社USRで、事件が起こる。
事故のトラウマでロボット嫌いになっているシカゴ市警デル・スプーナー刑事(ウィル・スミス)は、
現代ロボット工学の第一人者であるラニング博士(ジェームズ・クロムウェル)から連絡を受け、
USRに向かう。
だが待っていたのは博士のホログラムで、
彼はすでに死んでいた。
スプーナーは、
USRの主任ロボット心理学者の女性、スーザン・カルヴィン博士(ブリジット・モイナハン)の案内により、犯人を捜索をはじめる。
まずウィルスミスが
すでに死んでいるラニング博士のホログラムと話をしている・・というところから
すでに押井守の「イノセント」における捜査会議のシーンのパクリであります。
ところが
このすでに死んでいる博士との問答を繰り返していく・・というところが
なかなかのアイディアであります。
どんどんに真相に近づくにつれて、
会話が進むというのは
これはおもしろい。
研究室に隠れていた1体のロボットが慌てて逃げようとする。
捕獲され本署に連行されたロボットは、
自分はサニー(アラン・テュディック)だと名乗る。
しかしスプーナーはサニーの博士殺しの動機に見当がつかず、捜査を続行する。
このサニーというロボットが
この映画で一番、魅力的だというのが
なんとも皮肉であるが
その動きや表情は
実際に俳優が動いたのを参考にしているだけあって
極めて美しい。
さらに
その顔のデザインが
人間的でもあり
ロボット的でもあり
生々しくもあり
無機質でもある・・という
絶妙なバランスを保っている。
この映画が成功するもしないも
恐らくこのサニーのデザインにかかっている・・と
考えたであろう、監督も見事なら
それに答えたスタッフもさすがである。
僕は
残念ながら
アシモフの原作は読んでいなかったので
どれほど忠実なのかはわからないが
物語的に言うと
少しありきたりなところがあり
平均点というところだろう。
特に
この後にスピルバーグのお気に入り俳優となる
シャイア・ラブーフの役は
まったくいらない。
全然、意味がない役の典型だろう。
これはあきらかに
脚本家のミスである。
スーザンは、サニーが重要な法律"ロボット3原則“に従ってプログラミングされていないことを発見。
通勤途中、ロボットに襲われたスプーナーは、
真相を追ってスーザンと共にサニーと面会する。
するとサニーは、
自分が見た夢を描いた絵をスプーナーに贈る。
そこにはロボットを解放する男の姿が描かれており、男はあなただとサニーは答えた。
まもなく、人間に対するロボットたちの反乱が始まり、
スプーナーとスーザンは元凶であるUSRに急ぐ。
まずサニーとウィルスミスの取り調べのシーンで、
ロボットのサニーが怒ってイライラするところがいい。
この辺から
有名な"ロボット3原則“が効いてくる。
この"ロボット3原則“という理論が
どれだけ物語の可能性を秘めた理論であるかということが
この映画で認識できた。
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。
ただし、あたえられた命令が、第一条に反する場合は、この限りでない。
第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、
自己をまもらなければならない。
アシモフの小説から生まれた
このロボット規範は、
ロボットのアイディンティティという問題を提起
ここから
「鉄腕アトム」や
「攻殻機動隊」が生まれた。
これは本当に凄い原則であると思う。
恐らく
これによってこれからも無限に物語が生み出されるのだ。
この映画における最も魅力的なシーンは
ラスト近くの、サニーの、あの合図である。
ああいうところはやはりアメリカのシナリオライターはうまい。
あの合図を出す
サニーの表情もいい。
USRの内部での
ロボットとロボットの対決も
痛快の極みである。
そのスピードと身のこなしは
まるで
カンフーの達人の対決である。
この辺の映像の呼吸も
押井守が「パトレイバー」辺りでみせたそれである。
僕はこのアレックス・プロヤス監督にある幻をみる。
もし押井守がいまのように
作家性に走ることなく
娯楽としてのアニメを追及していたら・・。
もしかしたら
この「アイ・ロボット」も
ハリウッドに呼ばれた押井守が撮った映画かもしれないという
もしかしたらの
極めて私的な幻・・。
正直に言うと
最近の僕は
押井監督の新作よりも
アレックス・プロヤス監督の新作のが
待ち遠しかったりする・・・